おしっこが気になる方へ

今回は「排尿障害に有効な漢方薬」についてお話します。

まず挙げられるのは、おしっこのトラブル専用のお薬、猪苓湯です。

これは下腹部辺りに熱候がある(つまり炎症がある)膀胱炎の
ファーストチョイスとされています。

頻尿や残尿感、排尿痛など尿路不定愁訴に幅広く用いられます。

慢性的に症状の続く人、繰り返す人には似たお薬で猪苓湯合四物湯が用いられることもあります。

さらに炎症が強ければ竜胆瀉肝湯などが用いられます。

次に挙げられるのが八味地黄丸です。

最近、TVのCMでよく見かけませんか?

漢方的なお腹の所見では、下腹部が軟弱で下半身が冷えるタイプの排尿異常に用いられます。
老化に伴っておしっこが出にくくなったり、頻尿となったりするという方が増えてきますが、
そんな方のお薬です。
女性にももちろん使われるのですが、男性では前立腺肥大症のファーストチョイスです。

似たお薬に牛車腎気丸があります。
これは八味地黄丸に利尿作用のあるゴシツ・シャゼンシを加え、体を温めたり、
鎮痛作用のある附子の量が倍になり、胃腸にもたれる地黄の量が少なくなっていますので、
ある意味では八味地黄丸の作用を増強し、マイルドにしたお薬です。

漢方専門施設の統計では、男性では60歳代、女性では80歳代をピークに、
3人に1人にはこの類のお薬が使われていたほどポピュラーなお薬です。

一般用医薬のハルンケアは八味地黄丸がベースとなっています。

最後に紹介するのが清心蓮子飲です。

これは元気のない状態で、疲労感があったり、抑うつ傾向があったり、
逆にイライラしたりするなど神経過敏な状態の方に適しています。
また、八味地黄丸が胃にもたれて飲めないという人にも適応します。
一般用医薬品のユリナールはこの清心蓮子飲がベースとなっています。

夜間2回以上、おしっこに起きてつらい方、熱感があれば猪苓湯、
下肢に冷感があって胃腸が丈夫なら八味地黄丸、
胃腸が弱い人には清心蓮子飲となります。

最後に膀胱炎では、抗生剤が必須となりますので、恥ずかしがらずにまずはご相談下さい。

oshikko

秋ばて

秋ばてという言葉が最近聞かれるようになりました。

本来、夏ばてと言われていたものなのですが、最近の温暖化の影響でしょうか。
季節が1ヶ月ずれてきたように感じます。

夏ばては、夏を過ぎて9月の中旬ほどになり、すごしやすくなってから、
手足や身体が重だるかったり、気力がない、食欲がないといった症状を呈するものを言いましたが、
最近では夏の盛りの頃、食欲がなく、身体がだるく、何もする気が起こらないといった状態を
指すようになりました。

それだけ猛暑の影響もあるのでしょう。
35℃を超える日(猛暑日)もありますよね!
盛夏の夏ばてには、その名の通り、暑さを冷まし元気を出させてくれる
清暑(せいしょ)(えっ)()(とう)が役に立ちましたが、

日中の暑さに比べて、朝夕寒気を感じるようになってきたこの時期からは
補中(ほちゅう)(えっ)()(とう)の出番です。

補中益気湯は別名、医王湯とも呼ばれ、消化機能を補い元気を益す薬という意味で
名付けられた薬です。

これらの補剤は洋薬にはないタイプの薬です。
元気が出る意味を医学的に解説するのは難しいですが、
補中益気湯の作用としては、筋トーヌス(緊張)の低下を改善する。
下垂傾向にある臓器を支え回復させる。
食欲の改善、消化機能の改善、疲労感の改善、免疫力(自然治癒力)の改善などが
主な作用と言われています。

