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身体を温める生薬、附子(ぶし)と乾姜(かんきょう)について

西洋医学では冷えに対して確立した治療法はありません。せいぜい下肢末梢の知覚障害、血行障害、運動障害がないことをチェックするくらいです。大半の場合は(特に若い女性では)、西洋医学的治療の対象を見出せず、漢方の助けを借りることが多くなります。

漢方医学的な病態(証)の基本的な分類は『陰証』と『陽証』です。陰証は生体の反応力が低下した病態で、体温産生も不十分なため“冷え性”になりがちです。漢方医学的には冷えを『寒』といいます。

さて実際の冷え症状は、全身型、上熱下寒型、末梢循環不全型と大きく三つに分類して治療方針を考えます。「全身型」は、全身的に寒が支配する真性の寒で、陰証の冷えです。治療は服用することで生体を温める熱薬(附子や乾姜など)を含む方剤を用います。

附子はトリカブトの根を減毒処理したもので、バーナーで燃やすように強く体を温める作用や鎮痛作用があります。乾姜はショウガを蒸して乾燥させたもので体の中(裏)から温め、元気をつける(補気)作用が強いものです。この二大熱薬である乾姜と附子に甘草を加えた方剤を四逆湯といい、温める漢方薬の基本骨格となっています。尚、四逆湯はエキスにはありません。名前が似ていますが四逆散(ツムラ35)は全く別の薬なので注意が必要ですね。

漢方薬のおいしい飲み方 ~子ども編~

『良薬は口に苦し』

漢方薬ほどこの言葉が似合う薬はないと思います。とはいっても、そんな理由で子どもが苦くておいしくない薬を飲んでくれるか?といえば、それは難しいことでしょう。しかし、美味しく飲む方法が実はあるんです!

今回はその飲ませ方の工夫を紹介します。

まずは薬に対して子どもがどのような反応をするか、年代別に知っておきましょう。

乳児期(0~1歳) 比較的飲ませやすい
幼児期(2~5歳) 薬に敏感で、しばしば服薬拒否
学童期(6歳以降) 漢方の必要性を理解すれば比較的飲ませやすい

漢方を飲ませるのが難しい年代は幼児期です。この間に苦い漢方薬に慣れていくと、もしかしたら食べ物の好き嫌いがない子どもに育っていくかもしれないですね。

では、肝心の『漢方の飲ませ方』について見ていきたいと思います。

①甘い漢方薬を飲ませてみる

 漢方薬に苦手意識がある子どもには甘い漢方薬から飲ませてみましょう。

 比較的飲みやすい漢方薬は、建中(けんちゅう)湯類(とうるい)(黄耆建中湯(おう ぎけんちゅうとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう))、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)、麻黄湯(まおうとう)、六君子湯(りっくんしとう)、桔梗湯(ききょうとう)があります。

②味付けをしてみる

 1回分の漢方薬を適量のお湯に溶かして溶液を作ります。そして砂糖やココア、麦芽飲料、ハチミツ、アイスクリーム、ヨーグルトなどに混ぜて下さい。ただ、ハチミツにはボツリヌス菌が含まれている可能性があるので、乳児には与えないように。ココアや抹茶コーヒーなど少し苦めの味のものと混ぜ合わせると、味と香りが相殺されて飲みやすくなったりします。アイスクリームやヨーグルトなどの冷たいものは味覚を鈍くさせて苦みをわかりにくくする効果があります。しかし、胃腸が弱っていたり、風邪の引き始めで悪寒がしている時などには温かいものに溶かして飲ませたほうが効果も増強します。

いかがでしたか?

是非試して、子どもが笑顔いっぱいで飲めるようになってもらいたいですね。

漢方薬の飲み方の工夫! ~高齢者編~

 今回は漢方の飲み方の工夫(高齢者編)についてお話します。

 まず、なぜ漢方薬が高齢者の方によいと言われているか、ご存知ですか?

 それは年齢を重ねるにつれて身体機能の低下や病気の長期化など、同時に複数の病を患う状態になることが多くなるからです。複数の病を治すためにはいくつもの診療科に通って、何種類もの薬を内服することになる…。

 漢方薬には様々な心身の変化や不調、病気に対して細かく対応できる処方が沢山あります。漢方薬は高齢者の方のこういった悩みを解決できる、とても有用な薬なのです。

 しかし、いくら有用な薬だといっても、飲みたくない・・では意味が無いですよね。高齢者の方の中には、食事の際にむせてしまう方や入れ歯を装着している方など、漢方薬を飲みたくても飲めないあるいは飲みにくい場合があります。

 その場合の対処法についても紹介したいと思います。

 ①お湯に溶かす、味付けをする

 こちらは、前回紹介した子どもへの飲ませ方とほとんど同様です。ほかの方法を挙げるとするならば、お粥や味噌汁に混ぜてみると良いでしょう。

 ②嚥下困難(食事でむせてしまう)の方には

 嚥下困難の方には、原則、汁物にとろみをつけて固めます。とろみは最初スプーン1~2杯から開始し、最大7~8杯まで加えます。スプーン7~8杯のとろみを加えると、汁物もほとんどゼリー状に固まってきます。お粥などでも嚥下が困難な場合は必要に応じてとろみをつけると良いでしょう。とろみ以外では、ゼリー状のオブラートにエキス顆粒を包んで内服させる方法もあります。現在は、チョコレート味、イチゴ味など色々な味がついているものまであります。

