今回は『しゃっくり』についてお話したいと思います。
肺の下に位置する筋肉である横隔膜が痙攣すると、声帯の筋肉が収縮します。
狭くなった声帯を息が通ることで、「ひっく」といった音を発声します。
この異常呼吸を『しゃっくり』といい、またの名を『吃逆』ともいいます。
横隔膜の痙攣によるしゃっくりは、特別な理由がなくても発症し、健康な人でも起こり得ます。
ほとんどは数分ほどで自然に治ります。
しかし、頭部外傷や心筋梗塞、腫瘍などの器質的な疾患が原因の場合は、
病気を治療しないことには止まらないこともあります。
原因が不明な場合には漢方薬などを使う手があります。
例えばその代表処方が芍薬甘草湯です。
この漢方薬はこむら返りに使われることでお馴染みです。
しゃっくりに効果的な漢方薬を3処方紹介します!
①芍薬甘草湯
この漢方薬には鎮痙・鎮痛効果があります。
ふくらはぎの筋肉の異常収縮以外にも、胃痛や生理痛にも用いることができる処方です。
しゃっくりに用いるときは芍薬甘草湯単独、あるいは呉茱萸湯(のちほど解説します)と
併用で用いられます。
芍薬甘草湯はあまり証を考慮せずに用いても効果がある漢方薬ですが、
[甘草]の含有量が多いため、低カリウム血症などの副作用には注意が必要です。
②呉茱萸湯
この漢方薬は、全ての生薬が温める方向性を持っており、冷えを訴える方に適しています。
特に、[呉茱萸]は、吐き気や嘔吐を改善する「止嘔」の薬能をもつ生薬です。
普段から冷え性の方が、何らかの原因でさらに体の芯まで冷えて、
吐き気やしゃっくりを生じる場合に使う処方です。
③半夏瀉心湯
難治性のしゃっくりにはファーストチョイスとなります。
なぜ効果があるのかははっきりわかっていませんが、
ストレス関連の場合には試してみる価値があります。
半夏瀉心湯はかつて吉田茂首相のしゃっくりの治療に使用されたことが知られています。
初回1包ないし2包(2.5~5g)を湯呑1杯程度のお湯に溶かし、冷やしたところで
一気に服用し、その後、原疾患にもよりますが1日3包(7.5g)を数日間継続するという
方法があります。
もししゃっくりがなかなか止まらないという場合があれば、
このような漢方薬を用いてみてもよいかもしれませんね!