便秘に使われる漢方薬について

今回は便秘に使われる漢方薬について紹介します。
 
便秘に用いられる漢方薬は1種類だけではなく、下剤としての強さが幅広く多くの種類が
あります。
①大腸を刺激する刺激性下剤としての役割をもつ生薬:大黄(だいおう)(主成分:センノシド)
②便を柔らかくする塩基性下剤としての役割をもつ生薬:芒硝(ぼうしょう)
③小腸の水分分泌を促進する役割をもつ生薬:()(おう)麻子(まし)(にん)(きょう)(にん)
 
漢方医学的には、
①と②の薬能をもつ生薬の分類を「攻下薬」、
③の薬能をもつ生薬の分類を「潤下薬」といいます。

ちなみにですが、大黄と芒硝の組み合わせをもつ漢方薬を、(じょう)()(とう)類といいます。
(じょう)()(とう)類は下剤の漢方薬なかでも特に強い作用をもつので、
お腹の弱い方は下しやすくなる恐れがあります。
 
1. 大黄甘(だいおうかん)(ぞう)(とう)
 大黄と甘草の2味から成る漢方薬で、切れ味がシャープ。
  西洋薬の下剤であるセンノシドにとても良く似ています。
  長期連用には注意が必要です。
 
2. 麻子(まし)(にん)(がん)
 刺激性下剤である大黄、潤腸作用をもつ麻子仁、杏仁を含みます。
  便に潤いを持たせ大腸を動かしながら出す漢方薬ですので、乾燥便や兎糞便に
  対して用います。低K血症の恐れのある甘草や胃もたれの原因になる地黄が
  含まれていないので、高齢者に優しく安全性の高い漢方薬です。
 
3. (じゅん)(ちょう)(とう)
 麻子仁丸に非常に類似している漢方薬で、乾燥便や兎糞便に対して用います。
  麻子仁丸よりも大黄の含有量は少ないので、作用は少し弱めです。
  地黄を含みます。麻子仁丸でよく効きすぎる場合は潤腸湯で様子を見ます。
 
4. 防風通(ぼうふうつう)聖散(しょうさん)
 これは肥満症の漢方薬として有名ですが、大黄や芒硝を含むので下剤としても用います。
  漢方医学的には、体内に溜まった毒素を便として排出するという考え方です。
  ですので、中性脂肪の多い肥満症の方や化膿しやすい皮膚疾患を持つ方に用いられます。
 
5. 大建中(だいけんちゅう)(とう)
 人参(にんじん)山椒(さんしょう)乾姜(かんきょう)(こう)()の4味から成る漢方薬で、下剤を一つも含みません。
  ですが、腸管の血流量を増加させるため、腸の動きがよくなることから
  便秘にも応用されるケースが多くあります。
  冷えや腹痛があるときにはお湯に溶かすとすぐに溶けるので、比較的飲みやすい漢方薬です。
  乾姜は生姜を蒸して乾燥させたものなので、味としては生姜湯のようなものです。
 
今回は便秘に使われる漢方薬について紹介しました。
ご自分の体調や症状にあった漢方薬を探して下さいね。

benpi
 

水の異常に使う漢方薬!

