多発する口内炎に

4月に入り、だんだんと暖かくなってきました。
今年は例年より夏に近い気温ですので、どんな服を着ればよいか、困っている方も多いのではないのでしょうか?

今回は、こんな季節の変わり目に多くみられる『口内炎』について紹介したいと思います。
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口内炎の発症には様々な原因があります。食事をしているときに間違って舌や頬を噛んでしまったり、
ストレスや疲れによる免疫力の低下、睡眠不足、栄養不足(ビタミンB2不足など)、口内の不衛生などがあります。
また、胃腸の働きが弱っているとその影響が口腔内の炎症として表れることもあります。
口の中に異物があるのですからどうしても気になってしまいますよね。ひどい場合には2週間ほども完治せず、
毎日の食事や会話のたびに苦痛に顔を歪めてしまうこともあるでしょう。


 
最近ではドラッグストアで塗り薬や貼付剤などが売られており、どうしても辛いときには手軽に対処出来るようになっています。
しかし何度も頻発してしまうケースもあるかと思います。漢方薬の半夏瀉(はんげしゃ)(しん)(とう)という処方は、
口腔内の粘膜組織の修復能を高める作用があると言われています。以下は、主な構成生薬の働きを表しています。
 
生薬
薬能
黄連、黄
口内炎の炎症を改善(抗炎症作用)
乾姜
下部消化管を温め、冷えや下痢を改善
半夏
吐き気止め
人参、甘草
消化管の機能を改善
 
半夏瀉心湯の名前にもあるように、『瀉心』というのは、熱や炎症、ストレスの影響により
発症している症状を改善するという意味を持ちます。
ですので、ストレスが原因の口内炎にも対応できると考えられます。
そして口内炎の増悪には、口腔内細菌(主にグラム陰性菌)が原因だと考えられておりますが、
この半夏瀉心湯にはグラム陰性菌の殺菌と発育を抑える作用があります。

高齢者の方は誤嚥性肺炎を悪化させないために口腔内を清潔に保つ必要がありますので、
口内炎が頻発するケースには適しているでしょう。
半夏瀉心湯をうがいの要領で服用すると効果が高いので、治りづらい口内炎には是非実践してみて下さいね。

重症化した花粉症に

今年は暖冬でしたので、花粉の飛散量も例年より多いと言われています。
花粉症もちの方は、最近は特にしんどい日々を過ごされているのではないでしょうか?
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花粉症の症状で辛いのは、目のかゆみ、頻発するくしゃみ、かんでもかんでも止まらない鼻汁…。
人によって様々ではありますが、これらの症状が特に辛いことでしょう。
 
花粉症の際、どうしても鼻をかむ回数が多くなったり、強くかんでしまったりしませんか?
正しいかみ方をしないと鼻の粘膜を傷つけてしまったり、急性中耳炎を起こしてしまう可能性があるので注意して下さいね。
また、アレルギー反応はもちろん、炎症によって鼻粘膜の浮腫が起こり鼻づまりを発症します。
この鼻づまりが花粉症の症状を重症化させる要因なのです。
 
鼻汁は通常、前(鼻の孔)からでる『前鼻漏』とのどに落ちる『後鼻漏』として排出されます。
人間は誰しも1日1Lのサラサラした鼻汁を産生していますが、通常はのどに落ちている為気になりません。
しかし風邪や花粉症の場合では、鼻汁の量が過剰になったり、ネバネバした鼻汁が排出される
ので不快な症状を呈します。
後鼻漏では、鼻づまりだけではなく喉の不快感などを伴うため、睡眠不足になったり
体の不調をきたしやすくなるのです。
 
そこで、今回紹介するのは『葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)』という漢方薬です。
この漢方薬はその名のとおり、『葛根湯(かっこんとう)』がベースとなっています。
葛根湯とは皆さんご周知のとおり、風邪の漢方薬です。
これに、川芎(せんきゅう)辛夷(しんい)という生薬を加えて鼻づまりを改善する漢方薬として
使われています。
川芎(せんきゅう)には、
痛みやかゆみを抑える『去風(きょふう)』と、化膿に対応する『排膿(はいのう)』
という薬能を有しています。
そして、辛夷には、詰まったものを開通させる『通竅(つうきょう)』といわれる薬能をもっています。
 