実際に不妊男性の運動能の低下した精子を改善したり、
解熱剤では下がらないストレスによる発熱を解熱したりすることも知られています。

これから一段と寒くなるにつれ、風邪も流行ってきます。
誰しも不摂生が続くと風邪をひいてしまいます。

そんな時に役に立つのも補剤です。

インフルエンザの予防にワクチンがありますが、ワクチンも万能ではありません。

リスクの高い方には補中益気湯を飲ませておくと
インフルエンザに罹患する率が大幅に下がるという研究もあります。
熱帯夜はどうしても寝不足になります。

涼しくなってくると、目覚め時の布団が気持ち良くてもっと寝ていたくなりますね。

補中益気湯で秋ばてを克服し、この冬の風邪を予防するためにも、
夜更かしなどの不摂生を慎み、また食欲の秋です。
日頃から食を楽しみ、体を動かし体力をつけておくことが最も有効な風邪の予防となります。

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多汗症について

汗が出て止まらない、タオルやハンカチが何枚あっても足りないなど、
悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか⁇
漢方では自然発汗が無ければ無汗(むかん)といい、あれば自汗(じかん)と呼びます。
つまり多汗症は自汗の過剰状態と捉えますが、
発汗の有無は漢方の診察のひとつの重要なモノサシとなります。

自汗の原因は大きく二つに分けられます。

一つは、(ひょう)(きょ)です。
(ひょう)とは人体の表面付近、浅い部分を指します。
例えば急性熱性疾患の初期などにみられる悪寒や熱感といった体表の症状、
首から上の咽喉痛、頭痛、首の強張りなどは表の症候です。
この表の機能低下(表虚)は自汗の原因になります。
表虚の典型的な治療薬は(けい)()(けい)()(とう)が代表的)ですが、黄耆(おうぎ)も表の機能を高め正常化します。

代表的な方剤は、

防已黄耆(ぼういおうぎ)(とう)(水太りタイプでまた膝関節に水が溜まっているものにも用います)と
黄耆(おうぎ)建中(けんちゅう)(とう)(虚弱な体質で、軟弱な皮膚からじとじとと汗をかく場合)です。

もう一つは()(ねつ)です。
()は人体の奥、中心部です。
内部にこもった熱は冷水を欲して口渇を招き、発汗(自汗)により熱を冷まそうとします。
内部にこもった熱を冷ます代表的な生薬は白い石膏(せっこう)で、代表的な石膏含有方剤、(びゃっ)()(とう)の名前の由来です。

代表的な方剤には、

(びゃっ)()加人参(かにんじん)(とう)があります。

暑がりで強くのどが渇き冷水を多量に飲みたがる。
そのくせ皮膚は乾燥気味という人に適応があります。
今の時期、いくら水分を摂ってもすぐに汗をかいてしまい水分量だけ増える、体が火照る方が適応になります。
五苓散(ごれいさん)は浮腫などの水の偏在を調節しますが、結果として口渇を軽減し、桂枝含有で自汗を調整します。
そこで、妙に咽が渇いてむくみがちな二日酔いや夏バテにも有効です。

ほかにも精神的な発汗には(さい)()の入ったものが適応となります。
代表的な薬剤として手掌発汗が特徴的な()逆散(ぎゃくさん)や
首から上の発汗が特徴的な(さい)()(けい)()(かん)(きょう)(とう)などがあります。

急性熱性疾患における自汗は虚証となっていますが、
多汗症の治療においては、虚実の鑑別、原因の鑑別が重要となってきます。

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夏本番がやってきました!

7月に入り、梅雨も明けて熱中症になる人が増えています。

昨年同様にコロナの影響でマスクをつける機会が多いと思いますしマスク熱中症への警戒も必要です。
「まだ大丈夫!」と無理をせずに、水分補給と暑さを避ける対策を小まめにして下さいね。
しかし、それでも体調不良を避けられない場合があります。

そんな時に力になってくれるのが『補中益気湯』、『清暑益気湯』という漢方薬です。
この時期になると毎年決まって体調を崩す方、既に夏バテ傾向にある方必見です!
 
