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痛みに効果の期待できる漢方薬

痛みに対する専門家はペインクリニックと呼ばれ、主に麻酔科に所属する先生方が担っていますが、一般には町のお医者さんとしては少ないのが現状です。

腰が痛い、肩が痛いといって皆さんが受診されるのは整形外科が多いのではないでしょうか?

例えば階段から落ちて腰を打ったという痛みがあります。骨折していなければ、湿布、さらに鎮痛薬が処方されて安静の指示が出てそれでおおよその診療は終わりです。

そこで漢方の出番なのですが、そんな痛みに漢方が効くの?って思われるかもしれませんが、歴史を振り返ってみますと、江戸時代、世界で最初に乳癌のオペに成功した華岡青洲 (はなおかせいしゅう)が麻酔薬として使ったのは、実は「通仙散(つうせんさん)」という漢方薬なのです。

それで普通は痛みは消えていくのですが、数週間たっても痛みが消えずお困りの方もいらっしゃいます。

さて打撲の初期は痛く腫れて熱を持ちますがそれがだんだん冷えていきます。

お風呂に入ると痛みが楽になる。そういう方はまさに漢方薬が適応します。

冷えて痛む時は、附子剤(ぶしざい)の出番です。

附子(ぶし)という生薬は、生薬の中でも最も温める作用が強く、鎮痛作用を持った生薬です。打った、捻ったという痛みが長引いた時、具体的には、治打撲一方 (ぢだぼくいっぽう)と附子末、あるいは治打撲一方と桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)という組み合わせがよく効きます。

西洋医学では冷えに対する対処法がありませんが、漢方では冷えを改善する手段があります。ですから冷えのある痛みに対しては漢方の方が優れているのです。

腰下肢痛の場合、いわゆるぎっくり腰なら芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)と桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、あるいは、治打撲一方と疎経活血湯(そけいかっけつとう)の組み合わせ。

高齢者なら八味地黄丸(はちみじおうがん)と桂枝茯苓丸、少し浮腫がみられれば牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)と桂枝茯苓丸の組み合わせが有効です。

帯状疱疹後神経痛では麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などが効きますが、じっとしていれば痛みはないが、少し触れただけ、風が吹いただけでも痛みを感じるアロディニアという状態に対して、神経周囲組織が炎症後に乾いた状態になっていると考え、そこを潤してやろうという漢方薬、六味丸(ろくみがん)と麦門冬湯(ばくもんどうとう)の組み合わせが不思議なほど効果的です。

急に寒くなってきたので、冷えると痛いなどでお困りの方はご相談下さい。

夜中のおしっこが気になる方へ

今回は夜中にトイレで目が覚める、夜間頻尿でお困りの方いらっしゃいませんか?

今回は「排尿障害に有効な漢方薬」についてお話します。

まず挙げられるのは、おしっこのトラブル専用のお薬、猪苓湯 (ちょれいとう)です。これは下腹部辺りに熱候がある(つまり炎症がある)膀胱炎のファーストチョイスとされています。

頻尿や残尿感、排尿痛など尿路不定愁訴に幅広く用いられます。慢性的に症状の続く人、繰り返す人には似たお薬で猪苓湯合四物湯 (ちょれいとうごうしもつとう)が用いられることもあります。さらに炎症が強ければ竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)などが用いられます。

次に挙げられるのが八味地黄丸(はちみじおうがん)です。

漢方的なお腹の所見では、下腹部が軟弱で下半身が冷えるタイプの排尿異常に用いられます。老化に伴っておしっこが出にくくなったり、頻尿となったりするという方が増えてきますが、そんな方のお薬です。女性にももちろん使われるのですが、男性では前立腺肥大症のファーストチョイスです。

似たお薬に牛車腎気丸 (ごしゃじんきがん)があります。

これは八味地黄丸に利尿作用のあるゴシツ・シャゼンシを加え、体を温めたり、鎮痛作用のある附子の量が倍になり、胃腸にもたれる地黄の量が少なくなっていますので、ある意味では八味地黄丸の作用を増強し、マイルドにしたお薬です。

