男性のストレスと漢方

新年度が始まると会社や家庭で浴びるストレスシャワーがつらく感じるのではないだろうか?
ストレス病は仕事の効率を悪くするだけでなく他の病気の発症や悪化にも関係しています。
最悪の場合は過労死や自殺という不幸な結果を招くことがあります。
食欲の変化、不眠、気力の減退、疲れが抜けない、頭が重い、気分が沈みがち、
イライラする、不安感が強い、集中力が出ない、性欲減退などはストレス度の高いサインです。
現在の日本では就職の不安、職場での人間関係の悪化、リストラの不安、賃金カットに対する
経済不安など多くのストレスのもとが我々にストレスシャワーのように降り注いでいます。

更に家庭でも会話がなく孤立することが多く、
男性自身が自分の居場所を見つけることが難しくなっています。
寅さんではないですが、まさに「男はつらいよ」です。
 
漢方薬にできることとは何か?
 
原因不明のからだの不調が続いたら、まずストレス病を疑ってみます。
休養をとりストレスの元から距離を置くことが大切です。

自分が思っている以上にストレス病が進行している場合もあるので
専門家に相談することが一番安心できる方法です。

治療が必要になると薬(抗不安薬・抗うつ薬・睡眠薬)で症状を軽くしていきます。
セルフコントロールがうまくできるようになれば、
薬の減量や注視していきますが薬を中止することに不安を感じる場合も多くあり、
そういう時が漢方薬の出番になります。
漢方薬は副作用も少なく、長期に使っても依存性の心配がないので
西洋薬の減量や中止に大変役立ちます。
 
ストレスに使われる漢方薬には
柴朴湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、加味帰脾湯、黄連解毒湯ど
多くあり、不安、イライラ、不眠、疲労感など体質・症状に応じて処方していきます。
 
お薬を減量したい患者さんはぜひご相談ください!
※このたびは男性のストレスについて掲載させていただきましたが、
  女性にストレスがない、男性だけが社会に出ているという
  趣旨ではないことをご理解ください。
  また性差で漢方薬の使い方が変わることもありますので、
  女性の方もお悩みがあればご相談ください。

sutoresuotoko

不眠症について

夜、ふとんに入ってもなかなか寝つけない、眠りが浅く夜中に何度も目が覚めてしまう。
早朝目が覚めて、そのまま眠れない。一睡もできない・・・などなど
不眠は経験した人にしか分からない非常につらい症状です。

睡眠には個人差があり不眠は本人がふとんから離れるときの不快感、不満感が大きな問題になるのです。
熟睡できないと、日中の体のだるさ、眠気が残り、夜にまた眠れないという不安で、
また寝つきが悪くなるという悪循環なのです。

不眠の原因は・・・
①  騒音や時差など外部環境の変化
②  痛みを伴う身体の病気
③  薬物の副作用・精神の病気・更年期障害・ストレス
などが関係していると考えられています。

漢方薬にできること
漢方薬は西洋薬の睡眠薬のように1剤で確実に眠れるというものではありません。
患者さんの体のリズム障害や不調を改善していき、原因となる肉体的・精神的な不調を整え、
自然な眠りがおとずれるよう調節していくのです。


どんな漢方薬があるかというと・・・

①  神経のたかぶりイライラして眠れない場合
   →抑肝散.抑肝散加陳皮半夏
②  心身が疲れ切って眠れない場合
  →酸棗仁湯
③  虚弱体質で貧血の人で眠れない場合
  →加味帰脾湯
    などが使われます。
 
暮らしの中での予防法!!
  ①  カフェイン含有の紅茶、コーヒーなどは就寝前には避けましょう
  ②  夜間の運動は避けて、自分にあった運動を夕方にしましょう
  ③  就寝前にゆっくり入浴し心身ともリラックスしましょう
  ④  寝室・寝具に工夫してみましょう 
 
不眠でお困りの方は相談ください!!

fuminsyou

鼻炎について

アレルギー性鼻炎とはハウスダスト、ダニ、花粉、カビ、ペットの毛など、
特定の原因となる物質(アレルゲン)が鼻粘膜に侵入して過敏反応(アレルギー反応)を起こし、
くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状をもたらす病気です。
春先になるとつらい「花粉症」もこのアレルギー性鼻炎の一つです。
特に今年は昨年に比べて花粉の飛散量も多いと言われています。
ひどい症状で日常生活に支障をきたすことも少なくないので、
花粉症に悩まされる方は早めの治療を心掛けましょう!!
 