鼻づまりが起こると、首や肩にコリを生じたり、頭痛を起こすことがあります。
この症状、風邪の初期症状に似ていませんか?
葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)は、“葛根湯を飲みたくなってしまうような
急性疾患(悪寒、発熱、無汗、項背部のコリ)に加えて、頭痛が強く、鼻づまりや鼻汁に難渋している”
というのが適応症となります。
鼻汁や鼻づまりの原因となる感染症や炎症に対しては葛根湯の部分が対応し、
川芎(せんきゅう)辛夷(しんい)は鼻汁や鼻づまり自体に対応する、という構成になっています。
 
ですので、花粉症が少し悪化し始め、風邪みたいな症状になってきたなと感じたら是非試してみて下さい。

かゆみ・皮膚掻痒症

皆様、新年明けましておめでとうございます。良いお正月を過ごされましたでしょうか?
広島県も雪が各地で降り積もり、いよいよ冬本番となってきました。
前回は咳に用いる漢方薬を紹介しました。
今回も冬の季節に特に多くなる、『かゆみ』をテーマに、紹介していきます。
冬の乾いた外気と、皮脂の欠乏、発汗の低下などが合わさって起こる皮膚の病気を
『皮膚(ひふ)掻痒症(そうようしょう)』といいます。
皮脂の分泌が低下する高齢者や妊娠中の女性に多くみられ、その名の通り強いかゆみが生じます。
外部から皮膚を守っている角層のバリア機能が乾燥によって失われる為、
知覚神経が刺激を受けやすくなり、かゆみを生じるのです。
 
一般的な治療では、皮膚の乾燥を防ぐために保湿剤のクリームやローションを塗ります。
また、かゆみがひどい場合にはステロイド剤、かゆみ止めを用いることもありますが、
十分な効果が得られない時もあります。
すぐに出来る対策としては、室内環境を整えることです。
暖房などを使う際には、加湿をし、室内の湿度を一定に保つよう心掛けて下さい。
 しかし、かゆみは痛みと違って、掻くという行為で解消できる症状です。
しかし我慢できずに掻き続けてしまうと、それがまたかゆみを強め、悪循環になってしまいます。
強いかゆみはやがて大きなストレスとなり、睡眠障害やイライラを引き起こすこともあります。
 
そんな辛いかゆみに対して、通常治療の効果を高められるような漢方薬を紹介します。

当帰飲子(とうきいんし)・・・・・・皮膚に潤いがなく乾燥して、かゆみがある慢性の皮膚疾患に!
元来、かゆみ・腫れ・かさぶた等の症状を伴う皮膚炎に使用されていました。
14世紀以降は、乾燥性の皮膚炎に良いとされ、特に虚証タイプ(高齢者などの虚弱な方)向けに
使われてきました。
この漢方薬には血流を良くし、皮膚のバリア機能の回復をはかる『四物湯』という漢方薬をベースに、
皮膚を強くしたり、かゆみ・痛み止めの役割を果たす生薬が加わっています。
皮膚のターンオーバーが出来ない状態に、外用剤の機能を高める役目をします。
 
また、精神不安・不眠症などのメンタル的な要素が加わった場合には
加味帰脾(かみきひ)(とう)という漢方薬もおすすめします。こちらには、精神を安定化させる生薬も含まれています。

かゆみが我慢できない、背中などがかゆくても手が届かないなどといった悩みがある方は
是非相談して下さい。

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咳・のどの痛み

だんだんと寒くなってきました。
ニュースでは、ようやく広島県で初雪が観測されたとの報道がありました。
クリスマスも控えておりますし、いよいよ冬本番となってくることでしょう。
服装や体調管理には気をつけて下さい。
年末の多忙な時期に急な気候の変化が重なり、体調を崩されてしまっている方も多くいらっしゃるのでは
ないでしょうか?

