女性によく使われる漢方3処方

寒暖差が激しく体調は崩されていませんか?

今回は女性によく使われる漢方3処方について紹介します。最近はCMなどでもよく目に入ることが多いのではないでしょうか?漢方薬とは気づかないような名前だったりもしますよね。大抵はこの三大処方が基本処方になっていますので、その使い分けについて簡単にお話します。

まずこの婦人科三大処方というのは、医療用漢方製剤(薬局やクリニックなどで処方箋にもとづいて出される漢方薬のこと)ではどのメーカーさんでもその漢方薬についている番号が連番になっているので、とても覚えやすいです。

23番は当帰芍薬散 (とうきしゃくやくさん)、24番は加味逍遙散 (かみしょうようさん)、25番は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)となっています。

①当帰芍薬散 (とうきしゃくやくさん)について

      生薬       働き
芍薬、当帰、川芎(せんきゅう) 月経に伴うホルモンバランスの乱れによる諸症状を改善する。
蒼朮(そうじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、沢瀉(たくしゃ) むくみなどの水分バランスの異常を整える。

当帰芍薬散は『血虚』や『水毒』を改善する漢方薬です。血虚というのは、わかりやすく言うと貧血状態のことで、めまいや冷え、皮膚が乾燥しやすかったりといった徴候を指します。女性は月経があるので比較的血虚になりやすいです。

水毒というのは、むくみや頭痛、吐き気などの徴候があります。イメージするなら、二日酔いによって起こる症状です。

ですので当帰芍薬散は浮腫と貧血を起こしやすく、冷えを訴える方によい漢方薬です。

②加味逍遙散 (かみしょうようさん)について

       生薬      働き
柴胡(さいこ)、芍薬、薄荷(はっか)、   山梔子 (さんしし)、茯苓(ぶくりょう) 精神を安定させ、更年期障害に伴う諸症状を改善する。
当帰、芍薬、牡丹皮(ぼたんぴ) 下腹部の血流をよくする。
甘草(かんぞう)、蒼朮、茯苓、生姜 お腹の調子を整える、また、浮腫を改善できる。

加味逍遙散はホルモンバランスの乱れによって起こる精神不安までカバーできる漢方薬です。PMSや更年期障害でイライラするなどの精神症状が現れた場合にも対応します。また、肩がこる、頭が痛い、眠れない…など多愁訴(たしゅうそ)を訴えられる方に良い処方です。

③桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)について

  生薬         働き
桃仁(とうにん)、  
牡丹皮
血のめぐりをよくし、女性ホルモンのバランスを正常にする。
桂皮(けいひ)、茯苓 ホットフラッシュなどの冷えのぼせの症状を改善する。
芍薬 月経痛などの痛みを緩和する

桂枝茯苓丸は『お血(おけつ)』という病態を改善する漢方薬です。お血というのは、月経の際、血の塊が出たり、アザが出来やすかったりなどの徴候があります。月経不順もお血の徴候の一つです。桂枝茯苓丸はそのような血の滞りを改善したい方に良い処方です。

いかがでしたか?皆さんも漢方薬を選ばれるときは自分に合った処方を選べるように参考にしてみて下さいね。

R5.2.15ブログ

今年から「争い」をテーマにブログを書かせていただいております。

今回はまさに「争い」の代表的な「戦争」について述べたいと思います。

多くの方は、日本は平和な国で戦争などしない国と感じているのではないでしょうか!?しかしながら冷静に考えてみましょう!昔から国内でも戦争の繰り返しで、最近で言えば昭和の時代に戦争がありました。経験された方の多くがご存命です。

ウクライナやガザ地区、その他の内戦など世界を見渡せば常にどこかで戦争が行われています。身近な例えで言えば交通事故と同じように戦争をして良いことは当事者にとっては何もありません。(武器などを売る商売の方は儲かるのでしょうが…)

戦争も結局は欲や貧困などにより窮地に立たされたことが原因で始まってしまいます。ウクライナの状況を見てわかると思いますが、始まってしまうとなかなか終わらせることも難しく、戦争中の犠牲の恨みも増幅していき、やられたらやり返す気持ちがさらに終戦を難しくさせます。