漢方では、生体を維持する循環要素として、
「気」、「血」、「水」といった考え方があることを以前書きましたが、
今回は「水」の異常について紹介します。

ヒトは1日に2Lもの水を体外に放出しており、それを食物や飲料によって補っています。
水は私たちが生きていく上で欠かせないものです。

その水の流れが滞り、体のどこかで過剰となったり、偏在したりすることを
漢方では「水滞」あるいは「水毒」といって治療の対象となります。

主な症候は、以下の通りです。
①   分泌異常:水様性鼻汁、喀痰、帯下、浸出液、尿利の減少・過多、水様下痢
②   停滞:浮腫、胸水、腹水、関節液貯留、腫脹、胃内停水、腹中雷鳴
③   自覚症状:動悸、めまい感、回転性眩暈、起立性眩暈、耳鳴、頭痛、口渇、嘔吐、咳嗽、喘鳴
水毒の診断基準(総計13点以上を水毒とする)
身体の重い感じ
悪心・嘔吐
拍動性の頭痛
腸のグル音の亢進
頭重感
朝のこわばり
車酔いしやすい
浮腫傾向・胃部振水音
15
めまい・めまい感
胸水・心のう水・腹水
15
立ちくらみ
臍上悸(腹大動脈の拍動が触れる)
水様の鼻汁
水瀉性下痢
唾液分泌過多
尿量減少
泡沫状の喀痰
多尿


治療生薬は、茯苓、蒼朮、白朮、猪苓、沢瀉、防已、黄耆、細辛、麻黄、杏仁、半夏、木通などで、
利水薬と呼ばれます。

そして代表的な方剤は五苓散です。


今年は過去2番目の早さで梅雨入りしました。

じめじめして嫌な季節ですね!天候の変化・雨降り前に頭が痛い。

めまいがするなど、これも東洋医学では水毒と考え五苓散が使われます。

他にも二日酔い、車酔い、特に子どもに多い嘔吐下痢などに役立つ漢方薬なので
手許に置いておきたい薬です。

mizudoku

めまいに使う漢方薬!

めまいといっても色々なタイプのものがあります。

まずは原因の詳細な鑑別よりも、重大な疾患によるものかどうかの鑑別が大事です。

つまり命に関わるようなもの、小脳出血やくも膜下出血、脳幹梗塞などによるものかどうかの
鑑別です。

でも大半のめまいは危険な疾患には起因せず、良性発作性頭位めまい症で、
医者の力量によらず数週間で自然軽快するものです。
基本的にはめまい体操などで良くなっていくのですが、症状を軽減するために薬剤が使われる
訳ですが、西洋医学では効果不十分な場合もあり、そこに漢方の出番があります。

漢方では、生体を維持する循環要素として、「気」、「血」、「水」といった概念があります。

「水」とは血液以外の液体を差し、その水の偏在を「水毒」と言います。
代表的な病態には、浮腫、胸水など体腔内の異常な貯留、水の分布異常に伴う口渇
などがあります。

次に鼻水、水様の痰や帯下、尿利異常、水様下痢などの排泄異常があります。

そして内耳関連の症状ではめまい・ふらつき・耳鳴りなどが挙げられ、
内耳関連の病気は水の異常と捉えることが多いのです。
さらさらと流れる川の水は綺麗ですが、スムーズに流れない川の水はゴミも
溜まり淀んでいますよね。それと全く同じイメージなのが水毒です。
それではめまいの時に用いられる代表的な漢方薬について紹介します。
漢方ではめまいの症状に応じて薬が選ばれます。

まずは起立性のめまい、立ちくらみのようなめまいには苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)が、
回転性のめまいでは沢瀉(たくしゃ)(とう)(エキス剤がないため五苓散(ごれいさん)で代用)、
歩く時浮動感があるようなめまいには真武湯(しんぶとう)です。
また普段から胃腸の弱い方には半夏白朮天麻湯(はんげじゃくじゅつてんまとう)が選ばれます。
五苓散は二日酔いの薬としても有名ですが、水毒の最も代表的な薬で、
体内の水分代謝異常を調節し、浮腫状態では利尿作用、脱水状態では抗利尿作用を発揮する
ことが研究で分ってきており、水毒を伴う多くの疾患に応用されています。

memai

嫌な季節・・・花粉、黄砂そしてPM2.5

花粉症でツライ方も多いかもしれませんが、気になるのは花粉だけではありません。
黄砂、PM2.5も気になっている方も多いのではないでしょうか?
PM2.5とは文字通り、2.5μg/㎡以下の微粒子の総称です(1μm=0.001㎜)。
これは髪の毛の直径の1/30程度、スギ花粉の1/10程度の大きさで非常に小さく、
肺の奥まで入りやすいので、花粉症を増悪させるだけでなく、
肺がんなどへの影響が懸念されていますが、詳しくはまだ解っていません。