今回は咳やのどの痛みに用いる漢方薬を紹介します。
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1.風邪の後に咳だけが残ってしまう
風邪のつらい症状の一つである、咳。なかなか完治しないな、と思われている方も多いと思います。
咳は気道粘膜への刺激やウイルスなどの異物を除去しようとする生体の防御反応です。
しかし、炎症が長引くと、気道の乾燥を防ぐために分泌されていた痰が十分に分泌されなくなって
しまったり、粘稠度が増して切れにくくなるなどの乾性咳嗽を呈することがあります。
熱や鼻水などの症状は治まっても、
咳が残ってしまうとそれだけでも体力を消耗してしまいますよね。
そんな不快な症状を改善するのが『麦門(ばくもん)(どう)(とう)』という漢方薬です。
この薬は、気道粘膜を潤すものが不足し、気道過敏や弱い炎症が発症しているときに、
潤いを与えて痰を切れやすくし、咳を止める効果があります。
口腔内乾燥症でも用いられたりする漢方薬です。
‟咳は1回あたり、約2kcalを消費する“と言われています。
精神的・身体的な負担も多いので、無理をせずに気軽に相談して下さいね。
 
2.のどの腫れと痛み
こちらもつらい症状です。中には気になって眠れなくなるケースもありますよね。
『桔梗(ききょう)(とう)』という漢方薬は、扁桃やその周辺で起こっているのどの腫れや痛みを和らげます。
桔梗という生薬には、扁桃の炎症を和らげ、化膿を防ぐ薬能があります。
こむら返りの薬でお馴染みの『芍薬甘(しゃくやくかん)(ぞう)(とう)』と同様に、2つの生薬で構成される漢方薬ですので、
効き目もシャープです。
桔梗湯はそのまま飲んでしまうのではなく、ぬるま湯に溶かしてから口の中で軽くうがいをし、
吐き出さずに飲み込みます。
そうすると成分が患部に当たるのでより効果が増します。
出来る方は、顆粒剤のまま口の中でコロコロ転がす、という方法もありますので
好きな方でお試しください。
ドラッグストアでは桔梗湯のトローチも置いてありますので気軽に手に取ってみて下さい。
 
今回ご紹介した漢方薬はどちらも甘く、飲みやすい味になっています。

気になる症状があれば、気軽に相談して下さいね。
 

漢方医学の基本概念~寒・熱~

今回は「寒熱(かんねつ)」について紹介しますが、さほど難しい概念ではありません。
患者さん本人が寒いと感じ、温めると楽になるのか、逆に熱いと感じ、
冷やすと楽になるのかという自覚的な観点に着目します。
前者を「寒証(かんしょう)」、後者を「熱証(ねつしょう)」といい、前回ご紹介した「証」のひとつです。
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寒証
 冷え、冷感を訴える。風邪の引き初めに悪寒を強く感じるが熱はあまり上がらない等
熱証
 炎症、発熱、熱感、発赤等を訴える。また、精神的な興奮により熱感やのぼせを示す等 
 
1.「寒証」
「寒証」の基本治療は、温めることです(()陽散(ようさん)(かん)といいます)。
附子(ぶし)桂皮(けいひ)乾姜(かんきょう)呉茱萸(ごしゅゆ)山椒(さんしょう)等の生薬は身体の深部を温めます。
また、温めて発汗を促す(解表(げひょう)(やく)といいます)()(おう)(さい)(しん)などは、皮膚や筋肉、関節など
身体の外表部である「表」の血行を改善して温めます。
これらの治療方法は「寒証」の原因が外からの寒気である「外因」である場合、
いわゆる急性期の症状を呈する場合です。
しかし、その原因が身体内部の問題である「内因」の場合は慢性の症状となります。
そういった場合は「内因」を改善しなければ根本的な治療にはなりません。
以下のような場合が考えられます。
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2.「熱証」
「熱証」の基本治療は、冷やすことです(清熱(せいねつ)といいます)。
急性期に強い熱状を呈している場合は、石膏(せっこう)知母(ちも)黄連(おうれん)黄(おうごん)(さい)()等の「清熱薬」で
治療します。
これらの生薬は精神的な興奮による熱感にも対応します。
また、熱や、炎症が消化管に入り便秘を発症している場合は「清熱・瀉下」の薬能をもつ
大黄、芒硝を配合した「(じょう)()湯類(とうるい)」を使用します。
しかし、「寒証」の場合と同様に、「熱証」の原因が内因である場合は慢性症状となり、
根本的な治療が必要となります。
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冬に近づくにつれて冷えが気になる季節となります。
この寒熱の概念を理解することが、漢方薬の処方選択に役立つことになるでしょう。

