漢方薬によるインフルエンザ・風邪治療!

今週に入って突然寒さが増しましたね。
体温調節を適宜行い、風邪を予防しましょう。
今年はすでに川尻地区でも例年に比べて一足早くインフルエンザの発生報告がありました。
今回はインフルエンザや風邪の感染を予防・治療する漢方薬を紹介します。
 
①  予防する漢方薬 ~補中(ほちゅう)()(っき)(とう)
  新型インフルエンザの予防法としては、現在のところインフルエンザワクチンや
  抗インフルエンザ薬による予防が一般的です。
  しかし、ワクチンの接種が必ずしもインフルエンザの罹患を予防するわけではない
  ことは皆さんもご存知だと思います。
  補中益気湯は、免疫力や消化機能を高める漢方薬として知られ、虚弱体質、病後の
  体力増強、食欲不振や夏痩せなどに広く使用されています。元気をつけたり、
  免疫力の低下による易感染状態を改善してくれるお薬です。

  この漢方薬を使うとよい人というのは、毎年インフルエンザや風邪にかかってしまう人や、
  感染するとリスクが高い人(COPDや喘息のある人など)、受験生などです。
  補中益気湯は風邪やインフルエンザの回復期にみられる倦怠感などにも効果があります。
 
②  治療する漢方薬~()黄湯(おうとう)
  皆さんがよくご存知の、()(っこん)(とう)という漢方薬は風邪の引き初めに飲むお薬です。
  麻黄湯という漢方薬も使い方は非常によく似ております。

  ではどういったときに使い分けるのか。
  それは、インフルエンザのように強い感染性をもつ場合に麻黄湯を用います。
  麻黄湯は、別名:麻杏桂甘(まきょうけいかん)(とう)といい、葛根湯よりも体を温める作用が強く、
  構成生薬数も少ないのでとても効き目がシャープに現れます。
  ですので、わが国でも古くから風邪やインフルエンザなどの急性期疾患に用いられてきました。
  最近の臨床研究ではタミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬と同等の抗ウイルス作用、
  解熱作用があると認められています。

  麻黄湯は身体の免疫機能を高めてあげる働きをすることによって抗ウイルス作用を発揮するという
  ほかの薬と違った作用を持っています。
  インフルエンザなどでは関節痛や頭痛、寒気などの症状も強く出ますが、
  そのような場合に麻黄湯を併用したり、用量を増やしたりなど工夫することが可能です。
  また構成生薬の杏仁には鎮咳作用もあるので、のどの痛みにも対応しています。
 
漢方薬は風邪などの急性期疾患に非常に高い効果を示すので、是非参考にしてみてくださいね。

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漢方薬で便秘解消!

高齢者、こども、女性に特に多いとされる『便秘症』。
“何日間便が出ないと便秘”と明確な定義があるわけではありません。
便が出ないことにより感じる不快感や苦痛などが問題です。

今回は便秘を解消する漢方薬についてざっくりと紹介したいと思います。

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左記の図はツムラさんが出している便秘処方の選択の目安ですが、
このように便秘や腹部の膨満感に用いる漢方薬は色々あります
 
 
(じょう)()(とう)類:大承(だいじょう)()(とう)調胃承(ちょういじょう)()(とう)
刺激性下剤(腸管を刺激する)の大黄(だいおう)と塩類下剤(便を柔らかくする)の芒硝(ぼうしょう)の2つの生薬を
組み合わせた構成になっている漢方薬を『(じょう)()湯類(とうるい)』と呼びます。
腸管を刺激しながら苦痛を抑えてスムーズな排便を促すように構成されています。
 
