元気が出る漢方薬

梅雨明けと同時に大暑の頃を迎え、猛暑が続いています。電気代を節約して、あるいは冷房は嫌いだからと我慢していらっしゃいませんか?30℃を超えたら温度を28℃くらいに設定して冷房を使って下さい。特にマンションのような集合住宅にお住まいの方はお気をつけ下さい。最近は部屋の中にいて熱中症になるほど一昔前よりは暑くなりました。

ストレスの多い時代、えらい!しんどい!って疲労・倦怠感を抱えてらっしゃる方も多いのではないでしょうか?そんな方に栄養ドリンク以上に確実に効く薬が漢方にはあります。元気が出る薬、それが補剤と呼ばれる漢方薬です。

補剤の代表は補中(ほちゅう)(えっ)()(とう)です。名前の通り、(ちゅう)(ちゅう)(しょう))を補い、気を益す薬です。漢方医学では、(ちゅう)とは消化管(消化機能)のことです。つまり消化機能を補い、元気を出させる薬なのです。その中心となる生薬は人参(にんじん)です。生薬の中でも最も高価なものの一つです。食卓に並ぶセリ科の野菜のニンジンと違って、ウコギ科のオタネニンジンが生薬として用いられています。朝鮮人参、薬用人参、高麗人参などとも呼ばれていますが、なぜ高いのか申しますと、種子から根の収穫まで4~6年もかかるからです。また、一度収穫すると10~30年も同じ土地では栽培できないと言われています。次に大事な生薬が黄耆(おうぎ)です。人参と黄耆を含む漢方薬のことを参耆剤(じんぎざい)とも言います。補剤(参耆剤)の作用について、もう少し詳しく言いますと、補剤は本来生体が持つ、免疫機能の賦活、全身の栄養状態の改善、生体防御機能の回復、治癒力の促進の効能を持った薬剤群のことを指します。

最近よくテレビに出ている帝京大学の新見正則先生は、新型インフルエンザが話題になった頃、ご自身が行かれていた愛誠病院職員360人を2群に分け、補中益気湯を飲ませた群と飲ませなかった群でインフルエンザに罹患した数を比較研究されたそうです。その結果、飲んだ群では1例だったのに対し、飲ませなかった群では7人がインフルエンザに罹患したそうです。疲労回復促進することは風邪の予防にもつながるということですね。

ほかにも、夏ばて専用の補剤、清暑(せいしょ)(えっ)()(とう)や気が虚しただけでなく、血まで虚した状態、つまり貧血傾向、皮膚の乾燥や肌荒れがある人には十全(じゅうぜん)大補(たいほ)(とう)人参(にんじん)(よう)(えい)(とう)が使われます。人知れず頑張っている貴方、えらい、しんどいという慢性的な疲労は漢方では未病(みびょう)という状態で治療が可能なのですよ。