「100億円あげるから明日人生が終わる」と言われてもらう人はほとんどいないと思います。それだけ人の命には価値があり、お金では売り買いできないものだと思います。そんな大事なものを沢山失う戦争はしてはいけないことだと思います。

しかし国益などを考えて交渉では解決できないときに力ずくで行われるのが戦争、「・・・ファースト」という言葉がよく使われますが、すべてダメとは言いませんが自分だけ、自分のところだけが良くなれば良いとの意味を強く感じるので私は好きな言葉ではありません。

以前にもお伝えしたことがありますが、忘己利他の利他の精神が育まれれば戦争は無くなると思います。災害の地にボランティアに行かれるのも利他の精神かと思います。

自分を犠牲にするまでもなく他人の幸せを願い、感謝の気持ちを持つことが大切なのではないでしょうか!

私もまだまだ不十分なので得を考えず、徳を積まなければなりません。

1日でも早く、一つでも戦争が無くなることを願います。

皮膚のかゆみ

皆様、新年明けましておめでとうございます。良いお正月を過ごされましたでしょうか?

新年早々に能登半島地震が起き、大変な被害が出ております。一日も早い復興を祈願しております。

今回は冬の季節に特に多くなる、『かゆみ』をテーマに、紹介していきます。

冬の乾いた外気と、皮脂の欠乏、発汗の低下などが合わさって起こる皮膚の病気を『皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)』といいます。皮脂の分泌が低下する高齢者や妊娠中の女性に多くみられ、その名の通り強いかゆみが生じます。外部から皮膚を守っている角層のバリア機能が乾燥によって失われる為、知覚神経が刺激を受けやすくなり、かゆみを生じるのです。

一般的な治療では、皮膚の乾燥を防ぐために保湿剤のクリームやローションを塗ります。また、かゆみがひどい場合にはステロイド剤、かゆみ止めを用いることもありますが、十分な効果が得られない時もあります。

すぐに出来る対策としては、室内環境を整えることです。暖房などを使う際には、加湿をし、室内の湿度を一定に保つよう心掛けて下さい。

しかし、かゆみは痛みと違って、掻くという行為で解消できる症状です。しかし我慢できずに掻き続けてしまうと、それがまたかゆみを強め、悪循環になってしまいます。強いかゆみはやがて大きなストレスとなり、睡眠障害やイライラを引き起こすこともあります。

そんな辛いかゆみに対して、通常治療の効果を高められるような漢方薬を紹介します。

当帰飲子(とうきいんし)・・・・・・皮膚に潤いがなく乾燥して、かゆみがある慢性の皮膚疾患に処方されます。元来、かゆみ・腫れ・かさぶた等の症状を伴う皮膚炎に使用されていました。14世紀以降は、乾燥性の皮膚炎に良いとされ、特に虚証タイプ(高齢者などの虚弱な方)向けに使われてきました。この漢方薬には血流を良くし、皮膚のバリア機能の回復をはかる『四物湯(しもつとう)』という漢方薬をベースに、皮膚を強くしたり、かゆみ・痛み止めの役割を果たす生薬が加わっています。皮膚のターンオーバーが出来ない状態に、外用剤の機能を高める役目をします。

また、精神不安・不眠症などのメンタル的な要素が加わった場合には加味帰脾湯(かみきひとう)という漢方薬もおすすめします。こちらには、精神を安定化させる生薬も含まれています。

かゆみが我慢できない、背中などがかゆくても手が届かないなどといった悩みがある方は是非相談して下さいね。

R6.1.14ブログ

昨年は地域包括ケアシステムについて述べてきました。 

この意識は地域を守り・創るためにはとても必要なことです。これについてはまたいつか取り上げていきますが、今年は違った視点で「争い」について述べていこうと思います。

「争い」とは「戦争」は勿論ですが、社会や学校でも「争い」は様々にあり、目線を変えれば受験も「争い」です。「争い」にも色々あり、場合によっては必要な「争い」もあるのかなと思います。

さて、その第1弾として一番述べたい「争い」は、個人の欲から生じる「争い」です。その中でも考えたいのは、組織(団体)が前進していくために必要な「争い」と不必要な「争い」です。

