漢方では、生体を維持する循環要素として、「気」、「血」、「水」といった考え方がありますが、今回は「水」の異常について紹介します。
ヒトは1日に2Lもの水を体外に放出しており,それを食物や飲料によって補っていますが,腎臓の糸球体は1日に約180Lもの体液を濾過しその98%を再吸収しています。このように水は私たちが生きていく上で欠かせないものです。その水の流れが滞り、体のどこかで過剰となったり、偏在したりすることを漢方では「水滞」あるいは「水毒」といって治療の対象となります。
主な症候は、以下の通りです。
①分泌異常:水様性鼻汁、喀痰、帯下、浸出液、尿利の減少・過多、水様下痢
②停滞:浮腫、胸水、腹水、関節液貯留、腫脹、胃内停水、腹中雷鳴
③自覚症状:動悸、めまい感、回転性眩暈、起立性眩暈、耳鳴、頭痛、口渇、 嘔吐、咳嗽、喘鳴
水毒の診断基準(総計13点以上を水毒とする) |
身体の重い感じ | 3 | 悪心・嘔吐 | 3 |
拍動性の頭痛 | 4 | 腸のグル音の亢進 | 3 |
頭重感 | 3 | 朝のこわばり | 3 |
車酔いしやすい | 5 | 浮腫傾向・胃部振水音 | 15 |
めまい・めまい感 | 5 | 胸水・心のう水・腹水 | 15 |
立ちくらみ | 5 | 臍上悸(腹大動脈の拍動が触れる) | 5 |
水様の鼻汁 | 3 | 水瀉性下痢 | 5 |
唾液分泌過多 | 3 | 尿量減少 | 7 |
泡沫状の喀痰 | 4 | 多尿 | 5 |
治療生薬は、茯苓、蒼朮、白朮、猪苓、沢瀉、防已、黄耆、細辛、麻黄、杏仁、半夏、木通などで、利水薬と呼ばれます。そして代表的な方剤は五苓散です。
これから暑くなるとビールやお酒の美味しい季節がやってきます。皆さんも二日酔いの経験はあると思いますが、これも水毒なのです。他にも車酔い、子どもに多い嘔吐下痢、今の時期であれば雨降り前に頭痛やめまいがひどくなる、体調がすぐれない。そんな時に手許に置いておきたい薬です。
お困りの方はぜひご相談下さい。