環境省の定める基準値は、1日平均で35μg/㎡以下となっていますが、
注意喚起のための基準値は70μg/㎡以上となっています。

漢方薬はPM2.5に効くの?なんて聞かれそうですが、
漢方薬は基本的には、病原に対する生態防御反応を支える薬です。

くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咽喉痛、咳、痰などの生態防御反応に有効です。
さて、花粉症のファーストチョイスは先月、お話した小青(しょうせい)(りゅう)(とう)です。

くしゃみ・鼻水・鼻づまりが使用目標となります。

平素から冷えの強い方には麻黄附(まおうぶ)子細(しさい)(しん)(とう)、逆に熱感の強い方(炎症の強い方)には
越婢加朮(えっぴかじゅつ)(とう)が使い分けられます。
これらはいずれも()(おう)という生薬が主薬となっています。
麻黄の主成分はエフェドリンですので、気管支拡張作用があり、
交感神経刺激作用もあるので眠くなりません。
むしろ元気になった気がします。

また元来、胃腸虚弱で麻黄が飲めない方には苓甘姜味(りょうかんきょうみ)(しん)()(にん)(とう)といった薬剤が
適応となります。
今年はみなさんがコロナの影響でマスクを着用されているので鼻の症状ではなく
目のかゆみを訴える方もいらっしゃいます。

その場合にも小青竜湯(アレルギー性結膜炎の効能効果あり)や越婢加朮湯が使われます。
(使用のポイントは上記記載)

また、黄砂やPM2.5の影響で鼻の症状だけでなく喉の痛みや咳が出る場合には
小青竜湯に五虎湯の併用した竜虎湯を使う場合があります。

大阪の耳鼻科の先生が考えられた処方で高い治療効果を得ていると聞いています。

花粉のシーズンはもう少し続きます。
お困りの方はご相談ください。

kousa

花粉症に効果ある漢方薬は??

花粉症の方には辛いシーズンがやってきました。

昨年は花粉の飛散量はとても少なかったのですが、
今年は昨年よりは多く、例年に比べると少ないという予想になっています。
漢方薬では何がよく使われているかというと、
現代医学的手法であるランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)によって
評価の確定している小青竜湯が用いられることが多いです。


小青竜湯の使用目標がくしゃみ・鼻水・鼻づまり(花粉症の3大症状)という点からも理解できます。
小青竜湯では効果がいまひとつという患者さんもいらっしゃいます。
そういう時に、漢方の考え方が必要になってきます。

つまり陰陽、虚実です。

分り易く言えば、
(陰証)冷えが強ければ、ブシや乾姜の入ったもの、
(陽証)熱感があれば、石膏や黄連の入ったもの、
(虚証)胃腸が弱い方には、麻黄の入ってないものとなります。

つまり、小青竜湯を基本に、
(陰証)冷えの強い方、鼻粘膜も白っぽい方には麻黄附子細辛湯、更に長期には桂枝湯や桂枝加朮附湯
  などを加えていったりします。
(陽証)冷えがなく、鼻粘膜は赤く炎症の強い方には大青竜湯(エキス剤では越婢加朮湯と麻黄湯を
  合せて飲む)や桂枝二越婢一湯(エキス剤では越婢加朮湯と桂枝湯を合せて飲む)が適応します。
さらに
(虚証)麻黄が胃にもたれるという方は、苓甘姜味辛夏仁湯となります。

更に慢性鼻炎の病態になってきますと、
葛根湯や葛根湯加川芎辛夷、辛夷清肺湯や排膿散及湯、荊芥連翹湯や柴胡を含む漢方薬も
使われたりもします。

現代病の一つ、花粉症に悩む方は年々増えています。

麻黄の入ったものは即効性がありますし、眠くなるという不快感もありませんので、
ぜひ自分にあった漢方薬を見つけてみて下さい。

kafunsyou

最も売れている漢方薬って知ってますか?