 
  1. 補中益気湯   nettyuusyoukanpou                                      
「中(胃腸機能)を補い、元気を益す」というネーミングの漢方薬です。
胃腸機能が低下して倦怠感を訴え、免疫力も低下している場合によいとされます。   
もともと体力のない方が暑い夏を乗り越えて頂くための処方です。
暑さで微熱・寝汗が出てきたら処方するタイミングとなります。
だるい、疲れた、しんどい等の倦怠感や、
食べる気も起らないといった場合に使用してみて下さい。
 
  1. 清暑益気湯
上述した補中益気湯がベースとなり、「暑さを清めて元気を益す」という夏に特化した漢方薬です。
通常は普通に過ごすことが出来る方が、暑いために体調を崩した時に使う処方です。
麦門冬、五味子が体に足りない水分を補い、黄柏が火照った体を冷まします。
また、夏に沢山水分を取ってお腹が冷えて下痢をしてしまう場合に対しても効果が期待出来ます。
真夏に肉体労働者の方々に協力を頂いて行われた報告では、肉体労働時の体温上昇を軽減しています。
じっとしていても汗がジクジク出る、のどが渇く、下痢をしやすいと言った場合に使用してみて下さい。

点滴をしてもなかなかだるさが取れないといった場合に対しても、
この2つの漢方薬をどちらか飲めばスッキリすることでしょう。

夏の季節には上手く漢方薬を利用してみて下さいね。

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便秘に使われる漢方薬について

今回は便秘に使われる漢方薬について紹介します。
 
便秘に用いられる漢方薬は1種類だけではなく、下剤としての強さが幅広く多くの種類が
あります。
①大腸を刺激する刺激性下剤としての役割をもつ生薬:大黄(だいおう)(主成分:センノシド)
②便を柔らかくする塩基性下剤としての役割をもつ生薬:芒硝(ぼうしょう)
③小腸の水分分泌を促進する役割をもつ生薬:()(おう)麻子(まし)(にん)(きょう)(にん)
 
漢方医学的には、
①と②の薬能をもつ生薬の分類を「攻下薬」、
③の薬能をもつ生薬の分類を「潤下薬」といいます。

ちなみにですが、大黄と芒硝の組み合わせをもつ漢方薬を、(じょう)()(とう)類といいます。
(じょう)()(とう)類は下剤の漢方薬なかでも特に強い作用をもつので、
お腹の弱い方は下しやすくなる恐れがあります。
 
1. 大黄甘(だいおうかん)(ぞう)(とう)
 大黄と甘草の2味から成る漢方薬で、切れ味がシャープ。
  西洋薬の下剤であるセンノシドにとても良く似ています。
  長期連用には注意が必要です。
 
2. 麻子(まし)(にん)(がん)
 刺激性下剤である大黄、潤腸作用をもつ麻子仁、杏仁を含みます。
  便に潤いを持たせ大腸を動かしながら出す漢方薬ですので、乾燥便や兎糞便に
  対して用います。低K血症の恐れのある甘草や胃もたれの原因になる地黄が
  含まれていないので、高齢者に優しく安全性の高い漢方薬です。
 
3. (じゅん)(ちょう)(とう)
 麻子仁丸に非常に類似している漢方薬で、乾燥便や兎糞便に対して用います。
  麻子仁丸よりも大黄の含有量は少ないので、作用は少し弱めです。
  地黄を含みます。麻子仁丸でよく効きすぎる場合は潤腸湯で様子を見ます。
 
4. 防風通(ぼうふうつう)聖散(しょうさん)
 これは肥満症の漢方薬として有名ですが、大黄や芒硝を含むので下剤としても用います。
  漢方医学的には、体内に溜まった毒素を便として排出するという考え方です。
  ですので、中性脂肪の多い肥満症の方や化膿しやすい皮膚疾患を持つ方に用いられます。
 