漢方専門施設の統計では、男性では60歳代、女性では80歳代をピークに、3人に1人にはこの類のお薬が使われていたほどポピュラーなお薬です。実はハルンケアは八味地黄丸がベースとなっています。

最後に紹介するのが清心蓮子飲(せいしんれんしいん)です。

これは気虚の状態で、疲労感があったり、抑うつ傾向があったり、逆にイライラしたりするなど神経過敏な状態の方に適しています。また、八味地黄丸が胃にもたれて飲めないという人にも適応します。ユリナールはこの清心蓮子飲がベースとなっています。

夜間2回以上、おしっこに起きてつらい方、市販のお薬の違いについて少しは理解いただけたでしょうか?

熱感があれば猪苓湯、下肢に冷感があって胃腸が丈夫なら八味地黄丸、胃腸が弱い人には清心蓮子飲となります。

最後に膀胱炎では、抗生剤が必須となりますので、恥ずかしがらずにまずはご相談下さい。

R5.10.14ブログ

地域包括ケアシステムを念頭に様々な記事を書かせていただいておりますが、このたび新原呉市長のお話をお聞きする機会があり、私が考える地域包括ケアシステムの具体案を述べさせていただきました。

夢のような話と思われるかもしれませんが、こうした発想をもって少しでも実現していかなければ地域はもたないのではないかと感じています。(以前にお伝えする部分と重複している場合はご了承ください)

前々から発案し、動き、実現に至っていないのが送迎と給食システムです。

当院では患者さんのために受診される方対象に送迎を開始しましたが、コロナの感染対策により中止となりそのままになっています。また一医療機関が少数の患者さんのために人員を割いて取り組むのは地域包括ケアシステムの観点ではマイナス要因と考えます。

さらに以前、タクシー会社に患者さんと医療機関とタクシー会社が1/3ずつ負担してタクシーを利用して頂くのはどうかと提案しましたが取り入ってもらえませんでした。

このたび新原呉市長にも提案させていただきましたが、ウーバーイーツのように今いける人がキャッチして迎えに行くようになればいいなと言われていました。

実際にスマートフォンで連絡すればタクシー会社問わず近くの待機車が迎えに来てくれる時代ですので、近い未来に実現する、いやすでに実現しているのですが、費用の問題は解消されず、ボランティアなどが発展するとタクシー会社が廃業していくのだろうと思います。生活バスなども無駄が多いように感じます。こうしたことを地域で効率的に運用できるようになると住みやすい地域が長く保たれるのだろうと思います。

次に給食センターです。現在呉市では中学校の給食を増やしていく取り組みをされており、川尻ではずいぶん前から小学校から中学校に保温車で給食を配送しています。私はこうした地域の給食センターを地域の高齢者や介護施設などにも提供できるようにすることを以前から考え、提案させていただいております。食事は食育はもちろんですが高齢者にとってもっとも楽しみな生活の一部です。小規模では取り組めないことも大規模になることでメニューが豊富になりさらに無駄が減りSDGs的にも良いのではないかと思います。

私は少子高齢化よりも何よりも就業者減少を懸念してきました。ロボットなど無人化が進んだり、様々なシステムの発展で効率化が進み、人不足が解消されてくることを願っております。ただその先には人余りになることも懸念されます。足りないところをロボットで対応できる状況になればと願うばかりです。

最後になりますが、私は日本の医療が崩壊しないためには医師が必要だと思っています。しかしそうなれば、医師余りが起き、報酬は減っていき、なり手が減っていきます。すでにそうしたことをいち早くキャッチしている親や子供たちは医師になることを避け始めているようにも感じます。日本の医療は制度も技術も誇れるレベルと思ってはいますが、今後激震が走るのではないかと懸念しております。

いずれにしてもちょうどよいのがちょうどよいので、過不足なく地域が成り立っていくことを想像しながら一人ひとりの市民が取り組まなければならないのだろうと思います。

秋ばてと漢方

秋ばてという言葉が最近聞かれるようになりました。これは本来、夏ばてと言われていたものなのですが、最近の温暖化の影響でしょうか。季節が1ヶ月ずれてきたように感じます。

夏ばては本来、夏を過ぎて9月の中旬ほどになり、過ごしやすくなってから、手足や身体が重だるかったり、気力がない、食欲がないといった症状を呈するものを言いましたが、最近では夏の盛りの頃、食欲がなく、身体がだるく、何もする気が起こらないといった状態を指すようになりました。それだけ猛暑の影響もあるのでしょう。

今年の猛暑はいつまで続くのでしょうか?

