フレイルサイクルと漢方薬

皆さまは、『フレイル』という言葉を聞いたことがありますか?
これは、『高齢になるにつれて、生理的予備能が低下すること』と
2014年に日本老年医学会が提唱しました。
このフレイルの状態に陥ってしまうと一歩先は“要介護”ということで、
近年注目をあびており広く社会に浸透してきています。
フレイルとは、カラダがストレスに弱くなり身体的機能や認知機能の低下がみられる状態のことで、
健康な状態と要介護状態の中間に位置します。
加齢に伴って一方的に衰えた状態である「老衰」「衰弱」などとは少しニュアンスが異なり、
治療や予防を行うことで健康な状態に戻ることができるという意味も含まれています。

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フレイルは、
『体重減少』、『疲労感』、『筋力(握力)の低下』、『歩行スピードの低下』、『身体の活動量の低下』
の5項目の診断基準のうち3項目以上が当てはまる場合に診断されます。

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食欲低下や嚥下機能の低下などで食事の摂取量が減ると低栄養に陥り、サルコペニアに至ります。
サルコペニアになると、疲労感・筋力の低下、それに伴い身体機能の低下につながり活動量が減ります。
活動量が減ることで、エネルギー消費量が減り、食欲低下につながります。
フレイルになるとこのような『フレイルサイクル』という悪循環に陥ってしまう可能性が高くなります。
 
 
 

このような状態には、漢方薬の『補剤(人参剤を含む)』を中心とした処方を用いることをおすすめします。
補剤には、消化吸収機能や意欲低下の改善に働く作用があるからです。
食欲や栄養状態の低下を改善できると、筋力や意欲の低下、抑うつ、寝たきりなどの状態を回避することが出来ます。
また、漢方薬は次のような症状に用いると高い効果を期待できます。
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フレイルに陥る原因疾患によってフレイルサイクルのスタート地点は変わります。
上記以外にも適した漢方薬はありますので、気になられた方は気軽に相談してくださいね。

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H30.2.5ブログ

寒さ続き、インフルエンザが猛威をふるいましたが、やっとピークを越えたようです。
しかしながらその他の感染症も認められ、まだまだ注意が必要です。
 
さて当法人ではこの度2月4日(日)法人餅つき大会を初めて企画しました。
職員からの発案で、安浦幼稚園から石臼をお借りして、準備を進めました。
職員や家族も多く参加し、3回に分けての餅つき、つき終わった餅を
それぞれ黄な粉や砂糖醤油、団子餅、おはぎ風などに好きなように丸めていました。
 
その後、嚥下体操を行い、お餅の実食となりました。
実食タイムでは昨年法人で作成したカープ応援歌DVDのNG集を放映し、
節分の豆を箸で皿を移すなどのレクリエーションで盛り上がり、終了しました。
 
職員及び家族が団らんで、楽しいひと時が過ごせたようで、
私も仲間に入れて貰えた良いひと時を過ごせました。
 
今後、法人では職員旅行も企画されております。
医療介護連携しチームたつきを結束していければと思います。

teamtatuki
 

H30.1.23ブログ

1月も早終盤ですが、インフルエンザの流行が昨年末から続いております。
今年の特徴としては、A型、B型それぞれ同様に流行していることかと思います。
引き続き皆様予防され、お気を付け下さい。
 
当法人として新年を迎え変わったことと言えば・・・
職員が増え、看護体制が充実してきたことが一番でしょうか!
また今年も引き続き川尻・安浦地域包括ケアシステムを樹立する会が行われます。
さらに法人として初めての試みで餅つき大会を2月に企画していますし、
昨年に続いて安浦町民駅伝大会に職員が参加させていただきます。
 
今年のマニフェストでも書きましたが、
今年はより一層地域貢献が出来るように努めてまいりたいと思っています。
また安浦町では町おこしのための担当者募集が出ているようです。
蒲刈などでは取り組まれ、任期を過ぎても地域に残り事業をされていると聞いております。
こうした活動とも上手く連携しながら、
川尻・安浦がよりよい環境、住みやすい活気のある地域になるように微力ながら取り組んでいきたいと存じます。
 
皆様くれぐれもお体にご自愛ください。

motituki

 

 

肩こりと漢方

寒い日が続くとどうしても体に力が入って肩や首が凝ったり、頭が痛くなることがあります。
そんな時に、風邪に用いるお馴染みの漢方薬が活躍します!!
 
ファーストチョイス!葛根湯
(かっ)(こん)(とう)』と聞けば、風邪の引き初めに飲む漢方薬というイメージが強いのではないでしょうか。
実際、急性期(~3日)の風邪にはとても効果の高い薬です。
しかし病期が過ぎてしまうと(4日~)効かない例も多くあります。
余った漢方薬は今後風邪を引いてしまったときに用いることも良いですが、
意外と肩こりにも使えるのです!
 