5. 大建中(だいけんちゅう)(とう)
 人参(にんじん)山椒(さんしょう)乾姜(かんきょう)(こう)()の4味から成る漢方薬で、下剤を一つも含みません。
  ですが、腸管の血流量を増加させるため、腸の動きがよくなることから
  便秘にも応用されるケースが多くあります。
  冷えや腹痛があるときにはお湯に溶かすとすぐに溶けるので、比較的飲みやすい漢方薬です。
  乾姜は生姜を蒸して乾燥させたものなので、味としては生姜湯のようなものです。
 
今回は便秘に使われる漢方薬について紹介しました。
ご自分の体調や症状にあった漢方薬を探して下さいね。

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水の異常に使う漢方薬!

漢方では、生体を維持する循環要素として、
「気」、「血」、「水」といった考え方があることを以前書きましたが、
今回は「水」の異常について紹介します。

ヒトは1日に2Lもの水を体外に放出しており、それを食物や飲料によって補っています。
水は私たちが生きていく上で欠かせないものです。

その水の流れが滞り、体のどこかで過剰となったり、偏在したりすることを
漢方では「水滞」あるいは「水毒」といって治療の対象となります。

主な症候は、以下の通りです。
①   分泌異常:水様性鼻汁、喀痰、帯下、浸出液、尿利の減少・過多、水様下痢
②   停滞:浮腫、胸水、腹水、関節液貯留、腫脹、胃内停水、腹中雷鳴
③   自覚症状:動悸、めまい感、回転性眩暈、起立性眩暈、耳鳴、頭痛、口渇、嘔吐、咳嗽、喘鳴
水毒の診断基準(総計13点以上を水毒とする)
身体の重い感じ
悪心・嘔吐
拍動性の頭痛
腸のグル音の亢進
頭重感
朝のこわばり
車酔いしやすい
浮腫傾向・胃部振水音
15
めまい・めまい感
胸水・心のう水・腹水
15
立ちくらみ
臍上悸(腹大動脈の拍動が触れる)
水様の鼻汁
水瀉性下痢
唾液分泌過多
尿量減少
泡沫状の喀痰
多尿


治療生薬は、茯苓、蒼朮、白朮、猪苓、沢瀉、防已、黄耆、細辛、麻黄、杏仁、半夏、木通などで、
利水薬と呼ばれます。

そして代表的な方剤は五苓散です。


今年は過去2番目の早さで梅雨入りしました。

じめじめして嫌な季節ですね!天候の変化・雨降り前に頭が痛い。

めまいがするなど、これも東洋医学では水毒と考え五苓散が使われます。

他にも二日酔い、車酔い、特に子どもに多い嘔吐下痢などに役立つ漢方薬なので
手許に置いておきたい薬です。

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めまいに使う漢方薬!

めまいといっても色々なタイプのものがあります。

まずは原因の詳細な鑑別よりも、重大な疾患によるものかどうかの鑑別が大事です。

つまり命に関わるようなもの、小脳出血やくも膜下出血、脳幹梗塞などによるものかどうかの
鑑別です。

でも大半のめまいは危険な疾患には起因せず、良性発作性頭位めまい症で、
医者の力量によらず数週間で自然軽快するものです。
基本的にはめまい体操などで良くなっていくのですが、症状を軽減するために薬剤が使われる
訳ですが、西洋医学では効果不十分な場合もあり、そこに漢方の出番があります。

漢方では、生体を維持する循環要素として、「気」、「血」、「水」といった概念があります。

「水」とは血液以外の液体を差し、その水の偏在を「水毒」と言います。
代表的な病態には、浮腫、胸水など体腔内の異常な貯留、水の分布異常に伴う口渇
などがあります。

次に鼻水、水様の痰や帯下、尿利異常、水様下痢などの排泄異常があります。

そして内耳関連の症状ではめまい・ふらつき・耳鳴りなどが挙げられ、
内耳関連の病気は水の異常と捉えることが多いのです。
さらさらと流れる川の水は綺麗ですが、スムーズに流れない川の水はゴミも
溜まり淀んでいますよね。それと全く同じイメージなのが水毒です。
それではめまいの時に用いられる代表的な漢方薬について紹介します。
漢方ではめまいの症状に応じて薬が選ばれます。