治療の基本は薬物治療(点眼薬、点鼻薬、抗ヒスタミン剤他)です。
もちろん、アレルギーの原因を身の回りから取り除くことも大事です。
例えば、ダニによるアレルギー性鼻炎の場合は部屋の通気をよくすること、
布団を干しこまめに掃除を行うなど、ダニの繁殖しやすい環境を改善することは
非常に効果的です。
 
★漢方薬にできること
くしゃみ、鼻水、鼻づまりは花粉症の三大症状とするアレルギー性鼻炎には、
ハウスダスト、ダニなどによりいつも症状のある通年性のものと、
花粉の飛散する時期だけ症状のある季節性のものがあります。
 
漢方薬でファーストチョイスになるのは小青竜湯という漢方薬です。
小青竜湯の特徴は花粉症の三大症状であるくしゃみ、鼻水、鼻づまりに対して
科学的にも有用性が報告されています。
漢方薬の大きな特徴は眠気なる成分が入っていないので快適な日常生活の維持を重視した治療
と言えます。

今のシーズンは受験だったり、また常時、車の運転をする仕事の人などは
眠気のない漢方治療はひとつの選択肢です。
小青竜湯以外にも
鼻づまりが強ければ葛根湯加川芎辛夷、
冷えると症状が悪化する人(お風呂に入って温まると調子がいい人)には麻黄附子細辛湯
という漢方薬があります。
 
漢方薬は患者さんの体質、症状に合わせた漢方薬が処方されます。
 
花粉症でお困りの患者さんは是非、ご相談ください!!

bienkafunsyou

 

かぜは万病の元!しっかり治しましょう!!

顔が青白く、ぞくぞく寒気を感じるかぜと、熱が出て汗をかき、顔が赤く、ぼーっとするかぜ。
「かぜ」と言っても、さまざまで症状もくしゃみ、鼻水、咳、喉が痛い、腹痛や下痢などいろいろです。
かぜの原因のほとんどはウイルス感染です。
疲れなどちょっとした体調の崩れをきっかけにかぜを引くことが多いです。
 
かぜはひき始めから数日経過して、こじれてくると症状も変化していきます。
1週間以上たっても、微熱、咳、寝汗、食欲がないなどの症状が続く場合は、
こじれて長引いた証拠なのです。
 
かぜの治療は西洋薬では解熱剤(熱を下げる)、咳を抑えるなどの対症療法が主ですが
漢方薬では、本来もっている免疫力・抵抗力を高めてかぜを治すことに重点をおいています。
 
漢方薬での治療は病気(かぜ)の時期に応じて違う漢方薬が使われます。

★ひき始めの漢方薬
 葛根湯 寒気・悪寒・発熱・汗をかいていない
 麻黄湯 インフルエンザ・悪寒・発熱・関節痛
 小青竜湯 鼻かぜ(水様性鼻汁)
 麻黄附子細辛湯 寒気・高齢者・普段から冷え性の人

★長引いた時の漢方薬
 柴胡桂枝湯 微熱・寝汗・口が苦い・食事が美味しくない・お腹の調子が悪い
 竹筎温胆湯 微熱・夜間の咳嗽

★回復期の漢方薬
 補中益気湯 倦怠感
 麦門冬湯 乾性咳嗽
 六君子湯 食欲不振
 
今年に入ってインフルエンザ・かぜが流行っています。
何かありましたら、ぜひご相談ください。

kazehamannbyou

冷え性は治らない?

「冷え性は治らない」と思っていませんか??
 体の冷えは、他人には理解されにくいものです。
 女性の二人に一人は冷えに悩んでいるといわれますが、
 その数の多さに対して社会の理解はまだまだ低いのです。
 実際に冷えは適切な治療をすれば改善できる症状です。
 また、日常生活でも服装や食事を少し工夫するだけで、
 つらい冷えの悩みを軽減することが可能です。

★こんな人は冷え性!!
1.    とても寒がりで冷房が嫌い
2.    手足など体の一部が冷えてつらい
3.    カイロや電気毛布が手放せない
4.    寝るときや夏でも靴下をはく

