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漢方薬の飲み方の工夫! ~高齢者編~
今回は漢方の飲み方の工夫(高齢者編)についてお話します。
まず、なぜ漢方薬が高齢者の方によいと言われているか、ご存知ですか?
それは年齢を重ねるにつれて身体機能の低下や病気の長期化など、同時に複数の病を患う状態になることが多くなるからです。複数の病を治すためにはいくつもの診療科に通って、何種類もの薬を内服することになる…。
漢方薬には様々な心身の変化や不調、病気に対して細かく対応できる処方が沢山あります。漢方薬は高齢者の方のこういった悩みを解決できる、とても有用な薬なのです。
しかし、いくら有用な薬だといっても、飲みたくない・・では意味が無いですよね。高齢者の方の中には、食事の際にむせてしまう方や入れ歯を装着している方など、漢方薬を飲みたくても飲めないあるいは飲みにくい場合があります。
その場合の対処法についても紹介したいと思います。
①お湯に溶かす、味付けをする
こちらは、前回紹介した子どもへの飲ませ方とほとんど同様です。ほかの方法を挙げるとするならば、お粥や味噌汁に混ぜてみると良いでしょう。
②嚥下困難(食事でむせてしまう)の方には
嚥下困難の方には、原則、汁物にとろみをつけて固めます。とろみは最初スプーン1~2杯から開始し、最大7~8杯まで加えます。スプーン7~8杯のとろみを加えると、汁物もほとんどゼリー状に固まってきます。お粥などでも嚥下が困難な場合は必要に応じてとろみをつけると良いでしょう。とろみ以外では、ゼリー状のオブラートにエキス顆粒を包んで内服させる方法もあります。現在は、チョコレート味、イチゴ味など色々な味がついているものまであります。
③入れ歯を装着している方には
漢方服用の際に入れ歯を外すという方法もありますが、手間な時もありますよね。そういった場合には、お湯にエキス顆粒を溶かすという方法がよく使われています。他には、オブラートを用いると良いでしょう。オブラートにエキス剤を入れて水を入ったコップに入れ2~3秒待つとゼリー状になり飲みやすくなります。ぜひ、お試しくださいね。

秋ばてと漢方
秋ばてという言葉が最近よく聞きますが、これは本来、夏ばてと言われていたものなのですが、最近の温暖化の影響でしょうか。
季節が1ヶ月ずれてきたように感じます。
夏ばては本来、夏を過ぎて9月の中旬ほどになり、すごしやすくなってから、手足や身体が重だるかったり、気力がない、食欲がないといった症状を呈するものを言いましたが、最近では夏の盛りの頃、食欲がなく、身体がだるく、何もする気が起こらないといった状態を指すようになりました。
それだけ猛暑の影響もあるのでしょう。
盛夏の夏ばてには、その名の通り、暑さを冷まし元気を出させてくれる清暑益気湯(せいしょえっきとう)が役に立ちましたが、日中の暑さに比べて、朝夕寒気を感じるようになってきたこの時期からは補中益気湯(ほちゅうえっきとう)の出番です。
補中益気湯は別名、医王湯とも呼ばれ、消化機能を補い元気を益す薬という意味で名付けられた薬です。
これらは補剤と呼ばれ、西洋薬にはないタイプの薬です。
元気が出る意味を医学的に解説するのは難しいですが、補中益気湯の作用としては、筋トーヌス(緊張)の低下を改善する。
下垂傾向にある臓器を支え回復させる。
食欲の改善、消化機能の改善、疲労感の改善、免疫力(自然治癒力)の改善などが主な作用と言われています。
これから一段と寒くなるにつれ、風邪も流行ってきます。誰しも不摂生が続くと風邪をひいてしまいます。
そんな時に役に立つのも補剤です。
コロナの影響で皆さんもマスクを常時、着用しているのでここ2年間はインフルエンザも流行っていません。予防にはコロナ感染症同様にワクチンがありますが、ワクチンも万能ではありません。
それは、毎年、次年度流行しそうなウィルス株を想定して、ワクチンを作っているからです。数年前、新型インフルエンザが話題になりましたが、ウィルスも一定ではないのです。
つまりワクチンは、インフルエンザの予防に有用ですが、ワクチン株と種類が異なれば、効かないこともあるのです。
補中益気湯を服用しておくとインフルエンザに罹患する率が大幅に下がるという研究もあります。
熱帯夜はどうしても寝不足になります。涼しくなってくると、目覚め時の布団が気持ち良くてもっと寝ていたくなりますね。
補中益気湯で秋ばてを克服し、この冬の風邪、インフルエンザを予防するためにも、夜更かしなどの不摂生を慎みましょう。
また食欲の秋です。日頃から食を楽しみ、体を動かし体力をつけておくことが最も有効な風邪、インフルエンザの予防となります。
何かお困りのことがあればぜひ、ご相談下さい。

五苓散(ごれいさん)について
お盆が明けて、少し涼しくなってきましたが、
まだもう少し暑い日が続きそうです。
近年はエアコンの普及により夏バテの症状は夏の盛りの時期にみられることが多いです。
しかし、本来「夏バテ」というものは涼しくなり始めたころに夏場の疲れが出てきます。
これからの気温差に体が対応しきれなくなり、
倦怠感や胃腸症状、風邪のような症状がみられる場合があるので注意してくださいね。
夏場の漢方処方には、倦怠感や食欲不振にもちいる漢方薬は多くありますが、
漢方薬としての知名度は高いのに、夏場の使用が普及していないものが五苓散です。
五苓散の効能効果には、
「口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、
下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病」となっています。
一見何の共通点もないと思われるかもしれませんが、重要なキーワードが隠されています。
それは「水」が関与しているということです。
漢方医学では、「水」は体内を循環する透明な液体、いわゆる「体液」を示します。
健康な状態ではこの「水」が体中を円滑に巡っているのですが、
なんらかの異常をきたすと滞りや欠乏することがあります。
それが「水」の異常となります。
そして五苓散が対応する疾患は、「水」が滞ったために生じる「水毒」という病態です。
「水毒」は体の中に水溜まりができるイメージです。
夏場に水分をたくさん摂取しクーラー環境下で体が冷えるなどすると、
「水毒」の病態に近づきます。
血流が悪くなるともちろん浮腫みやすくなったり、冷たいものを摂取したことによって胃腸が冷え、
下痢を起こします。
胃腸機能が低下すると水分代謝がうまくいかなくなるので熱中症も起りやすくなったり、
悪循環に陥ります。
そこで、五苓散は体の中の水のめぐりを改善する漢方薬です。
嘔吐や下痢は消化管内の水溜まり、めまいや頭痛も脳血管の浮腫と考えれば、
すべて五苓散の適応疾患ではないでしょうか。
これらより、五苓散は夏場にみられる症状、いわゆる「暑気あたり」に効能効果があるのです。
五苓散は実際に熱中症の点滴の効果を高める目的で使われます。
水分代謝がうまくいかない熱中症患者にはもってこいの処方でしょう。
点滴後もなかなか体調が戻らないときに、点滴後3~4日間五苓散を飲むとよいとされています。
水分をしっかり摂っているのに調子が悪い場合は試してみてはいかがでしょうか?