大建中湯(ダイケンチュウトウ)という漢方薬があります。

今、日本で一番使われている漢方薬です。

構成はニンジン(人参)、サンショ(山椒)、ショウガ(乾姜(かんきょう)生姜(しょうきょう)を蒸して乾燥させたもので
温める作用がより強力になる)で非常にシンプルな漢方薬です。

但し、これにコウイ(膠飴)と呼ばれる飴が10g入りますので量が多くなります。

通常の漢方薬7.5gの倍量の1回2包、1日6包となります。

1日量15g中10gは飴ということです。


大建中湯が最もよく使われている科は外科です。

開腹術をすると、どうしても腸管が癒着しやすくなります。
これを大建中湯は防ぐ作用があるのです。

具体的には、腸管の動きを良くする、お腹を温める(腸管の血流を改善する)、
炎症を抑えるなどといった作用を持っています。

内科的には便通異常にもよく使われます。
便秘には一般的に大黄(だいおう)の主成分から抽出されたセンノシドを加工したものが良く使われます。

刺激性下剤に分類されるものです。刺激性下剤は確かに効きますが、
慢性の便秘の方では、これを常用すると次第に効きが悪くなり飲む量ばかり増えていきます。
これを耐性と言います。
こうした難治性の便秘に対して大建中湯は有効な方も多くいらっしゃいます。
また、腹診(漢方的な診察でお腹を触って診察すること)で、
お臍周りに冷えのある方では、便秘でも下痢でも効果があります。
似た名前の漢方薬で小建中湯(ショウケンチュウトウ)というのがあります。
飴が入っている点は同じですが、
その構成は桂皮けいひしゃくやく大棗たいそうかんぞう生姜しょうきょうと全く違います。

小児科でよく使われており、お腹を痛がる虚弱なこどもの漢方薬です。
名前は似て非なるものなので、合せて中建中湯として使われている先生もいらっしゃいます。

今、大建中湯は、術後のイレウスやクローン病を対象に米国でも臨床試験が行われています。
これまでの純粋な化合物に対し、多彩な作用を持つ複合物に対する期待も高まっています。

漢方薬はまだまだ解らないことだらけで、生薬一つをとっても多くの成分が抽出されます。

それを複数組み合わせているわけですから尚更複雑です。

もっと漢方薬が役に立つように、今後の研究に期待するところです。

daikentyuutou

漢方薬のおいしい飲み方 ~高齢者向け~

今回は漢方の飲み方を高齢者の方向けにスポットを当てて紹介したいと思います。
 
なぜ漢方薬が高齢者の方によいと言われているか、ご存知ですか?

それは年齢を重ねるにつれて身体機能の低下や病気の長期化など、
同時に複数の病を患う状態になることが多くなってしまうからです。

複数の病を治すためにはいくつもの診療科に通って、何種類もの薬を内服することになる。

漢方薬には様々な心身の変化や不調、病気に対して細かく対応できる処方が沢山あります。

ですから、漢方薬は高齢者の方のこういった悩みを解決できる、とても有用な薬なのです。
 
しかし、いくら有用な薬だといっても、飲みたくないと思ってしまうと意味が無いですよね。

特に高齢者の方の中には、食事の際にむせてしまう方や入れ歯を装着している方など、
漢方薬を飲みたくても飲めないあるいは飲みにくい場合があります。

その場合の対処法についても紹介したいと思います。
 
①  お湯に溶かす、味付けをする
 こちらは、前回紹介した子どもへの飲ませ方とほとんど同様です。
 ほかの方法を挙げるとするならば、お粥や味噌汁に混ぜてみると良いでしょう。
 
