7月第一週目に西日本豪雨によって受けた被害はとても大きいものでした。
10日ほど経った今でも状況が少し動き出したばかりです。
この豪雨は広島県だけではなく、他の被災地にも大きな爪痕を残しました。
復旧に向けての戦いはまだ始まったばかりですが、
かつての経験を生かして被災者の皆さんの力になるであろう漢方薬を紹介したいと思います。
2011年3月11日に発生した東日本大震災で、帝京大外科准教授 新見正則先生が被災地に届けた漢方薬についてです。
①気持ちが晴れない人にはまず香蘇散
今回の被災によって想像を絶するような大きな精神的ストレスを受けていると思います。
ストレスに対処する目的で、新見先生はまず最初に香蘇散を処方するそうです。
香蘇散は香附子、紫蘇葉、陳皮、生姜、甘草の5つの生薬からなっており、
味も良く飲みやすい漢方薬です。
服用すると気持ちが晴れるのと、風邪の初期にも対応できる処方です。
また、香蘇散が無効な方には半夏厚朴湯という漢方薬を用いることもあるようです。
②経過が長引くときは柴朴湯、柴胡加竜骨牡蛎湯
漢方では、症状が改善しない場合には、柴胡と黄芩を中心に組み合わせた『柴胡剤』を併用することが
あります。
柴胡剤の中でも最も一般的なものが小柴胡湯で、
これと上記で紹介した半夏厚朴湯を組み合わせたものが柴朴湯という処方になります。
半夏厚朴湯では思うような効果がなく、長引くストレス症状には柴朴湯が有効となることもあると
紹介されています。
柴胡加竜骨牡蛎湯も柴胡剤のひとつで、ストレスに有効です。
また、冷え症でストレスがある人には、温める生薬である乾姜の含まれた、柴胡桂枝乾姜湯という
漢方薬がおすすめです。
③夏バテの予防に清暑益気湯
新見先生はもう一つ、被災地に届けたかった漢方薬があったのですが、震災によるメーカーの工場ライン
停止によって叶わなかったものがあったようです。それが、補中益気湯でした。
避難所生活を余儀なくされた方々は気力・体力ともに弱っており、また身を粉にして被災地で働かれている
人への心身のエネルギー補充に役立てたかった処方です。
東日本の震災は冬場でしたが、この豪雨は夏場です。
異常気象により今年は猛暑と言われております。
夏場に対応した補中益気湯の類似処方である清暑益気湯を役立てられたら、
皆さんの力に少しでも変わるのではないかと思います。
今回の被災では、断水、交通網の混乱などで被災地の復旧は迅速とは言えないものです。
漢方薬を飲んでいる場合ではないとも感じます。
しかし検査がなくても処方がしやすい漢方薬は、少しでも早く、多くの人の心と体のケアをできる
ものでもあると思いますので、このコラムを読まれている方・必要な方に微力ではございますが
役に立てたらと感じ、記載させて頂きます。