漢方医学の基本概念~虚・実~

 今回は漢方医学の基本概念と言われている「虚実(きょじつ)」について紹介します。
現在の日本漢方では漢方薬を選ぶ前に患者さんの現在の病態を把握すること、
いわゆる「証」を診ることが前提となっています「証」というものにもさまざまな種類があり、そのうちのひとつが「虚実」です。

皆さんのなかには、「実証」、「虚証」というワードを耳にされたことがあるかもしれませんね。

少し簡単に紹介しますと・・・ 
実証
体格がよい(腹壁が厚い)、筋肉質、免疫力が充実している、若年者に多い
虚証
痩せ型(腹壁が薄い)、免疫力が乏しい、高齢者に多い
となります。
これは大まかなイメージであり捉え方は一つに定まっているわけではありません。

中国最古の医学書である『黄帝内(こうていだい)(けい)』に記載のある2つの代表的な考え方を簡単に解説します。

1.「虚」は不足、「実」は過剰
黄帝内(こうていだい)(けい)』には“虚するものはこれを補い、実するものはこれを瀉す”と記載されています。
主語に〈栄養〉というワードで考えてみると、「虚」は栄養失調、「実」は肥満と考えます。
これが日本漢方で使われる「虚実」の一般的イメージです。また、この主語にはいろいろな
語句を入れることが出来ます。
〈温かさ〉を主語にすると、冷えや熱とイメージ出来ますよね。
これらを一般的な「虚実」のイメージと区別するために、
〈冷えが強いもの〉を「陽虚」、〈熱が強いもの〉を「実熱」と表します。
 
2.「虚」は弱い症状、「実」は強い症状
黄帝内(こうていだい)(けい)』にはもう一つ、『病気が盛んであれば実、抗病反応や生理機能の低下は虚』という
記載があります。
つまり、病気にも、生体側の抗病反応にも“強・弱”があり、そのため抗病反応としての
病態や症状に“強・弱”が生じると理解できます。
病気が弱く、患者さんの抗病反応が充実している(=実証)場合は病気が発症しませんし、
病気も抗病反応も弱い(患者さんは虚証)場合は、日和見感染として発症してしまう事でしょう。
 
 すなわち、「虚実」は、生体そのものの状態であり、病勢であり、抗病反応であり、
それぞれから生じる症状に着目した概念ということになります。
少し判断に困るかもしれませんが、こういった病態把握の方法があるから、
漢方医学はオーダーメイド医療と呼ばれているのでしょう。

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漢方医学の概論を学ぼう!

これまでは漢方薬について多く取り上げてきましたが、今回からその基となる漢方医学の概論や歴史に
ついて紹介していきたいと思います。
このコラムをご覧になっている皆様の中には、漢方医学が中国のものだと思われている方もいらっしゃる
かもしれません。
しかし漢方医学は、我が国独自で発展した医学なのです。yakuzaishi
 
