ここ最近、突然寒さが増してきたので少し風邪っぽさや気だるさを感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
風邪の漢方薬といえば『葛根湯』というイメージですが、患者さんによっては注意が必要な場合があります。
それはまさに、今回のテーマである『高齢者・虚弱な方』に対して特に必要と言えます。
葛根湯の構成生薬の中には『麻黄』があります。この麻黄にはエフェドリンという成分が含まれており、この作用として尿がでにくくなったり、血圧が上がったりします。
そのため、前立腺肥大症で排尿困難や心疾患のある方に対しては注意が必要です。
(麻黄は『魔界の王様』と思って用心して下さい!)
ただし、高齢者や虚弱な方に対して葛根湯は絶対NG! というわけではありません。発熱を伴うような風邪や頓用に出されたりすることもあります。
またエフェドリンには眠気が起きにくいといったメリットもあるので、車を運転される方にはとてもいい風邪薬でもあります。
それでは、葛根湯以外でお勧めできる処方を紹介します。
ご高齢の患者さんの診療でよく見られる、『ずっと風邪をひいた状態』に対しては香蘇散を用います。
葛根湯は風邪の初期(発汗は無く、寒気がする)に対して使うとよく効きます。
この『ずっと風邪を引いた状態』というのは、風邪の初期でもなければ特に重篤感があるようなものではありません。こういったゆるめの風邪に対しては香蘇散を用います。
香蘇散には要注意生薬である麻黄も含まれておらず、また眠気も起きません。
まさに高齢者・虚弱な方に対してうってつけの風邪薬ではないでしょうか?
まとめ
高齢者や虚弱な方の風邪に漢方薬を使用するときは、まずその風邪の状態を見極めることが大切です。
『ゆるめの風邪』には香蘇散、『発熱を伴うような強めの風邪』には麻黄を含む葛根湯。
そして豆知識ですが、葛根湯を飲むときはお湯に溶かして服用すると、体も温まり効果もよくなります。
是非お試しください。