まずは起立性のめまい、立ちくらみのようなめまいには苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)が、
回転性のめまいでは沢瀉(たくしゃ)(とう)(エキス剤がないため五苓散(ごれいさん)で代用)、
歩く時浮動感があるようなめまいには真武湯(しんぶとう)です。
また普段から胃腸の弱い方には半夏白朮天麻湯(はんげじゃくじゅつてんまとう)が選ばれます。
五苓散は二日酔いの薬としても有名ですが、水毒の最も代表的な薬で、
体内の水分代謝異常を調節し、浮腫状態では利尿作用、脱水状態では抗利尿作用を発揮する
ことが研究で分ってきており、水毒を伴う多くの疾患に応用されています。

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嫌な季節・・・花粉、黄砂そしてPM2.5

花粉症でツライ方も多いかもしれませんが、気になるのは花粉だけではありません。
黄砂、PM2.5も気になっている方も多いのではないでしょうか?
PM2.5とは文字通り、2.5μg/㎡以下の微粒子の総称です(1μm=0.001㎜)。
これは髪の毛の直径の1/30程度、スギ花粉の1/10程度の大きさで非常に小さく、
肺の奥まで入りやすいので、花粉症を増悪させるだけでなく、
肺がんなどへの影響が懸念されていますが、詳しくはまだ解っていません。

環境省の定める基準値は、1日平均で35μg/㎡以下となっていますが、
注意喚起のための基準値は70μg/㎡以上となっています。

漢方薬はPM2.5に効くの?なんて聞かれそうですが、
漢方薬は基本的には、病原に対する生態防御反応を支える薬です。

くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咽喉痛、咳、痰などの生態防御反応に有効です。
さて、花粉症のファーストチョイスは先月、お話した小青(しょうせい)(りゅう)(とう)です。

くしゃみ・鼻水・鼻づまりが使用目標となります。

平素から冷えの強い方には麻黄附(まおうぶ)子細(しさい)(しん)(とう)、逆に熱感の強い方(炎症の強い方)には
越婢加朮(えっぴかじゅつ)(とう)が使い分けられます。
これらはいずれも()(おう)という生薬が主薬となっています。
麻黄の主成分はエフェドリンですので、気管支拡張作用があり、
交感神経刺激作用もあるので眠くなりません。
むしろ元気になった気がします。

また元来、胃腸虚弱で麻黄が飲めない方には苓甘姜味(りょうかんきょうみ)(しん)()(にん)(とう)といった薬剤が
適応となります。
今年はみなさんがコロナの影響でマスクを着用されているので鼻の症状ではなく
目のかゆみを訴える方もいらっしゃいます。

その場合にも小青竜湯(アレルギー性結膜炎の効能効果あり)や越婢加朮湯が使われます。
(使用のポイントは上記記載)

また、黄砂やPM2.5の影響で鼻の症状だけでなく喉の痛みや咳が出る場合には
小青竜湯に五虎湯の併用した竜虎湯を使う場合があります。

大阪の耳鼻科の先生が考えられた処方で高い治療効果を得ていると聞いています。

花粉のシーズンはもう少し続きます。
お困りの方はご相談ください。

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花粉症に効果ある漢方薬は??