1.漢方医学とはなにか?
 漢方医学は中国が起源の伝統医学ではありますが、中国から直接あるいは
朝鮮半島経由で伝来し、日本で独自の発達を遂げたものです。
中国を起源とする伝統医学は他にもあり、現在の中国では中医学、
韓国では韓医学、そして日本では漢方医学、と呼び方にも違いがあります。
江戸中期になると、オランダ医学(現在でいう西洋医学)が伝来し、
オランダを表す略字「蘭」の字を用いて蘭方と呼ばれるようになりました。
もともとは漢方医学という呼称は存在しませんでしたが、そういった歴史が
あったため従来の医学と区別をつけるために「漢方医学」と呼ばれるように
なったのです。
 ※「方」とは:元来、不老長寿の術を指し、その意が転じて薬の処方も指すようになった
 
2.西洋医学との違い
 西洋医学が自然科学を基盤にして進化してきたのに対し、漢方医学は、古代中国の哲学思想と集積された
臨床経験を基盤に発達してきたため、両者は様々な点で異なります。
表のように、漢方薬は色々な生薬が組み合わさって出来る複合成分であるため、
作用機序(さようきじょ)を解明しづらい部分はありますが、作用はマイルドで副作用も少ないという特徴があります。
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3.漢方医学をなぜ活用するのか
 表にまとめてみましたが、この他にも最近は漢方薬の薬理作用が科学的に証明されはじめてきたため、
医師が安心して使える環境が整ってきたという意見もあります。
 
今後は、西洋医学と漢方医学の互いの強みと弱みを補い合った医療体系がさらに普及していけばよいと思います。
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夏場こそ「こむら返り」に注意!

呉市では34℃~36℃の猛暑が続いています。
この季節は夏バテ・熱中症はもちろん、こむら返りを起こしやすいといった危険性もあります。
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特に夏場は、炎天下の中で労働されている人が水分や電解質の補給を怠った際に攣りやすくなる、
また、海水浴・プールなどに行って足を攣ってしまう等、色々な場面で遭遇することでしょう。
 
そのような事態に使って頂きたいのが芍薬甘(しゃくやくかん)(ぞう)(とう)という漢方薬です。
漢方薬は効果が現われるのが遅いというイメージがありますが、芍薬甘(しゃくやくかん)(ぞう)(とう)は即効性が期待出来ます。
漢方薬の中には急性期に適している処方があります。その判断材料となるのが、構成生薬の数です。
 
一般的には7つの生薬(=7味)以下のものは比較的早く効果が現われるといわれています。
したがって、芍薬甘(しゃくやくかん)(ぞう)(とう)は芍薬と甘草の2味で構成されているので比較的即効性があるとイメージ出来るでしょう。
また、芍薬甘(しゃくやくかん)(ぞう)(とう)は特に頻用されている漢方薬ですので西洋医学的にも即効性があるという事が研究で明らかになってきています。
こむら返りの中でも、特にふくらはぎの痙攣には約4分程度で効果があるというデータが出ています。
 
しかし、それ程キレ味の良い漢方薬には服用においての注意が存在します。甘草という生薬です。
これは漢方薬のおおよそ7割に含まれており、また、身近な食品にも甘味料として使われています(醤油、スナック菓子、タバコ等)。
ですので、知らず知らずのうちに沢山摂取してしまっている危険性があるのです。
甘草は低カリウム血症の発現要因ですので、十分な観察が必要となってきます。
低カリウム血症を引き起こしやすいとされている、ご高齢の方女性、甘草含有漢方薬の長期的な服用には注意し、
定期的な血液検査のチェックや初期症状を見逃さないように心がけましょう。
 ※初期症状…全身倦怠感、脱力感、血圧上昇、浮腫 等
 
芍薬甘(しゃくやくかん)(ぞう)(とう)は即効性もあり効果が期待できる漢方薬ですので、正しい服用方法で使って頂きたいものです。
漫然的に服用するのではなく、攣った時・攣りそうなときに服用する、夜眠る前に1包飲むなどの工夫が必要です。
また、芍薬甘(しゃくやくかん)(ぞう)(とう)の服用をやめるとこむら返りが起こってしまって困るというような方は、
末梢の血流が悪くなっていることが原因になっている可能性があるので()(けい)(かっ)(けつ)(とう)のような血流改善の漢方薬に変えてみてもよいかもしれません。

夏の暑さに負けない!