たとえば風邪の引き初めの症状はどんなものが浮かびますか?
寒気を感じて、体がこわばって、頭が痛くなったり…。
葛根湯は体を温めて抗病反応を高めることでウイルスを撃退させる漢方薬です。
(余談となりますが、汗が出るまで飲むのがベストなのです。)  
生薬の[()(おう)]と[桂皮(けいひ)]には体を温め作用があり、[葛根]には筋肉の弛緩作用があります。
体が冷えることによって凝りが生じる場合には葛根湯が良いのです。
特に首のあたりまで凝る場合には葛根湯がおすすめです。
 
また、葛根湯には非常におすすめの飲み方があります。
葛根湯には[生姜(しょうきょう)]が入っています。この生薬も体を温める作用がありますが、
ドラッグストアやスーパーなどでも売っている『しょうが湯』に溶かしてみてください。
大体、100~150ccのお湯に溶いたしょうが湯で良いと思います。
[生姜]の温める作用がパワーアップして、飲んでいるうちに体がだんだんポカポカしてきます。
そして漢方薬の独特な味が苦手ということなら、
その上からお好みの量のハチミツを混ぜて飲んでみてください。
ハチミツにはのどによい成分が含まれていますので特に風邪を引いた際にはおすすめします。
色は良くないですが、甘さが加わってとても飲みやすくなります。
 
最後に豆知識!柴胡桂枝湯と柴胡桂枝乾姜湯
これは最近知った話になります。
肩が凝ると皆さんは鎖骨の上側部分のツボを押さえませんか?
そういった場合の肩こりには(さい)()(けい)()(とう)がよく効くそうです。
そして肩甲骨を縮めたくなるような背中の凝りには柴胡桂枝乾姜(さいこけいしかんきょう)(とう)が良いそうです。
 
もしこういった凝りがあれば是非試してみてくださいね!

katakori

H30.1.11ブログ

改めまして、明けましておめでとうございます。
皆さんにとりまして年末年始はいかがでしたでしょうか?どんなお正月を過ごされましたか?
 
寒さも本番でインフルエンザも年末より猛威を振るっております。
予防をしっかりして、十分にお気を付けください。
受験生にとりましては、大変な時期になりますが、悔いなく受験にチャレンジできることを
願っております。
 
本年はより多くの幸せ多い年になりますように!
本年も公私にわたり、どうぞよろしくお願いします。
shinnenaisatu 

H29.12.28ブログ

皆様、今年も公私にわたり大変お世話になりました。
良い正月を迎えられることを願っております。
 
私事ではありますが、先日私自身がインフルエンザになりました。
幸い水曜日から連休まで休ませてもらいましたが、非常勤の先生方のおかげもあり大きな混乱なく
対応させていただきました。
同時に母が転倒、骨折、手術となり、元気そうにしていますが家庭内は大騒動の週間になりました。
 
それでも最終週は通常通り、診療させていただき、年末を過ごすことが出来そうです。
 
例年より早くにインフルエンザが流行しておりますので、皆さんお気を付けください。
 
そして明るく、希望の持てる新年を迎えられることを心から願っております。
 
来年もどうぞよろしくお願いします。

20171228

 

(高麗)人参のはたらき

最近、健康ドリンクなどを自主的に購入されて健康に気を遣う方が増えてきました。
患者さんの中にも、『高麗(こうらい)人参(にんじん)』のドリンク剤を飲まれている方がいらっしゃいましたので、
今回は生薬の『人参(にんじん)』の話をしたいと思います。
 
人参と高麗人参は別モノ!
 高麗人参という名前から、野菜の人参と同じものだと認識されている人も多いのではないでしょうか?
 皆さんとなじみの深い人参はセリ科、高麗人参はウコギ科の植物なので全くの別物です。
 人参と高麗人参では含有成分が異なります。
 人参の主な成分はカロチン、ビタミンA、カリウム、食物繊維であり、
 高麗人参はサポニン、ビタミン、タンパク質、アミノ酸、炭水化物、ミネラルです。
 そして高麗人参には人参以上に栄養価が高いものですから高級品として扱われています。
 
高麗人参には別名がたくさん
 高麗人参は朝鮮人参(ちょうせんにんじん)雲州(うんしゅう)人参(にんじん)(こう)(じん)などとも呼ばれていますが、
 日本薬局方には「御種(おたね)人参(にんじん)」として記載されているのでこちらが正式名称となります。
 八代将軍・吉宗は朝鮮半島から入手した人参の種と苗を栽培した後、
 その種を各地大名に分け与えたことから“ありがたい・種”→『御種』と名がついたそうです。
 
高麗人参のもつ効果
 このような生薬の人参には次のような作用効果があります。
 1.補()()作用: 「気」を産生する胃腸系を強め、身体全体の強壮をはかります。
              例えば、下痢を止める、消化を促進、体力をつける、呼吸機能を高める、など。 
 2.生津(せいしん)作用:  熱などによって減少した体の体液(津液)を補い、口渇を止めます。
 
 
人参を含む漢方薬
 人参の滋養強壮作用を目的としている漢方薬にはほとんどの場合、『黄耆』という生薬も
 セットで含まれています。
 なぜなら黄耆は人参のもつ作用を高めるからです。
 例えば、補中(ほちゅう)(えっ)()(とう)十全(じゅうぜん)大補(たいほ)(とう)人参(にんじん)(よう)(えい)(とう)加味帰脾(かみきひ)(とう)などがこれらを含んでいます。
 この冬の時期では、風邪などの疾患で咳や倦怠感の症状がある場合に、
 鎮咳作用のある五味子(ごみし)を含んだ人参養栄湯がより適しています。
 このように、人参以外の生薬の組み合わせによっても適した処方が変わることがあります。
 気になられたら是非ご相談くださいね。

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H29.12.11ブログ

寒さも本番、今年も残すところ半月ほどになってきました。
忘年会や大掃除、年末業務に心身ともに気忙しいのではないでしょうか?
 