②  嚥下困難(食事でむせてしまう)の方には
 嚥下困難の方には、原則、汁物にとろみをつけて固めます。
 とろみは最初スプーン1~2杯から開始し、最大7~8杯まで加えます。
 スプーン7~8杯のとろみを加えると、汁物もほとんどゼリー状に固まってきます。
 お粥などでも嚥下が困難な場合は必要に応じてとろみをつけると良いでしょう。
 とろみ以外では、ゼリー状のオブラートにエキス顆粒を包んで内服させる方法もあります。
 現在は、チョコレート味、イチゴ味など色々な味がついているものまであります。
 
③  入れ歯を装着している方には
 漢方服用の際に入れ歯を外すという方法もありますが、手間な時もありますよね。
 そういった場合には、お湯にエキス顆粒を溶かすという方法がよく使われています。
 他には、オブラートを用いると良いでしょう。
 オブラートにも三角形、四角形、円形、立体などの種類があるので、
 ご自身に合ったものを探してみてください。

R2.12kannpounominikui

身体を温める生薬!附子(ぶし)と乾姜(かんきょう)について

冷えに対して西洋医学では確立した治療法はありません。

あるとすれば下肢末梢の知覚障害、血行障害、運動障害がないことをチェックするくらいです。

大半の場合は(特に若い女性では)、西洋医学的治療の対象を見出せず、
漢方の助けを借りることが多くあります。

漢方医学的な病態(証)の基本的な分類は『陰証』と『陽証』です。

陰証は生体の反応力が低下した病態で、体温産生も不十分なため“冷え性”になりがちです。

漢方医学的には冷えを『寒』といいます。
温かいものを好む、長風呂が好き、夏でも靴下を履いて寝るなどがそうです。

さて実際の冷え症状は、全身型、上熱下寒型、末梢循環不全型と
大きく三つに分類して治療方針を考えます。

「全身型」は、全身的に寒が支配する真性の寒で、陰証の冷えです。
治療は服用することで生体を温める熱薬(附子や乾姜など)を含む方剤を用います。
(桂枝加朮附湯、真武湯、牛車腎気丸他)
附子はトリカブトの根を減毒処理したもので、バーナーで燃やすように
強く体を温める作用や鎮痛作用があります。

乾姜はショウガを蒸して乾燥させたもので
体の中(裏)から温め、元気をつける(補気)作用が強いものです。

この二大熱薬である乾姜と附子に甘草を加えた方剤を四逆湯といい、
温める漢方薬の基本骨格となっています。

尚、四逆湯はエキスにはありません。

名前が似ていますが四逆散(ツムラ35)は全く別の薬なので注意が必要ですね!!

pokapoka

乾燥肌が気になる方へ

10月に入って寒暖差が激しく風邪にも注意が必要ですが、
空気も乾燥し、肌の乾燥も一層気になる季節となりました。

皮膚は表面から、表皮、真皮、皮下組織と分けられますが、
表皮の最も外側にある角層の水分量が低く、皮脂の分泌が少ない状態を乾燥肌(ドライスキン)
といいます。
男性よりも女性に乾燥肌は多く、また加齢にともなって乾燥しがちになります。
肌が乾燥すると、外部からの刺激を受けやすくなり、かぶれや湿疹の原因にもなりますので注意が
必要です。

西洋医学的には、保湿外用剤など皮膚を保護する薬が用いられます。
痒みが強いときは、ステロイド外用剤や抗ヒスタミン薬の飲み薬なども用いられます。
漢方では、感想肌は「(けつ)」が不足したり、滞っている状態と捉え、主に「(けっ)(きょ)」と診断します。
代表的な治療薬は四物(しもつ)(とう)です。
ただし、四物(しもつ)(とう)は単独で使われることは少なく、他の漢方薬と合わせて使われることが多い薬剤です。