★冷えと関連する疾患
関節リウマチ・アトピー性皮膚炎・気管支喘息・アレルギー性鼻炎・過敏性腸症候群・
膀胱炎・痔核・月経前緊張症・月経困難病・不妊症

★冷え性治療は漢方薬の得意技
漢方治療は体全体を一つのまとまった機能としてみるので冷え性のような治療に
適していると考えています。

★漢方からみた冷え性のタイプと使われる漢方薬!
1 新陳代謝低下型
→このタイプはエネルギー・熱の産生能が落ちているので疲れやすく、
 温かい飲み物を好み、寒がりで風邪を引きやすいのが特徴
  真武湯・人参湯・十全大補湯・人参養栄湯・八味地黄丸
2 血流障害型
→血液の循環の滞りが原因の冷え性!指先やかかとが荒れやすい、
 顔色が悪く便秘気味、月経痛があり肩こりがひどいなどが特徴
  当帰四逆加呉茱萸生姜湯・桃核承気湯・桂枝茯苓丸・温経湯・当帰芍薬散・加味逍遙散
3 水分貯留型
→水分が貯留しているタイプ。むくみやすく、頭痛・頭重感があり、尿が近く、
 めまいや耳鳴り、吐き気を伴うのが特徴
  苓姜朮甘湯・防已黄耆湯・半夏白朮天麻湯・真武湯・当帰芍薬散
 
冷え性の治療は患者さんの症状に応じて行いますので、お困りの患者さんは是非、ご相談ください!!

hiesyou

大建中湯という漢方薬について

大建中湯の構成生薬であるサンショウ
(煮物・焼き物・お吸い物などの料理に使われるおなじみの食材)の他、
カンキョウ(ショウガの根茎を湯通し後に乾燥させたもの)ニンジン、コウイ(飴)は
そもそも「食品」といってもよく、いわば大建中湯は漢方薬の薬膳料理と言い換えてもいいと思います。
 
そのため大建中湯は、お腹の血液の流れを増やし、お腹を温めて、腸の動きを整える
「薬膳料理」のようなお薬なのです!!
 
また大建中湯の4つの構成生薬は非常に安全です。
(副作用発現頻度調査において3269例において64例72件 副作用発現頻度2%でした
:メーカー調査)
 
大建中湯は「体力虚弱で特に腹部に冷えや膨満感」がある方に適した漢方薬になります。
臨床では証(実証:元気な方、虚証:元気がない方)をあまり気にせず、
消化管手術後のイレウスの治療や予防、また便秘に伴う腹部膨満感・腹痛などに
効果が確認されています。
 
大建中湯の服用法は水で服用するのではなく、ぜひお湯で一旦顆粒を十分に溶かして、
できれば温かいうちに服用することをお勧めします。具体的には50mL程度で溶解し、
水を加えて好みの温かさと濃さでの服用をお勧めします。
お腹の冷えに対して、温かい大建中湯の服用は理にかなっています。
 
大建中湯にはダイオウ(刺激性下剤の役割)やボウショウ(塩類下剤の役割)など
強い生薬は含有されていません。
お腹を温めて腸管の蠕動運動を整えることによって
腹部膨満感・腹痛の改善が報告されています。
 
①  便秘・腹部膨満感でお困りの方・・・
②  便秘薬を服用して腹痛で長く飲めないなどでお困りの方・・・
 
ぜひ、一度ご相談ください!!!

benpi

風邪のあとの咽頭痛には小柴胡湯加桔梗石膏!

10月に入り朝晩が急に冷えてきて、皆さん、風邪を引いてませんか?
また熱は下がったけど喉が痛くて困っているという患者さんはいらっしゃいませんか??
今回はそんな時に使う漢方薬、小柴胡湯加桔梗石膏をご紹介します!
 
小柴胡湯加桔梗石膏は小柴胡湯という漢方薬がベースになっています。
小柴胡湯は日本では古くから肝炎の薬として使用されてきましたが、
中国では「風邪薬」として使用されてきました。
 
小柴胡湯は往来寒熱(午前は熱が出ないが午後に熱が出る)、口が苦い、喉が痛い、
胃腸の調子が悪いなどの症状、風邪の初期ではなく若干、長引いた時に使う漢方薬です。
小柴胡湯加桔梗石膏は咽頭痛に対して小柴胡湯を更にパワーアップした
処方構成(プラス石膏・桔梗)になっています。喉が赤くなって痛い、
扁桃炎を繰り返すなどの状態に効果が期待できます!!
 
特に風邪の引き始めにOTCの風邪薬を飲んだけど、スッキリしない、
熱は下がったけど、口が苦くて食事が美味しくない、喉が痛い・腫れている、
胃腸の調子が悪いなどの症状でお困りの患者さんへ
ファーストチョイスで処方される漢方薬、それが小柴胡湯加桔梗石膏です!!
 
