痩せ薬にはご用心

2008年から始まった特定健診制度もあってメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)という言葉が一時ブームにもなりました。これは内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態のことをいいます。

さて、そうしたメタボブームの中、痩せる薬として、2006年に小林製薬から「ナイシトール」が発売され、痩せ薬のOTC(一般用医薬品)市場もブームを迎えます。他にも「コッコアポ」やロート和漢箋シリーズの「ロート防風通聖散錠」などCMがテレビで流れ、痩せ薬の市場はなんと200億円くらいもあるそうです。そこで値段を調べてみました。4週間飲んだ場合で大体4,500円~5,600円(税込み)かかるようです。これらはいずれも中身は漢方薬の防風通(ぼうふうつう)聖散(しょうさん)です。医療用の防風通聖散も実はあります。ツムラのものは4週間分で薬価は1,911円、3割負担の場合で573円です。一般用はより安全性を重視し、医療用よりも薄味に作ってあります。なのに一般用がこんなに高いのはなにか不思議な気がします。

防風通聖散の効能は「腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘」となっています。ほかに肥満に使用される漢方には、水太りタイプの防已黄耆(ぼういおうぎ)(とう)、OTCではビスラットゴールドという名称で販売されている大柴(だいさい)()(とう)などがあります。

実は防風通聖散は意外と副作用が多いことでも知られています。能書には重大な副作用として、間質性肺炎、偽アルドステロン症、ミオパシー、肝機能障害、黄疸があげられています。また瀉下成分の大黄(だいおう)芒硝(ぼうしょう)が入っていますので、合わない方では下痢することもあります。

いずれにしても美容目的の極端なダイエットは危険です。薬で痩せようと思ってはいけません。正しい食事療法と運動療法が最も大事です。薬はそのサポートとお考え下さい。できれば医師の管理の下での肥満治療をお勧めします。

諸外国に比べると、日本人の肥満率は決して高くありません。BMI25以上の人が約25%、4人に1人くらいです。さらにBMI30以上となるとわずか4%くらいです。先進国(OECD加盟国)の中でも肥満率は最も低い国の一つなのです。長寿国としての所以なのかもしれませんね。