大建中湯(ダイケンチュウトウ)という漢方薬があります。
今、日本で一番使われている漢方薬です。
構成はニンジン(人参)、サンショ(山椒)、ショウガ(乾姜=生姜を蒸して乾燥させたもので
温める作用がより強力になる)で非常にシンプルな漢方薬です。
但し、これにコウイ(膠飴)と呼ばれる飴が10g入りますので量が多くなります。
通常の漢方薬7.5gの倍量の1回2包、1日6包となります。
1日量15g中10gは飴ということです。
大建中湯が最もよく使われている科は外科です。
開腹術をすると、どうしても腸管が癒着しやすくなります。
これを大建中湯は防ぐ作用があるのです。
具体的には、腸管の動きを良くする、お腹を温める(腸管の血流を改善する)、
炎症を抑えるなどといった作用を持っています。
内科的には便通異常にもよく使われます。
便秘には一般的に大黄の主成分から抽出されたセンノシドを加工したものが良く使われます。
刺激性下剤に分類されるものです。刺激性下剤は確かに効きますが、
慢性の便秘の方では、これを常用すると次第に効きが悪くなり飲む量ばかり増えていきます。
これを耐性と言います。
こうした難治性の便秘に対して大建中湯は有効な方も多くいらっしゃいます。
また、腹診(漢方的な診察でお腹を触って診察すること)で、
お臍周りに冷えのある方では、便秘でも下痢でも効果があります。
似た名前の漢方薬で小建中湯(ショウケンチュウトウ)というのがあります。
飴が入っている点は同じですが、
その構成は桂皮、芍薬、大棗、甘草、生姜と全く違います。
小児科でよく使われており、お腹を痛がる虚弱なこどもの漢方薬です。
名前は似て非なるものなので、合せて中建中湯として使われている先生もいらっしゃいます。
今、大建中湯は、術後のイレウスやクローン病を対象に米国でも臨床試験が行われています。
これまでの純粋な化合物に対し、多彩な作用を持つ複合物に対する期待も高まっています。
漢方薬はまだまだ解らないことだらけで、生薬一つをとっても多くの成分が抽出されます。
それを複数組み合わせているわけですから尚更複雑です。
もっと漢方薬が役に立つように、今後の研究に期待するところです。