多汗症について

汗が出て止まらない、タオルやハンカチが何枚あっても足りないなど、
悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか⁇
漢方では自然発汗が無ければ無汗(むかん)といい、あれば自汗(じかん)と呼びます。
つまり多汗症は自汗の過剰状態と捉えますが、
発汗の有無は漢方の診察のひとつの重要なモノサシとなります。

自汗の原因は大きく二つに分けられます。

一つは、(ひょう)(きょ)です。
(ひょう)とは人体の表面付近、浅い部分を指します。
例えば急性熱性疾患の初期などにみられる悪寒や熱感といった体表の症状、
首から上の咽喉痛、頭痛、首の強張りなどは表の症候です。
この表の機能低下(表虚)は自汗の原因になります。
表虚の典型的な治療薬は(けい)()(けい)()(とう)が代表的)ですが、黄耆(おうぎ)も表の機能を高め正常化します。

代表的な方剤は、

防已黄耆(ぼういおうぎ)(とう)(水太りタイプでまた膝関節に水が溜まっているものにも用います)と
黄耆(おうぎ)建中(けんちゅう)(とう)(虚弱な体質で、軟弱な皮膚からじとじとと汗をかく場合)です。

もう一つは()(ねつ)です。
()は人体の奥、中心部です。
内部にこもった熱は冷水を欲して口渇を招き、発汗(自汗)により熱を冷まそうとします。
内部にこもった熱を冷ます代表的な生薬は白い石膏(せっこう)で、代表的な石膏含有方剤、(びゃっ)()(とう)の名前の由来です。

代表的な方剤には、

(びゃっ)()加人参(かにんじん)(とう)があります。

暑がりで強くのどが渇き冷水を多量に飲みたがる。
そのくせ皮膚は乾燥気味という人に適応があります。
今の時期、いくら水分を摂ってもすぐに汗をかいてしまい水分量だけ増える、体が火照る方が適応になります。
五苓散(ごれいさん)は浮腫などの水の偏在を調節しますが、結果として口渇を軽減し、桂枝含有で自汗を調整します。
そこで、妙に咽が渇いてむくみがちな二日酔いや夏バテにも有効です。

ほかにも精神的な発汗には(さい)()の入ったものが適応となります。
代表的な薬剤として手掌発汗が特徴的な()逆散(ぎゃくさん)や
首から上の発汗が特徴的な(さい)()(けい)()(かん)(きょう)(とう)などがあります。

急性熱性疾患における自汗は虚証となっていますが、
多汗症の治療においては、虚実の鑑別、原因の鑑別が重要となってきます。

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