漢方では、生体を維持する循環要素として、
「気」、「血」、「水」といった考え方があることを以前書きましたが、
今回は「水」の異常について紹介します。
ヒトは1日に2Lもの水を体外に放出しており、それを食物や飲料によって補っています。
水は私たちが生きていく上で欠かせないものです。
その水の流れが滞り、体のどこかで過剰となったり、偏在したりすることを
漢方では「水滞」あるいは「水毒」といって治療の対象となります。
主な症候は、以下の通りです。
① 分泌異常:水様性鼻汁、喀痰、帯下、浸出液、尿利の減少・過多、水様下痢
② 停滞:浮腫、胸水、腹水、関節液貯留、腫脹、胃内停水、腹中雷鳴
③ 自覚症状:動悸、めまい感、回転性眩暈、起立性眩暈、耳鳴、頭痛、口渇、嘔吐、咳嗽、喘鳴
水毒の診断基準(総計13点以上を水毒とする)
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身体の重い感じ
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3
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悪心・嘔吐
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3
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拍動性の頭痛
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4
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腸のグル音の亢進
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3
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頭重感
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3
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朝のこわばり
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3
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車酔いしやすい
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5
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浮腫傾向・胃部振水音
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15
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めまい・めまい感
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5
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胸水・心のう水・腹水
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15
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立ちくらみ
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5
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臍上悸(腹大動脈の拍動が触れる)
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5
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水様の鼻汁
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3
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水瀉性下痢
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5
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唾液分泌過多
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3
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尿量減少
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7
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泡沫状の喀痰
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4
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多尿
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5
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治療生薬は、茯苓、蒼朮、白朮、猪苓、沢瀉、防已、黄耆、細辛、麻黄、杏仁、半夏、木通などで、
利水薬と呼ばれます。
そして代表的な方剤は五苓散です。
今年は過去2番目の早さで梅雨入りしました。
じめじめして嫌な季節ですね!天候の変化・雨降り前に頭が痛い。
めまいがするなど、これも東洋医学では水毒と考え五苓散が使われます。
他にも二日酔い、車酔い、特に子どもに多い嘔吐下痢などに役立つ漢方薬なので
手許に置いておきたい薬です。