 ③入れ歯を装着している方には

 漢方服用の際に入れ歯を外すという方法もありますが、手間な時もありますよね。そういった場合には、お湯にエキス顆粒を溶かすという方法がよく使われています。他には、オブラートを用いると良いでしょう。オブラートにエキス剤を入れて水を入ったコップに入れ2~3秒待つとゼリー状になり飲みやすくなります。ぜひ、お試しくださいね。

秋ばてと漢方

秋ばてという言葉が最近よく聞きますが、これは本来、夏ばてと言われていたものなのですが、最近の温暖化の影響でしょうか。

季節が1ヶ月ずれてきたように感じます。

夏ばては本来、夏を過ぎて9月の中旬ほどになり、すごしやすくなってから、手足や身体が重だるかったり、気力がない、食欲がないといった症状を呈するものを言いましたが、最近では夏の盛りの頃、食欲がなく、身体がだるく、何もする気が起こらないといった状態を指すようになりました。

それだけ猛暑の影響もあるのでしょう。

盛夏の夏ばてには、その名の通り、暑さを冷まし元気を出させてくれる清暑益気湯(せいしょえっきとう)が役に立ちましたが、日中の暑さに比べて、朝夕寒気を感じるようになってきたこの時期からは補中益気湯(ほちゅうえっきとう)の出番です。

補中益気湯は別名、医王湯とも呼ばれ、消化機能を補い元気を益す薬という意味で名付けられた薬です。

これらは補剤と呼ばれ、西洋薬にはないタイプの薬です。

元気が出る意味を医学的に解説するのは難しいですが、補中益気湯の作用としては、筋トーヌス(緊張)の低下を改善する。

下垂傾向にある臓器を支え回復させる。

食欲の改善、消化機能の改善、疲労感の改善、免疫力(自然治癒力)の改善などが主な作用と言われています。

これから一段と寒くなるにつれ、風邪も流行ってきます。誰しも不摂生が続くと風邪をひいてしまいます。

そんな時に役に立つのも補剤です。

コロナの影響で皆さんもマスクを常時、着用しているのでここ2年間はインフルエンザも流行っていません。予防にはコロナ感染症同様にワクチンがありますが、ワクチンも万能ではありません。

それは、毎年、次年度流行しそうなウィルス株を想定して、ワクチンを作っているからです。数年前、新型インフルエンザが話題になりましたが、ウィルスも一定ではないのです。

つまりワクチンは、インフルエンザの予防に有用ですが、ワクチン株と種類が異なれば、効かないこともあるのです。

補中益気湯を服用しておくとインフルエンザに罹患する率が大幅に下がるという研究もあります。

熱帯夜はどうしても寝不足になります。涼しくなってくると、目覚め時の布団が気持ち良くてもっと寝ていたくなりますね。

補中益気湯で秋ばてを克服し、この冬の風邪、インフルエンザを予防するためにも、夜更かしなどの不摂生を慎みましょう。

また食欲の秋です。日頃から食を楽しみ、体を動かし体力をつけておくことが最も有効な風邪、インフルエンザの予防となります。

何かお困りのことがあればぜひ、ご相談下さい。

五苓散(ごれいさん)について

お盆が明けて、少し涼しくなってきましたが、
まだもう少し暑い日が続きそうです。

近年はエアコンの普及により夏バテの症状は夏の盛りの時期にみられることが多いです。
しかし、本来「夏バテ」というものは涼しくなり始めたころに夏場の疲れが出てきます。

これからの気温差に体が対応しきれなくなり、
倦怠感や胃腸症状、風邪のような症状がみられる場合があるので注意してくださいね。


夏場の漢方処方には、倦怠感や食欲不振にもちいる漢方薬は多くありますが、
漢方薬としての知名度は高いのに、夏場の使用が普及していないものが五苓散(ごれいさん)です。

五苓散の効能効果には、
「口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、
  下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病」となっています。

一見何の共通点もないと思われるかもしれませんが、重要なキーワードが隠されています。


それは「水」が関与しているということです。

漢方医学では、「水」は体内を循環する透明な液体、いわゆる「体液」を示します。

健康な状態ではこの「水」が体中を円滑に巡っているのですが、
なんらかの異常をきたすと滞りや欠乏することがあります。
それが「水」の異常となります。

そして五苓散が対応する疾患は、「水」が滞ったために生じる「水毒」という病態です。
「水毒」は体の中に水溜まりができるイメージです。
 
夏場に水分をたくさん摂取しクーラー環境下で体が冷えるなどすると、
「水毒」の病態に近づきます。

血流が悪くなるともちろん浮腫みやすくなったり、冷たいものを摂取したことによって胃腸が冷え、
下痢を起こします。

胃腸機能が低下すると水分代謝がうまくいかなくなるので熱中症も起りやすくなったり、
悪循環に陥ります。

そこで、五苓散は体の中の水のめぐりを改善する漢方薬です。

嘔吐や下痢は消化管内の水溜まり、めまいや頭痛も脳血管の浮腫と考えれば、
すべて五苓散の適応疾患ではないでしょうか。

これらより、五苓散は夏場にみられる症状、いわゆる「暑気あたり」に効能効果があるのです。

五苓散は実際に熱中症の点滴の効果を高める目的で使われます。

水分代謝がうまくいかない熱中症患者にはもってこいの処方でしょう。

点滴後もなかなか体調が戻らないときに、点滴後3~4日間五苓散を飲むとよいとされています。


水分をしっかり摂っているのに調子が悪い場合は試してみてはいかがでしょうか?

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