7月に入り、熱中症になる人が増えています。
すでに、広島県内においておよそ400人の患者さんが救急搬送されているという現状です。
梅雨の明けていない高温多湿のこの時期では、熱中症への警戒がより必要です。
「まだ大丈夫!」と無理をせずに、水分補給と暑さを避ける対策を小まめにして下さいね。 
しかし、それでも体調不良を避けられない場合があります。
そんな時に力になってくれるのが『補中(ほちゅう)(えっ)()(とう)』、『清暑(せいしょ)(えっ)()(とう)』という漢方薬です。
この時期になると毎年決まって体調を崩す方、既に夏バテ傾向にある方必見です!                       
 
1.補中(ほちゅう)(えっ)()(とう)
「中(胃腸機能)を補い、元気を益す」というネーミングの漢方薬です。
胃腸機能が低下して倦怠感を訴え、免疫力も低下している場合によいとされます。
もともと体力のない方が暑い夏を乗り越えていただくための処方です。
暑さで微熱・寝汗が出てきたら処方するタイミングとなります。
だるい、疲れた、しんどい等の倦怠感や、食べる気も起らないといった場合に使用してみて下さい。
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2.清暑(せいしょ)(えっ)()(とう)
上述した補中益気湯がベースとなり、「暑さを清めて元気を益す」という夏に特化した漢方薬です。
通常は普通に過ごすことが出来る方が、暑いために体調を崩した時に使う処方です。
麦門冬、五味子が体に足りない水分を補い、黄柏が火照った体を冷まします。
また、夏に沢山水分を取ってお腹が冷えて下痢をしてしまう場合に対しても効果が期待出来ます。
真夏に肉体労働者の方々に協力を頂いて行われた報告では、肉体労働時の体温上昇を軽減しています。
じっとしていても汗がジクジク出る、のどが渇く、下痢をしやすいと言った場合に使用してみて下さい。
 
点滴をしてもなかなかだるさが取れないといった場合に対しても、この2つの漢方薬をどちらか飲めばスッキリすることでしょう。
夏の季節には上手く漢方薬を利用してみて下さいね。

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‘よく眠れない…’が続くあなたに

暑さや湿気に悩まされる季節となってきましたね。
特に夜は空調機をつけるまでもないですが、
蒸し暑くて寝苦しいなと感じる日が多いのではないでしょうか?
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今回は長期的に睡眠で悩まれている、そんな方に試して頂きたい漢方薬を紹介します。
しかし、漢方薬には、飲んですぐに眠気が期待できる『睡眠導入剤』のようなものはありません。
漢方薬は睡眠導入剤と違い、1日3包の服用により心身のバランスを整えるので『睡眠の質』を改善、
つまり『ノンレム睡眠を増やす』ということが最近明らかになってきています。
なので、『眠れないからこの漢方だ!!』という決まりの処方はありませんが、
今回は一般的によく用いられている漢方薬を例に挙げてみます。
 
1.抑(よく)肝散(かんさん) ((よく)肝散(かんさん)加陳皮半(かちんぴはん)())
興奮しやすい、神経が高ぶりやすい場合に用いられる処方で、最近では認知症の周辺症状に対しても
使用されることの多い処方です。元々は小児の夜泣き、いわゆる癇の高ぶりを抑えるために使用され
てきました。不安で眠れないというより、イライラして眠れない場合に有効です。
 
2.酸(さん)(そう)(にん)(とう)
心も体も疲れ切っているのに、逆に気が高ぶってしまって眠れない場合に有効です。
不眠で用いられる漢方薬のファーストチョイスといわれている漢方薬です。
ノイローゼ気味な方は良いかもしれません。
 
3.加味帰脾(かみきひ)(とう)
上記で見られるような症状に加え、さらに不安感が強い、元気がない、食欲不振、強いストレス
などの症状が見られる場合に有効です。また顔色が悪い、もともと貧血気味な方は良いかもしれません。
 
以上ご参考にしていただければと存じます。