組織を良くしていきたいと考え実行し、ライバル意識を持ったり、より良いものを取り組むために行う議論は「争い」でも必要なものではないかと思います。

しかし組織を後退させ、結果が伴わない嫉妬や否定からの考えから出てくる「争い」は不必要なものであり、何も生まないものだと感じます。

日曜劇場にて【下剋上球児】がありました。監督がスターティングメンバーを発表したとき、選手たちは不信感を抱きました。しかし信じた監督が考えがあってそうしているのだから、自分たちは自分たちのできる準備をしておこうとする場面がありました。まさにワンチームであり、地域包括ケアシステムを創りあげるためにも、組織(団体)が向上していくためにも最も大事な考え方だと思います。

個人の考えが通らないとき、間違っていると思っていることを組織が進もうとしているときに意見も出さず協力もせず、争うことは何も生まないと思います。

違うと思うことに意見もせず聞き入れろと言っているわけではありません。

良くしたいという気持ちを持った者同士が意見討論する「争い」は大事ですし、先導するものは協力・同意してもらえるように説明し、目指すところを示していくことが大事なのだと思います。

嫌いだから、間違っているからではなく、組織(団体)にとって必要なのか、必要であれば自分には何が出来るのかを考えて取り組む姿勢が必要なのだと思います。

本年も前向きに、何か良いことが起こるように多くの方々が活きていけることを願います。

本年もどうぞよろしくお願いします。

(高麗)人参のはたらき、効果について

最近は健康に気を遣い健康ドリンクなどを自主的に購入される方が増えてきたように思います。TVのCMの影響もあるのでしょう!!

患者さんの中に『高麗人参 (こうらいにんじん)』のドリンク剤を飲まれている方がいらっしゃいましたので、今回は生薬の『人参(にんじん)』の話をしたいと思います。

★人参と高麗人参は別モノ!

高麗人参という名前から、野菜の人参と同じものだと認識されている人も多いのではないでしょうか?皆さんとなじみの深い人参はセリ科、高麗人参はウコギ科の植物なので全くの別物です。人参と高麗人参では含有成分が異なります。人参の主な成分はカロチン、ビタミンA、カリウム、食物繊維であり、高麗人参はサポニン、ビタミン、タンパク質、アミノ酸、炭水化物、ミネラルです。そして高麗人参には人参以上に栄養価が高いものですから高級品として扱われています。

★高麗人参には別名がたくさん

高麗人参は朝鮮人参(ちょうせんにんじん)、雲州人参 (うんしゅうにんじん)、紅参 (こうじん)などとも呼ばれていますが、日本薬局方には「御種人参(おたねにんじん)」として記載されているのでこちらが正式名称となります。八代将軍・吉宗は朝鮮半島から入手した人参の種と苗を栽培した後、その種を各地大名に分け与えたことから“ありがたい・種”→『御種』と名がついたそうです。

★高麗人参のもつ効果

このような生薬の人参には次のような作用効果があります。

1.補気(ほき)作用: 「気」を産生する胃腸系を強め、身体全体の強壮をはかります。例えば、下痢を止める、消化を促進、体力をつける、呼吸機能を高める、など。

2. 生津(せいしん)作用:熱などによって減少した体の体液(津液)を補い、口渇を止めます。

人参を含む漢方薬

人参の滋養強壮作用を目的としている漢方薬にはほとんどの場合、『黄耆』という生薬もセットで含まれています。なぜなら黄耆は人参のもつ作用を高めるからです。例えば、

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)

などがこれらを含んでいます。

この冬の時期では、風邪などの疾患で咳や倦怠感の症状がある場合に、鎮咳作用のある五味子(ごみし)を含んだ人参養栄湯がより適しています。このように、人参以外の生薬の組み合わせによっても適した処方が変わることがあります。気になられたら是非ご相談くださいね。

R5.12.17ブログ

今年も残すところ2週間をきりました。寒さも厳しくなってきますので、お気をつけて年越しに備えてください。

さて、これまで地域包括ケアシステムについて様々な視点からお知らせしてきましたが、そろそろネタも尽きてきそうなので最後にしようと思います。あくまで私の概念であり、違うとお叱りを受けるかもしれませんが、たつき会の今後も踏まえてお伝えします。