当法人でも先日、法人忘年会が行われました。
私は体調不良を理由に、企画への参加やサプライズなど準備せず、
職員からのお酌攻めを受けながらも、なんとか生き延びました。
 
それぞれに楽しんでいただけたのではないかと思いますが、
これも担当者や参加いただいた職員が作り上げてくれているからこそのものと、感謝しています。
 
当法人では様々な取り組み、行事、担当などがありますが、
今年もなんとかそれぞれ取り組みが行えたものと思います。
これらの取り組みの中には地域の方々や同業種の方々などの、ご支援ご協力もあってのことです。
多くの方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。
 
年末にかけて、体調など崩されませんようお気を付けください。

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H29.11.27ブログ

先日、川尻・安浦地域包括ケアシステムを樹立する会の初の企画で、
安浦、川尻、安芸津の介護関係者に集まっていただき、忘年会を行いました。
包括の方から積極的に出し物を披露してくださり、大変盛り上がりました。
またこれからの地域についてお酒を飲みながらざっくばらんにお話をする機会にもなりました。
 
また「介護イメージアップイベント 現役若手職員が伝える介護のお話 ~シクシクとわくわく~ 」が、
呉市社会福祉協議会の主催で行われ、当法人職員がパネリストとして参加させていただきました。
若者が介護に興味を持ってもらうことが趣旨でしたが、
学生さんや介護職に興味があってこられた方は多くなく、
現在介護をしている方々の参加が多く、元々の趣旨からは少し外れてしまった感じでしたが、
成功ばかりではないのが現実です。
 
それぞれの団体が、出来ること、すべきことを考え、模索しながら実働していくことが大切であり、
協力者が増えていくことを望みます。
これらのような機会も持ちながら、同業者だけではなく地域や多職種の方々とも連携して輪を広げ
地域を守っていければと思っています。
 
忘年会シーズンとなりますので、体調に気を付けて、
良い年が迎えられるように今から準備しておきましょう!

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咳と漢方

広島県では今、咳だけの風邪が流行っているようです。
今回は咳の病態と漢方治療について紹介します。
 
咳嗽は、気道内に侵入した(吸い込まれた)異物や貯留した分泌物を
外に排除しようとする生体の防衛反応です。
過剰な咳は止めなければいけませんが、高齢者などは誤嚥を防ぐためにも咳反射は必要になります。
使用頻度の高いのは中枢性鎮咳薬ですが、安易に用いると必要な咳をも抑制してしまうことがあります。
咳の病態は原因を見極めてそれに応じた治療が必要になってきます。
咳嗽は湿性咳嗽や乾性咳嗽といった、喀痰の有無によって分類されます。
湿性咳嗽
咳嗽のたびに喀痰を伴う
乾性咳嗽
喀痰を伴わないか、少量の粘液性喀痰のみを伴う

漢方治療は①炎症の有無、②乾性か湿性か、③喀痰は水様性か、粘稠性か、あるいは膿性か 
などを鑑別のポイントとして処方を決定します。

今回は湿性咳嗽、乾性咳嗽でファーストチョイスとされている漢方薬を紹介します。
 
①  湿性咳嗽 ~小青(しょうせい)(りゅう)(とう)
 漢方医学では、『湿』という病態は痰を伴う咳はもちろん、鼻汁、『水』による冷えなども含みます。
 このような場合、温めると改善することがあるので小青竜湯を用います。
 イメージとしては、お風呂に入ると症状が軽快する人には高い効果が得られます。
麻黄、桂皮、細辛、乾姜、五味子
温めながら余分な『水』を除き、鎮咳去痰する。
半夏
去痰作用により、水様性喀痰などを改善する。


②  乾性咳嗽 ~麦門(ばくもん)(どう)(とう)
 『乾』という病態は、気道を潤す『水(=陰)』が不足し、気道過敏や弱い炎症が発症していると考えます。
 そういった場合には『陰』を補う麦門冬湯を用います。
 感冒罹患後の咳だけが残る症状などが空咳、いわゆる乾性咳嗽です。
麦門冬、粳米、人参、甘草
気道を潤して乾性咳嗽を抑える
半夏
鎮咳・去痰作用により、気道にこびりついた痰を取り除いて鎮咳する。
 
今回は紹介しませんでしたが、炎症の強弱、喀痰の性状を見て処方を選択することがありますので、
気になられた方はぜひ相談してみてくださいね。

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