夏バテの漢方!!
梅雨明けして暑い日が続いていましたが、先週から梅雨が戻ったような天気ですね!
今年の夏は猛暑という予想もでています。
体調がすぐれずだるい、食欲がない、胃腸の調子が悪い、下痢をする、
体重が落ちる、頭が痛い、めまいがする・・・。
など夏バテのこんな症状、病気ではないけれど結構、つらいものです。
原因として、食欲減退による栄養不足、冷たい飲み物のとりすぎによる消化機能の低下、
暑さによる睡眠不足、冷房のあたりすぎによる体温の調整不良、
発汗によるミネラル・ビタミンの消耗などによって
体力が著しく消耗されたことが考えられます。
とくに暑い室外と冷房で冷えた室内を行き来することで自律神経のバランスが崩れ、
体温調節機能が低下し、だるさや頭痛、めまいや手足の冷えなどが起こりやすくなります。
今回は夏バテによく使われる漢方薬について紹介します。
最もよく使われるのは清暑益気湯という漢方薬です。
字のごとく暑さをとってやって元気をつけるという意味で作られた漢方薬です。
似た処方に補中益気湯という処方がありますが、
清暑益気湯は補中益気湯の夏バージョンと言っていいと思います。
補中益気湯は主に食欲不振、倦怠感に使われますが、
清暑益気湯にはプラスして脱水を防ぐ生薬や体を冷やす生薬が入っています。
倦怠感・食欲不振にプラスして汗をかきすぎて熱感を訴える場合など効果が期待できます。
他にも六君子湯という漢方薬もあります。
この薬は主に上腹部愁訴を良くしてあげます。
特に食欲不振(食べれるけど量が摂れない)によく使われます。
以下にポイントをまとめます。
① 清暑益気湯 ➡ 体がだるく食欲もなく下痢があり夏やせする場合 この薬は体を冷やし、脱水を防ぐ役割のある薬です!
② 補中益気湯 ➡ 胃腸の働きが低下し体力が著しく落ち、寝汗がある場合
とくに手足のだるさがひどい場合にピッタリです!
③ 六君子湯 ➡ 食欲がなく、胃腸が弱く、手足の冷えがある場合
とくに食べたくても食べれない場合
夏バテの患者さんにも症状に応じて使える漢方薬は多くあります。
お困りの患者さんはぜひご相談下さい!!
ほてり、のぼせで困っていませんか?
今月、梅雨入りして毎日、蒸し暑い日が続いていますね!
おまけにコロナの影響で長時間のマスク着用で
顔が火照ったり、のぼせたりして困っていませんか?
一般に女性は冷え症の方が多いですが、
更年期(正常閉経は43~54才)になるとのぼせるという方も多くいらっしゃいます。
更年期でなくても、生まれつき足が焼ける、
ひどい時は冷蔵庫に足を入れたいというほどほてって困るという方もいます。
こういう方が附子などの入っている薬を間違って飲まれたら、
ほてり感はますますひどくなって副反応をおこしてしまいます。
こういう方は「陽証」「熱証」なのです。
熱をとる、冷やしてあげる薬が必要となってきます。
その代表は石膏(せっこう)や黄連(おうれん)という生薬です。
黄連は植物ですが、
石膏とは硫酸カルシウムの二水和物塩の結晶で生薬の中では数少ない鉱物のひとつです。
骨折時に使われるギブスやセメント、チョークの原料も石膏の仲間です。
それを薬として炎症をとる、冷やす薬として生薬にした古代の人の知恵、
中国2000年の歴史はまさに恐るべきです。
黄連を含む漢方薬の代表は黄連解毒湯や三黄瀉心湯です。
黄連解毒湯は苦味健胃薬でもありますが
ほてり・のぼせのある方にはこの苦味が気にならないようです。
証があっていれば味も合うという不思議な関係もあるのです。
一方、石膏を含む薬の代表には越婢加朮湯や麻杏甘石湯、白虎加人参湯などがあります。
色々な種類の薬があります。
きっと貴方に合うものがあるはずです。