大黄甘(だいおうかん)(ぞう)(とう)
大黄と甘草からなるシンプルな漢方薬です。甘草は痛みや痙攣を緩和します。
常習性の便秘に広く用いられます。
 
麻子(まし)(にん)(がん)(じゅん)(ちょう)(とう)
(じゅん)下剤(げざい)と呼ばれる麻子(まし)(にん)(きょう)(にん)()(おう)が含まれています(※麻子仁丸は地黄を含みません)。
これらは小腸内の腸管水分分泌を高める生薬ですので、便が乾燥して出ない、
うさぎのコロコロ様便が出るという場合に適しています。
特に麻子仁丸には、胃もたれを起こしやすい地黄や低カリウム血症の要因である甘草を含まず、
刺激性下剤の大黄を含んでいるので高齢者に優しい漢方薬です。
 
(けい)()加芍薬(かしゃくやく)大黄(だいおう)(とう)大建中(だいけんちゅう)(とう)(けい)()加芍薬(かしゃくやく)(とう)
これら3つは便秘に対応するというよりも、それに伴う腹部症状を改善する目的で用います。
どれも腸管の機能が低下している状態を改善する処方です。
少し便秘傾向が強ければ桂枝加芍薬大黄湯、冷えや腹痛が強ければ大建中湯、
痛みやしぶりばらがあれば桂枝加芍薬湯という選択になってきます。

便の状態や腹部症状によって用いる漢方薬は様々ですが、
ご自分の症状に近いものと照らし合わせて、気になった処方があればご相談くださいね。

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クーラー病

夏もお盆休みを過ぎ、終盤に差し掛かってきました。
この夏は猛暑のため、エアコンを使う頻度が高かったのではないでしょうか?

今回は『クーラー病』について紹介します。
 
クーラー病はエアコン使用による冷え過ぎから起こる病気で、
別名『冷房病』とも呼ばれています。

症状は、頭痛、肩こり、腰痛、腹痛、疲労感、食欲不振、不眠症、むくみ 等、
冷え症の症状と似ています。

寒さ対策をすれば大丈夫、と考えがちですが、
冷えている部屋に入るだけで症状が現れたり、
夏場を過ぎても体調が整わなかったりするなど慢性化してしまうことがあります。
特にひどくなると、頭痛や吐き気に悩まされることがあります。
頭痛(痛み)といえば、皆さんがよく使うのはNSAIDsと呼ばれる
お薬ではないでしょうか?

ドラッグストアで身近に手に取ることができるものとしては、
例えばバファリン、ロキソニン、イブプロフェン等々…。
これらは非常に親しみやすく、飲んだら比較的早期に効くお薬ではありますが、
クーラー病=冷えによる頭痛には不向きかもしれません。
実は、NSAIDsというお薬は、血管を収縮させることによって痛みを抑えます。

血管を収縮させるということはその分血行が悪くなるので、
体温が低下し、場合によっては頭痛の原因である『冷え症』や『肩こり』を
悪化させてしまうことがあります。
原因がエアコンなのですから、頭痛だけでなく、
冷えも改善できるお薬を使いたいですよね。
そういった場合に良いのが、『呉茱萸(ごしゅゆ)(とう)』という漢方薬になります。 
呉茱萸湯という漢方薬は、温めながら制吐と鎮痛に働く呉茱萸を中心に
消化吸収機能改善の人参が加わり、
手足に冷えがある虚弱な人の嘔吐を伴う頭痛に効果があり、
頭痛のファーストチョイスの漢方薬です。
 
生薬
薬能
呉茱萸、生姜
冷えにより増悪する頭痛を改善する
呉茱萸
嘔吐を伴う頭痛に多用される
人参、大棗、生姜
低下した消化吸収機能を回復
 
漢方薬は風邪の引き初めに用いる葛根湯でお馴染みですが、
『体を温める』ことを得意としています。

冷えによる頭痛で困っている方は、是非参考にしてくださいね。


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夏の暑さに負けない!Step Up ver.