盛夏の夏ばてには、その名の通り、暑さを冷まし元気を出させてくれる清暑益気湯が役に立ちましたが、日中の暑さに比べて、朝夕寒気を感じるようになってきたこの時期からは補中益気湯の出番です。

補中益気湯は消化機能を補い元気を益す薬という意味で作られたお薬です。

これらは補剤と呼ばれ、西洋薬にはないタイプの薬です。

元気が出る意味を医学的に解説するのは難しいですが、補中益気湯の作用としては、筋肉の低下を改善する。下垂傾向にある臓器を支え回復させる。食欲の改善、消化機能の改善、疲労感の改善、免疫力を高めるなどが主な作用と言われています。実際に不妊男性の運動能の低下した精子を改善したり、解熱剤では下がらないストレスによる発熱を解熱したりすることも知られています。

今はコロナ感染症、インフルエンザも流行っています。このまま冬場を迎えるかもしれません。うがい、手洗い、人の多い場所ではマスクも必要です。誰しも不摂生が続くと体調を崩してしまいます。

そんな時に役に立つのも補剤です。

コロナ、インフルエンザの予防にワクチンがありますが、ワクチンも万能ではありません。それは、毎年、次年度流行しそうなウィルス株を想定して、ワクチンを作っているからです。ウィルスも一定ではないのです。コロナウイルスもどんどん変化しています。

つまりワクチンは予防に有用ですが、ワクチン株と種類が異なれば、効かないこともあるのです。リスクの高い方には補中益気湯を飲ませておくと感冒に罹患する率が大幅に下がるという研究もあります。

補中益気湯で秋ばてを克服し、この冬の感冒・インフルエンザを予防するためにも不摂生を慎み、食欲の秋を楽しみましょう。

また体を動かし体力をつけておくことが最も有効な風邪の予防となります。

R5.9.15ブログ

地域包括ケアシステムを主題にお伝えしておりますが、少しは理解を深めていただけているでしょうか?私の説明が下手なのでなかなかご理解いただけないかもしれませんが、懲りずに続けさせていただきます。

今回は、地域包括ケアシステムを構築するための役割について述べてみたいと思います。

早速ですがここで質問です。この地域包括ケアシステムを構築するために最も期待する、担ってほしい組織は何だと思いますか?

行政?公的機関?医療介護施設?一般企業?市民?私は今こうして掲げた順に期待しており、どこが欠けても構築はできず、すなわち市は廃れていくということだと思います。

傷は浅いうちなら治りますが、深くなれば致命傷です。今なら治りますが10年後は致命傷になっていると私は根拠もなく感じています。医療や介護制度も変わっていきますし、物価や環境も変わっていきます。広い世界で言えば国家間のパワーバランスも変わっていくと思います。そうした様々な傷がこの10年で深まっていくのだろうと思います。

簡単な例えで言えば「地球温暖化」です。致命傷になりつつある現状でもどの国も必死に取り組もうとしていない。原因は明らかなのに今の自由、便利さ、今後の発展を求めて環境は悪化していくばかりです。

月や宇宙開発に目を向けているようですが、地球ほど恵まれた環境は少なくとも近くにはないのですから、地球を大事にすることが一番だと思います。

この地域が廃れ、住みにくくなれば移住することは可能ですが、地球全体の環境が悪化すれば移住するところもなくなるでしょう。

地域包括ケアシステムの構築も地球環境もある意味一緒ですべての市民、県民、国民、人類が協力し合わなければ成し遂げられない難しい課題なのです。

前に進むには一人ひとりの意識が変わっていくしかありません。

「誰かがやってくれる」では絶対に成しえない難しい課題だと思います。