広島県ではまだまだ風邪は流行っていませんが、
今回は咳の病態と漢方治療について紹介します。
咳嗽は、気道内に侵入した(吸い込まれた)異物や貯留した分泌物を
外に排除しようとする生体の防衛反応です。
過剰な咳は止めなければいけませんが、高齢者などは誤嚥を防ぐためにも
咳反射は必要になります。
使用頻度の高いのは中枢性鎮咳薬ですが、
安易に用いると必要な咳をも抑制してしまうことがあります。
咳の病態は原因を見極めてそれに応じた治療が必要になってきます。
咳嗽は湿性咳嗽や乾性咳嗽といった、喀痰の有無によって分類されます。
湿性咳嗽
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咳嗽のたびに喀痰を伴う
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乾性咳嗽
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喀痰を伴わないか、少量の粘液性喀痰のみを伴う
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漢方治療は
①炎症の有無、②乾性か湿性か、③喀痰は水様性か、粘稠性か、あるいは膿性か
などを鑑別のポイントとして処方を決定します。
今回は湿性咳嗽、乾性咳嗽でファーストチョイスとされている漢方薬を紹介します。
① 湿性咳嗽 ~小青竜湯~
漢方医学では、『湿』という病態は痰を伴う咳はもちろん、
鼻汁、『水』による冷えなども含みます。
このような場合、温めると改善することがあるので小青竜湯を用います。
イメージとしては、お風呂に入ると症状が軽快する人には高い効果が得られます。
麻黄、桂皮、細辛、乾姜、五味子
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温めながら余分な『水』を除き、鎮咳去痰する。
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半夏
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去痰作用により、水様性喀痰などを改善する。
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② 乾性咳嗽 ~麦門冬湯~
『乾』という病態は、気道を潤す『水(=陰)』が不足し、
気道過敏や弱い炎症が発症していると考えます。
そういった場合には『陰』を補う麦門冬湯を用います。
感冒罹患後の咳だけが残る症状などが空咳、いわゆる乾性咳嗽です。
麦門冬、粳米、人参、甘草
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気道を潤して乾性咳嗽を抑える
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半夏
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鎮咳・去痰作用により、気道にこびりついた痰を取り除いて鎮咳する。
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今回は紹介しませんでしたが、炎症の強弱、喀痰の性状を見て処方を選択することがありますので、
気になられた方はぜひ相談してみてくださいね。