花粉症の方には辛いシーズンがやってきました。

昨年は花粉の飛散量はとても少なかったのですが、
今年は昨年よりは多く、例年に比べると少ないという予想になっています。
漢方薬では何がよく使われているかというと、
現代医学的手法であるランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)によって
評価の確定している小青竜湯が用いられることが多いです。


小青竜湯の使用目標がくしゃみ・鼻水・鼻づまり(花粉症の3大症状)という点からも理解できます。
小青竜湯では効果がいまひとつという患者さんもいらっしゃいます。
そういう時に、漢方の考え方が必要になってきます。

つまり陰陽、虚実です。

分り易く言えば、
(陰証)冷えが強ければ、ブシや乾姜の入ったもの、
(陽証)熱感があれば、石膏や黄連の入ったもの、
(虚証)胃腸が弱い方には、麻黄の入ってないものとなります。

つまり、小青竜湯を基本に、
(陰証)冷えの強い方、鼻粘膜も白っぽい方には麻黄附子細辛湯、更に長期には桂枝湯や桂枝加朮附湯
  などを加えていったりします。
(陽証)冷えがなく、鼻粘膜は赤く炎症の強い方には大青竜湯(エキス剤では越婢加朮湯と麻黄湯を
  合せて飲む)や桂枝二越婢一湯(エキス剤では越婢加朮湯と桂枝湯を合せて飲む)が適応します。
さらに
(虚証)麻黄が胃にもたれるという方は、苓甘姜味辛夏仁湯となります。

更に慢性鼻炎の病態になってきますと、
葛根湯や葛根湯加川芎辛夷、辛夷清肺湯や排膿散及湯、荊芥連翹湯や柴胡を含む漢方薬も
使われたりもします。

現代病の一つ、花粉症に悩む方は年々増えています。

麻黄の入ったものは即効性がありますし、眠くなるという不快感もありませんので、
ぜひ自分にあった漢方薬を見つけてみて下さい。

kafunsyou

最も売れている漢方薬って知ってますか?

大建中湯(ダイケンチュウトウ)という漢方薬があります。

今、日本で一番使われている漢方薬です。

構成はニンジン(人参)、サンショ(山椒)、ショウガ(乾姜(かんきょう)生姜(しょうきょう)を蒸して乾燥させたもので
温める作用がより強力になる)で非常にシンプルな漢方薬です。

但し、これにコウイ(膠飴)と呼ばれる飴が10g入りますので量が多くなります。

通常の漢方薬7.5gの倍量の1回2包、1日6包となります。

1日量15g中10gは飴ということです。


大建中湯が最もよく使われている科は外科です。

開腹術をすると、どうしても腸管が癒着しやすくなります。
これを大建中湯は防ぐ作用があるのです。

具体的には、腸管の動きを良くする、お腹を温める(腸管の血流を改善する)、
炎症を抑えるなどといった作用を持っています。

内科的には便通異常にもよく使われます。
便秘には一般的に大黄(だいおう)の主成分から抽出されたセンノシドを加工したものが良く使われます。

刺激性下剤に分類されるものです。刺激性下剤は確かに効きますが、
慢性の便秘の方では、これを常用すると次第に効きが悪くなり飲む量ばかり増えていきます。
これを耐性と言います。
こうした難治性の便秘に対して大建中湯は有効な方も多くいらっしゃいます。
また、腹診(漢方的な診察でお腹を触って診察すること)で、
お臍周りに冷えのある方では、便秘でも下痢でも効果があります。
似た名前の漢方薬で小建中湯(ショウケンチュウトウ)というのがあります。
飴が入っている点は同じですが、
その構成は桂皮けいひしゃくやく大棗たいそうかんぞう生姜しょうきょうと全く違います。

小児科でよく使われており、お腹を痛がる虚弱なこどもの漢方薬です。
名前は似て非なるものなので、合せて中建中湯として使われている先生もいらっしゃいます。

今、大建中湯は、術後のイレウスやクローン病を対象に米国でも臨床試験が行われています。
これまでの純粋な化合物に対し、多彩な作用を持つ複合物に対する期待も高まっています。

漢方薬はまだまだ解らないことだらけで、生薬一つをとっても多くの成分が抽出されます。

それを複数組み合わせているわけですから尚更複雑です。

もっと漢方薬が役に立つように、今後の研究に期待するところです。

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