今後地域で最も問題になるのは人手不足です。

そして団魂の世代が後期高齢者になられ介護サービスを十分に受けられない地域も増えていきます。さらには最期を迎える場所も希望に添えない状況も出てくると感じます。

そうしたことをできるだけ解消するには、共生と統合で事業を大規模化することです。

小規模の良いところは当然にあり、ダメだと言っているわけではありません。しかし、デイサービスでは50人の利用者を10人の職員でみることは可能でしょうが、10人の利用者を2人の職員でみることは困難だと思います。

そうした視点をもって地域を残していかなければ、結果的には必要な業種が無くなっていくのだろうと思います。できれば切磋琢磨しあえる状況があるべきなので、様々な業種が1つになるよりはどの業種も一定数残るべきだと思います。

こうしたことを行政や地域の方々が意識すべきで、サービスの質が悪ければ廃業されるか吸収合併されるべきです。より良いところが生き残っていくことが地域のためになるので、当然たつき会はより良いサービスで安心安全の医療と介護を提供し続けなければならないと考えています。

しかしながらすべての方にとって満足いただける医療や介護を提供することは困難であり、全ての職員が高いレベルの医療や介護を提供することも難しい現実もありますが、理想を求め続け諦めないことが大切だと思います。

すでに共生・統合は医療や介護だけでなく、様々な業種で始まっております。地域のことを考えて取り組まれている企業を応援していかなければならないのではないかと考えています。

選ばれるたつき会になるように、来年より新たなスタートをきる予定です。

たつき会の永続のためには一人の個人に求心力が集まることは好ましくないと考えます。たつき会の理念が求心力となり、理念に沿って一人ひとりの職員が仕事をすることが大切だと思います。

よって来年からは理事長として私は実権を放棄し職員に任せていくことを、職員に伝えました。最初は不安や失敗も多くなると思いますが、私が居なくなってもたつき会がより良い組織として永続するために様々なことに取り組んでまいります。

関わっていただいた全ての皆様に感謝し、これからのたつき会も応援していただければ幸いです。

皆様が慌ただしい年末を体調崩さず過ごされ、元気に明るく新年を迎えられますことを願っております。

痛みに効果の期待できる漢方薬

痛みに対する専門家はペインクリニックと呼ばれ、主に麻酔科に所属する先生方が担っていますが、一般には町のお医者さんとしては少ないのが現状です。

腰が痛い、肩が痛いといって皆さんが受診されるのは整形外科が多いのではないでしょうか?

例えば階段から落ちて腰を打ったという痛みがあります。骨折していなければ、湿布、さらに鎮痛薬が処方されて安静の指示が出てそれでおおよその診療は終わりです。

そこで漢方の出番なのですが、そんな痛みに漢方が効くの?って思われるかもしれませんが、歴史を振り返ってみますと、江戸時代、世界で最初に乳癌のオペに成功した華岡青洲 (はなおかせいしゅう)が麻酔薬として使ったのは、実は「通仙散(つうせんさん)」という漢方薬なのです。

それで普通は痛みは消えていくのですが、数週間たっても痛みが消えずお困りの方もいらっしゃいます。

さて打撲の初期は痛く腫れて熱を持ちますがそれがだんだん冷えていきます。

お風呂に入ると痛みが楽になる。そういう方はまさに漢方薬が適応します。

冷えて痛む時は、附子剤(ぶしざい)の出番です。

附子(ぶし)という生薬は、生薬の中でも最も温める作用が強く、鎮痛作用を持った生薬です。打った、捻ったという痛みが長引いた時、具体的には、治打撲一方 (ぢだぼくいっぽう)と附子末、あるいは治打撲一方と桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)という組み合わせがよく効きます。

西洋医学では冷えに対する対処法がありませんが、漢方では冷えを改善する手段があります。ですから冷えのある痛みに対しては漢方の方が優れているのです。

腰下肢痛の場合、いわゆるぎっくり腰なら芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)と桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、あるいは、治打撲一方と疎経活血湯(そけいかっけつとう)の組み合わせ。

高齢者なら八味地黄丸(はちみじおうがん)と桂枝茯苓丸、少し浮腫がみられれば牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)と桂枝茯苓丸の組み合わせが有効です。