小柴胡湯加桔梗石膏の服用方法は白湯に溶かして、
口の中でうがいをしてから吐き出さず飲み込みます。
そうする事で成分が患部に当たり、より効果を発揮します。
今回、ご紹介したお薬は桔梗という生薬が甘くて漢方薬の中でも飲みやすいと思います。
 
これからのシーズン、風邪・インフルエンザも流行ってきます。
風邪が長引いて、咽頭痛でお困りの患者さんは是非、ご相談下さい!!

intoutu

芍薬甘草湯はしゃっくりにも使える!

今回は『しゃっくり』についてお話したいと思います。
肺の下に位置する筋肉である横隔膜(おうかくまく)が痙攣すると、声帯の筋肉が収縮します。
狭くなった声帯を息が通ることで、「ひっく」といった音を発声します。
この異常呼吸を『しゃっくり』といい、またの名を『(きつ)(ぎゃく)』ともいいます。
横隔膜の痙攣によるしゃっくりは、特別な理由がなくても発症し、健康な人でも起こり得ます。
ほとんどは数分ほどで自然に治ります。

しかし、頭部外傷や心筋梗塞、腫瘍などの器質的な疾患が原因の場合は、
病気を治療しないことには止まらないこともあります。

原因が不明な場合には漢方薬などを使う手があります。

例えばその代表処方が芍薬甘(しゃくやくかん)(ぞう)(とう)です。
この漢方薬はこむら返りに使われることでお馴染みです。
しゃっくりに効果的な漢方薬を3処方紹介します!
 
芍薬甘(しゃくやくかん)(ぞう)(とう)
 この漢方薬には鎮痙・鎮痛効果があります。
 ふくらはぎの筋肉の異常収縮以外にも、胃痛や生理痛にも用いることができる処方です。
 しゃっくりに用いるときは芍薬甘草湯単独、あるいは呉茱萸湯(のちほど解説します)と
 併用で用いられます。
 芍薬甘草湯はあまり証を考慮せずに用いても効果がある漢方薬ですが、
 [甘草]の含有量が多いため、低カリウム血症などの副作用には注意が必要です。
 
呉茱萸(ごしゅゆ)(とう)
 この漢方薬は、全ての生薬が温める方向性を持っており、冷えを訴える方に適しています。
 特に、[呉茱萸]は、吐き気や嘔吐を改善する「止嘔」の薬能をもつ生薬です。
 普段から冷え性の方が、何らかの原因でさらに体の芯まで冷えて、
 吐き気やしゃっくりを生じる場合に使う処方です。
 
半夏瀉(はんげしゃ)(しん)(とう)
 難治性のしゃっくりにはファーストチョイスとなります。
 なぜ効果があるのかははっきりわかっていませんが、
 ストレス関連の場合には試してみる価値があります。
 半夏瀉心湯はかつて吉田茂首相のしゃっくりの治療に使用されたことが知られています。
 初回1包ないし2包(2.5~5g)を湯呑1杯程度のお湯に溶かし、冷やしたところで
 一気に服用し、その後、原疾患にもよりますが1日3包(7.5g)を数日間継続するという
 方法があります。
 
もししゃっくりがなかなか止まらないという場合があれば、
このような漢方薬を用いてみてもよいかもしれませんね!


syakkuri


五苓散という漢方薬

お盆が明けて、だいぶ涼しくなってきました。
近年は空調機器の普及により夏バテの症状は夏の盛りの時期にみられることが多いです。

しかし、本来「夏バテ」というものは涼しくなり始めたころに夏場の疲れが現れます。

これからの気温差に体が対応しきれなくなり、
倦怠感や胃腸症状、風邪のような症状がみられる場合があるので注意してくださいね。
夏場の漢方処方には、倦怠感や食欲不振にもちいる補中(ほちゅう)(えっ)()(とう)(りっ)君子(くんし)(とう)清暑(せいしょ)(えっ)()(とう)など
がよく知られています。
そして漢方薬としての知名度は高いのに、夏場の使用が普及していないものが五苓散(ごれいさん)です。
 
漢方メーカーの情報をみると五苓散の効能効果には、
「口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、
悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病」となっています。
一見何の共通点もない文字の羅列だと思いますが重要なキーワードが隠されています。

それは「水」が関与しているということです。

漢方医学では、「水」は体内を循環する透明な液体、いわゆる「体液」を示します。
健康な状態ではこの「水」が体中を円滑に巡っているのですが、なんらかの異常をきたすと
滞りや欠乏することがあります。

