速効性のある漢方薬

 

漢方薬は長く飲まないと効かないと思っていませんか?そんなことはありません。
急性疾患に対してはすぐに効いてくれます。

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風邪には(かっ)(こん)(とう)、インフルエンザには()黄湯(おうとう)、花粉症には小青(しょうせい)(りゅう)(とう)、特にこどもの急性胃腸炎(嘔吐・下痢)には五苓散(ごれいさん)、足がつった時の芍薬甘(しゃくやくかん)(ぞう)(とう)など、飲んですぐに(5分~15分で)効いてきます。
1976年に現在の漢方エキス製剤が薬価に収載されてから、当時は慢性疾患に対して多く用いられてきました。西洋薬でなかなか良くならない、難治性の病気に対して使われることが多かったのです。漢方医学教育がなかった当時としては仕方なかったのかもしれません。大学で漢方医学教育が始まったのは2001年以降です。世界最古の医学書と言われる(しょう)寒論(かんろん)は急性熱性疾患を対象にしています。飲んですぐ効かないとだめなんですね。
風邪やインフルエンザに効く漢方薬は、生体防御反応を促進するような薬です。ウィルスに罹患すると、それを排除しようと生体防御反応が働き出します。温熱産生スイッチがオンになり、熱に弱いウィルスを排除しようと体温を上昇させようと仕向けます。インターフェロンが出てきて、インターロイキン1αといったサイトカインと呼ばれる免疫物質が出てきます。その過剰な産生を抑えるのが外来ウィルスに対する漢方薬の作用だということが解ってきました。
芍薬甘草湯の効き方は未だよく解っていません。全ての漢方薬の中で2番目に多く使われているものです。名前の通り、芍薬と甘草の二味からなる最もシンプルな漢方薬です。それなのにまだよく解っていないのです。これまで芍薬のペオニフロリンと甘草のグリチルリチンがともに配糖体で、腸内細菌によって糖鎖が取れて有効成分が吸収されると考えられています。だから腸内細菌叢の状態によって効き方にも個人差があると考えられています。でもおそらく口腔粘膜からはもっと速やかに吸収され効果を発揮するのだと思います。口腔粘膜からだけではありません。五苓散は子供では注腸したり、独自に座薬を作製し使われているところもあります。おそらく粘膜から速やかに吸収され効果を発揮するんだと思います。
本来、急性疾患に対しては、1日3回毎食前というのはナンセンスなのです。頓服的に使われてきたのが実際です。但し保険上の問題、副作用の問題もあります。風邪には3-4時間おきに汗をかくまで。足がつったら即座に、夜中に足がつる人は寝る前に飲むのが効果的なのですが・・・