不眠症に用いる漢方薬

皆さん、よく眠れていますか? 今回は不眠症に使われる漢方薬についてお話します。 不眠をタイプ別に分類すると、入眠障害(寝つきが悪い)、熟眠障害(眠っているけどよく眠れた感じがしない)、中途覚醒(しばしば目が覚めてしまう)、早朝覚醒(早く目覚めてしまう)に分けられます。   食う、寝る、出すというのは人が健康に生活していくうえで非常には大事なことだと思います。 睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があることを聞かれた方もいるのではないでしょうか? 浅い眠りをレム睡眠、深い眠りをノンレム睡眠といいます。 今、特に高齢者の睡眠障害が増えていると言われています。 その特徴はノンレム睡眠には4段階あるのですが、より深い眠りの第3,4段階の眠りが減少しているということが分ってきています。 つまり浅い眠りの段階が増え、中途覚醒の回数と時間が増えているということです。   不眠に対する漢方薬の代表は、まず酸棗仁湯(さんそうにんとう)が挙げられます。 2000年前の古医書「金匱要略(きんきようりゃく)」に登場する薬です。 条文には「虚労、虚煩、不得眠、酸棗仁湯主之」(虚労(きょろう)、虚煩(きょはん)、眠ることを得ざるは、酸棗仁湯(さんそうにんとう)之(これ)を主(つかさど)る)とあります。 常に疲れて弱って、些細なことが気になって眠れないものを治すということです。 酸棗仁湯に含まれる酸棗仁(さんそうにん)という生薬は不眠だけではなく、眠り過ぎにも有効で、睡眠異常の正常化薬だといわれています。   ほかには、イライラ感があって眠れないというものに、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)や抑肝散(よくかんさん)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)など柴胡(さいこ)という生薬の入ったものもよく用いられます。 柴胡には肝(疳)の昂りを鎮める作用があります。   柴胡加竜骨牡蛎湯や桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)に含まれる、竜骨(大型哺乳動物の骨の化石)や牡蛎(かきの殻)は、ともに主成分は炭酸カルシウムで精神安定作用を目的に加えられた生薬です。 恐い夢を見るとか、物事に驚きやすいといった症状が使う目標になってきます。 悪夢に効く漢方薬があるわけですね。   漢方薬はいずれも直接的な催眠剤ではないので、眠前投与とは限らず、1日3回服用も標準的な使い方です。 ハングオーバー(薬の持ち越し効果)や脱力感、薬物依存などの心配もありません。 日常生活に悪影響がないだけではなく、全身的な体調も整えてくれます。   尚、米国の調査では健康な人の睡眠時間は6~7時間だとする疫学データも出ています。 つまり眠り過ぎも良くないということです。 大事なのは時間ではなく、睡眠の質ということですね。