それが「水」の異常となります。

そして五苓散が対応する疾患は、「水」が滞ったために生じる「水毒」という病態です。
「水毒」は体の中に水溜まりができるイメージです。
 
夏場に水分をたくさん摂取したりクーラー環境下で体が冷えるなどすると、
「水毒」の病態に近づきます。
血流が悪くなるともちろん浮腫みやすくなったり、冷たいものを摂取したことによって胃腸が冷え、
下痢を起こします。
胃腸機能が低下すると水分代謝がうまくいかなくなるので熱中症も起りやすくなったり、
悪循環に陥ります。
そこで、五苓散は体の中の水のめぐりを改善する漢方薬です。
嘔吐や下痢は消化管内の水溜まり、めまいや頭痛も脳血管の浮腫と考えれば、
すべて五苓散の適応疾患ではないでしょうか。
これらより、五苓散は夏場にみられる症状、いわゆる「暑気あたり」に効能効果があるのです。
 
五苓散は実際に熱中症の点滴の効果を高める目的で使われます。
水分代謝がうまくいかない熱中症患者にはもってこいの処方でしょう。
点滴後もなかなか体調が戻らないときに、点滴後3~4日間五苓散を飲むとよいとされています。
 
水分をしっかり摂っているのに調子が悪い場合は試してみてはいかがでしょうか?

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震災での経験を生かして

7月第一週目に西日本豪雨によって受けた被害はとても大きいものでした。
10日ほど経った今でも状況が少し動き出したばかりです。

この豪雨は広島県だけではなく、他の被災地にも大きな爪痕を残しました。
復旧に向けての戦いはまだ始まったばかりですが、
かつての経験を生かして被災者の皆さんの力になるであろう漢方薬を紹介したいと思います。

2011年3月11日に発生した東日本大震災で、帝京大外科准教授 新見正則先生が被災地に届けた漢方薬についてです。
 
気持ちが晴れない人にはまず香蘇散(こうそさん)
 今回の被災によって想像を絶するような大きな精神的ストレスを受けていると思います。
 ストレスに対処する目的で、新見先生はまず最初に香蘇散を処方するそうです。
 香蘇散は香附子(こうぶし)紫蘇(しそ)(よう)陳皮(ちんぴ)生姜(しょうきょう)(かん)(ぞう)の5つの生薬からなっており、
 味も良く飲みやすい漢方薬です。
 服用すると気持ちが晴れるのと、風邪の初期にも対応できる処方です。
 また、香蘇散が無効な方には半夏(はんげ)厚朴(こうぼく)(とう)という漢方薬を用いることもあるようです。
 
経過が長引くときは(さい)(ぼく)(とう)(さい)()加竜骨(かりゅうこつ)牡蛎(ぼれい)(とう)
 漢方では、症状が改善しない場合には、(さい)()黄芩(おうごん)を中心に組み合わせた『(さい)胡剤(こざい)』を併用することが
 あります。
 柴胡剤の中でも最も一般的なものが小胡湯で、
 これと上記で紹介した半夏厚湯を組み合わせたものが柴朴湯という処方になります。
 半夏厚朴湯では思うような効果がなく、長引くストレス症状には柴朴湯が有効となることもあると
 紹介されています。
 柴胡加竜骨牡蛎湯も柴胡剤のひとつで、ストレスに有効です。
 また、冷え症でストレスがある人には、温める生薬である乾姜(かんきょう)の含まれた、柴胡桂枝乾姜(さいこけいしかんきょう)(とう)という
 漢方薬がおすすめです。
 
夏バテの予防に清暑(せいしょ)(えっ)()(とう)
 新見先生はもう一つ、被災地に届けたかった漢方薬があったのですが、震災によるメーカーの工場ライン
 停止によって叶わなかったものがあったようです。それが、補中(ほちゅう)(えっ)()(とう)でした。
 避難所生活を余儀なくされた方々は気力・体力ともに弱っており、また身を粉にして被災地で働かれている
 人への心身のエネルギー補充に役立てたかった処方です。
 東日本の震災は冬場でしたが、この豪雨は夏場です。
 異常気象により今年は猛暑と言われております。
 夏場に対応した補中益気湯の類似処方である清暑益気湯を役立てられたら、
 皆さんの力に少しでも変わるのではないかと思います。

今回の被災では、断水、交通網の混乱などで被災地の復旧は迅速とは言えないものです。
漢方薬を飲んでいる場合ではないとも感じます。
しかし検査がなくても処方がしやすい漢方薬は、少しでも早く、多くの人の心と体のケアをできる
ものでもあると思いますので、このコラムを読まれている方・必要な方に微力ではございますが
役に立てたらと感じ、記載させて頂きます。

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