四物(しもつ)(とう)は、当帰(とうき)芍薬(しゃくやく)川芎(せんきゅう)()(おう)から構成されています。

この組み合わせを含む代表的な漢方処方には、温清飲(うんせいいん)当帰飲子(とうきいんし)十全(じゅうぜん)大補(たいほ)(とう)などがあります。

1.温清飲(うんせいいん) (57): 温清飲(うんせいいん)は、黄連(おうれん)解毒(げどく)(とう)四物(しもつ)(とう)の合方になります。
    効能は、「月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症」となっていますが、
    その実態はほとんどアトピー性皮膚炎など、肌が乾燥し、痒みが強い皮膚症状に対して
    用いられることが多い漢方薬です。
2.当帰飲子(とうきいんし)(86) : 虚証の方の乾燥した皮膚掻痒症に用いられます。
3.十全(じゅうぜん)大補(たいほ)(とう)(48) : ()君子(くんし)(とう)四物(しもつ)(とう)の合方に更に黄耆(おうぎ)桂皮(けいひ)を加えたものです。
    気も血も虚した状態、つまり疲労感が強く、肌も荒れて、弱い方に用いられます。

また、最近では、漢方薬として飲むだけでなく浴用として用いることも研究されています。

富山大学の皮膚科の研究では、当帰(とうき)()(おう)の入浴療法で角質水分量、水分保持能に有意な改善が
得られることが明らかになっています。
用い方は、当帰(とうき)()(おう)それぞれ2gを熱湯にて煎じて、入浴剤のようにお風呂に入れるとのことです。

肌の乾燥は、美容的にも気になりますね。気になる方はご相談下さい。

kansouhada
 

秋ばてしてませんか?

朝夕が急に涼しくなってきましたね!

秋ばてという言葉が最近聞かれるようになりました。
これは本来、夏ばてと言われていたものなのですが、季節が1ヶ月ずれてきたように感じます。
夏ばては本来、夏を過ぎて9月の中旬ほどになり、
すごしやすくなってから、手足や身体が重だるかったり、気力がない、食欲がないといった症状を
呈するものを言いましたが、
最近では夏の盛りの頃、食欲がなく、身体がだるく、何もする気が起こらないといった状態を
指すようになりました。

猛暑の影響だけでなく今年はコロナウイルスの影響も大きくでてしまいました。

盛夏の夏ばてには、その名の通り、暑さを冷まし元気を出させてくれる清暑(せいしょ)(えっ)()(とう)が
役に立ちましたが、日中の暑さに比べて、朝夕寒気を感じるようになってきた
この時期からは補中(ほちゅう)(えっ)()(とう)の出番です。

補中益気湯は別名、医王湯とも呼ばれ、消化機能を補い元気を益す薬という意味で名付けられた薬です。
これらの補剤は西洋薬にはないタイプの薬です。
元気が出る意味を医学的に解説するのは難しいですが、
補中益気湯の作用としては、食欲の改善、消化機能の改善、疲労感の改善、免疫力(自然治癒力)
の改善などが主な作用と言われています。

これから一段と寒くなるにつれ、風邪も流行ってきます。
誰しも不摂生が続くと風邪をひいてしまいます。
そんな時に役に立つのも補剤です。
インフルエンザの予防にワクチンがありますが、ワクチンも万能ではありません。
それは、毎年、次年度流行しそうなウィルス株を想定して、ワクチンを作っているからです。
数年前、新型インフルエンザが話題になりましたが、ウィルスも一定ではないのです。
つまりワクチンは、インフルエンザの予防に有用ですが、
ワクチン株と種類が異なれば、効かないこともあるのです。
リスクの高い方には補中益気湯を飲ませておくとインフルエンザに罹患する率が大幅に下がる
という研究もあります。
熱帯夜はどうしても寝不足になります。
涼しくなってくると、目覚め時の布団が気持ち良くてもっと寝ていたくなりますね。
補中益気湯で秋ばてを克服し、この冬の風邪を予防するためにも、夜更かしなどの不摂生を慎み、
また食欲の秋です。
日頃から食を楽しみ、体を動かし体力をつけておくことが最も有効な風邪の予防となります。


akibate