帯状疱疹後神経痛では麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などが効きますが、じっとしていれば痛みはないが、少し触れただけ、風が吹いただけでも痛みを感じるアロディニアという状態に対して、神経周囲組織が炎症後に乾いた状態になっていると考え、そこを潤してやろうという漢方薬、六味丸(ろくみがん)と麦門冬湯(ばくもんどうとう)の組み合わせが不思議なほど効果的です。

急に寒くなってきたので、冷えると痛いなどでお困りの方はご相談下さい。

夜中のおしっこが気になる方へ

今回は夜中にトイレで目が覚める、夜間頻尿でお困りの方いらっしゃいませんか?

今回は「排尿障害に有効な漢方薬」についてお話します。

まず挙げられるのは、おしっこのトラブル専用のお薬、猪苓湯 (ちょれいとう)です。これは下腹部辺りに熱候がある(つまり炎症がある)膀胱炎のファーストチョイスとされています。

頻尿や残尿感、排尿痛など尿路不定愁訴に幅広く用いられます。慢性的に症状の続く人、繰り返す人には似たお薬で猪苓湯合四物湯 (ちょれいとうごうしもつとう)が用いられることもあります。さらに炎症が強ければ竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)などが用いられます。

次に挙げられるのが八味地黄丸(はちみじおうがん)です。

漢方的なお腹の所見では、下腹部が軟弱で下半身が冷えるタイプの排尿異常に用いられます。老化に伴っておしっこが出にくくなったり、頻尿となったりするという方が増えてきますが、そんな方のお薬です。女性にももちろん使われるのですが、男性では前立腺肥大症のファーストチョイスです。

似たお薬に牛車腎気丸 (ごしゃじんきがん)があります。

これは八味地黄丸に利尿作用のあるゴシツ・シャゼンシを加え、体を温めたり、鎮痛作用のある附子の量が倍になり、胃腸にもたれる地黄の量が少なくなっていますので、ある意味では八味地黄丸の作用を増強し、マイルドにしたお薬です。

漢方専門施設の統計では、男性では60歳代、女性では80歳代をピークに、3人に1人にはこの類のお薬が使われていたほどポピュラーなお薬です。実はハルンケアは八味地黄丸がベースとなっています。

最後に紹介するのが清心蓮子飲(せいしんれんしいん)です。

これは気虚の状態で、疲労感があったり、抑うつ傾向があったり、逆にイライラしたりするなど神経過敏な状態の方に適しています。また、八味地黄丸が胃にもたれて飲めないという人にも適応します。ユリナールはこの清心蓮子飲がベースとなっています。

夜間2回以上、おしっこに起きてつらい方、市販のお薬の違いについて少しは理解いただけたでしょうか?

熱感があれば猪苓湯、下肢に冷感があって胃腸が丈夫なら八味地黄丸、胃腸が弱い人には清心蓮子飲となります。

最後に膀胱炎では、抗生剤が必須となりますので、恥ずかしがらずにまずはご相談下さい。

R5.10.14ブログ

地域包括ケアシステムを念頭に様々な記事を書かせていただいておりますが、このたび新原呉市長のお話をお聞きする機会があり、私が考える地域包括ケアシステムの具体案を述べさせていただきました。

夢のような話と思われるかもしれませんが、こうした発想をもって少しでも実現していかなければ地域はもたないのではないかと感じています。(以前にお伝えする部分と重複している場合はご了承ください)

前々から発案し、動き、実現に至っていないのが送迎と給食システムです。

当院では患者さんのために受診される方対象に送迎を開始しましたが、コロナの感染対策により中止となりそのままになっています。また一医療機関が少数の患者さんのために人員を割いて取り組むのは地域包括ケアシステムの観点ではマイナス要因と考えます。

さらに以前、タクシー会社に患者さんと医療機関とタクシー会社が1/3ずつ負担してタクシーを利用して頂くのはどうかと提案しましたが取り入ってもらえませんでした。

このたび新原呉市長にも提案させていただきましたが、ウーバーイーツのように今いける人がキャッチして迎えに行くようになればいいなと言われていました。

実際にスマートフォンで連絡すればタクシー会社問わず近くの待機車が迎えに来てくれる時代ですので、近い未来に実現する、いやすでに実現しているのですが、費用の問題は解消されず、ボランティアなどが発展するとタクシー会社が廃業していくのだろうと思います。生活バスなども無駄が多いように感じます。こうしたことを地域で効率的に運用できるようになると住みやすい地域が長く保たれるのだろうと思います。

次に給食センターです。現在呉市では中学校の給食を増やしていく取り組みをされており、川尻ではずいぶん前から小学校から中学校に保温車で給食を配送しています。私はこうした地域の給食センターを地域の高齢者や介護施設などにも提供できるようにすることを以前から考え、提案させていただいております。食事は食育はもちろんですが高齢者にとってもっとも楽しみな生活の一部です。小規模では取り組めないことも大規模になることでメニューが豊富になりさらに無駄が減りSDGs的にも良いのではないかと思います。

私は少子高齢化よりも何よりも就業者減少を懸念してきました。ロボットなど無人化が進んだり、様々なシステムの発展で効率化が進み、人不足が解消されてくることを願っております。ただその先には人余りになることも懸念されます。足りないところをロボットで対応できる状況になればと願うばかりです。

最後になりますが、私は日本の医療が崩壊しないためには医師が必要だと思っています。しかしそうなれば、医師余りが起き、報酬は減っていき、なり手が減っていきます。すでにそうしたことをいち早くキャッチしている親や子供たちは医師になることを避け始めているようにも感じます。日本の医療は制度も技術も誇れるレベルと思ってはいますが、今後激震が走るのではないかと懸念しております。

いずれにしてもちょうどよいのがちょうどよいので、過不足なく地域が成り立っていくことを想像しながら一人ひとりの市民が取り組まなければならないのだろうと思います。

秋ばてと漢方

秋ばてという言葉が最近聞かれるようになりました。これは本来、夏ばてと言われていたものなのですが、最近の温暖化の影響でしょうか。季節が1ヶ月ずれてきたように感じます。

夏ばては本来、夏を過ぎて9月の中旬ほどになり、過ごしやすくなってから、手足や身体が重だるかったり、気力がない、食欲がないといった症状を呈するものを言いましたが、最近では夏の盛りの頃、食欲がなく、身体がだるく、何もする気が起こらないといった状態を指すようになりました。それだけ猛暑の影響もあるのでしょう。

今年の猛暑はいつまで続くのでしょうか?

盛夏の夏ばてには、その名の通り、暑さを冷まし元気を出させてくれる清暑益気湯が役に立ちましたが、日中の暑さに比べて、朝夕寒気を感じるようになってきたこの時期からは補中益気湯の出番です。

補中益気湯は消化機能を補い元気を益す薬という意味で作られたお薬です。

これらは補剤と呼ばれ、西洋薬にはないタイプの薬です。

元気が出る意味を医学的に解説するのは難しいですが、補中益気湯の作用としては、筋肉の低下を改善する。下垂傾向にある臓器を支え回復させる。食欲の改善、消化機能の改善、疲労感の改善、免疫力を高めるなどが主な作用と言われています。実際に不妊男性の運動能の低下した精子を改善したり、解熱剤では下がらないストレスによる発熱を解熱したりすることも知られています。

今はコロナ感染症、インフルエンザも流行っています。このまま冬場を迎えるかもしれません。うがい、手洗い、人の多い場所ではマスクも必要です。誰しも不摂生が続くと体調を崩してしまいます。

そんな時に役に立つのも補剤です。

コロナ、インフルエンザの予防にワクチンがありますが、ワクチンも万能ではありません。それは、毎年、次年度流行しそうなウィルス株を想定して、ワクチンを作っているからです。ウィルスも一定ではないのです。コロナウイルスもどんどん変化しています。

つまりワクチンは予防に有用ですが、ワクチン株と種類が異なれば、効かないこともあるのです。リスクの高い方には補中益気湯を飲ませておくと感冒に罹患する率が大幅に下がるという研究もあります。

補中益気湯で秋ばてを克服し、この冬の感冒・インフルエンザを予防するためにも不摂生を慎み、食欲の秋を楽しみましょう。

また体を動かし体力をつけておくことが最も有効な風邪の予防となります。