梅雨の時期を越え、いよいよ暑さも夏本番に近づいてきました。
去年は7月下旬を過ぎたあたりから気温30℃を超える暑い日々が始まりました。
日中、野外で過ごすことが多い人は勿論、快適な室内で過ごす場合においても
気温の変化で体調を崩しやすいので気をつけて下さいね。

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去年は夏バテ対策に、
『補中(ほちゅう)()(っき)(とう)』、『清暑(せいしょ)()(っき)(とう)という漢方薬について紹介しました!
(覚えていますか?) 

これらは消化吸収機能を改善・体に元気をつける、
『補剤(ほざい)』とよばれるグループの漢方薬です。



どちらも元気を補うための漢方薬ですが、
補中益気湯はもともと体力のない方が暑い夏を乗り越えて頂くための処方で、
清暑益気湯は汗がジクジク出る・体が熱さで火照っているような場合に使うと効果が良い漢方薬です。
 
今年は、夏に有用な五苓散(ごれいさん)(びゃっ)()加人参(かにんじん)(とう)という漢方薬について新しく触れたいと思います。

 1.五苓散
   この漢方薬は比較的よく知られているのではないでしょうか?
   五苓散は浮腫、めまい、頭痛、二日酔い、下痢など、体内の水分偏在をコントロールする薬として
   万能です。
   五苓散は、既に熱中症になってしまった場合に有用です。
   もっとわかりやすく言うと、水分補給をしっかりしているのに一向に気分が良くならない場合に
   効果を示します。
   このような人は水分をうまく吸収できない状態だと考えることが出来るので、
   五苓散で後押ししてあげます。

 2.白虎加人参湯
   白虎加人参湯は、白虎湯に人参を加えた処方です。
   白虎とは石膏(せっこう)という生薬を表します。
   石膏の生薬が白いことから中国の神話に出てくる四神の一つで西方を守護する白虎の名前が
   与えられました。
   西方には砂漠がありますので、その守り神の白虎がもつ白虎加人参湯の薬能は
   『身体の灼熱感を鎮め、乾きを潤す』
   というわけです。
   石膏は比較的、冷やす力が強い生薬です。
   体が火照ってしまって夜が眠れない、暑くて暑くて苦しいといった状態の時、
   白虎加人参湯でガツンと冷やしてあげると良いでしょう。
 
今回は熱中症になってしまった場合にもちいる漢方薬を紹介しました。
ご自身がどの状態に近いのか考え、是非参考にしてみて下さいね。

意外な漢方!六君子湯

だんだんと本格的に暑くなってきましたね。
夏バテ・熱中症にならないように空調や体調管理には気をつけて下さい。
今回は『漢方の胃薬』として知られている(りっ)君子(くんし)(とう)について意外なお話を紹介したいと思います。
 
六君子湯という漢方薬は、明の時代につくられた『万病(まんびょう)回春(かいしゅん)』という医学古典に掲載があります。

「回春」とは、「春が巡ってくる」という意味で、
ここから転じて「病気が回復すること」や「若返る」ことを指す言葉として
用いられるようになりました。
「万病回春」という医学書には「衰えた精力を取り戻す」ことの出来る漢方薬、
いわゆるアンチエイジングの漢方薬が掲載されているものとイメージ出来ると思います。
 
高齢化が問題視される日本社会では、『健康寿命』がキーワードとして取り上げられています。
健康寿命とは、WHOが2000年に提唱した、

『日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、
自立した生活ができる生存期間』

を表し、寿命に対する健康寿命の割合が高いほど、寿命の質が高いと評価され、
結果として医療費や介護費の削減に結び付く、という概念です。

六君子湯は最近の研究報告で、『健康寿命を延長させる漢方薬』として注目を浴びるようになりました。
 
構成生薬
役割
人参(にんじん)(かん)(ぞう)蒼朮(そうじゅつ)茯苓(ぶくりょう)
食欲を改善する(補気・補脾)
陳皮(ちんぴ)半夏(はんげ)
胃腸の動きを良くして、嘔吐や膨満感、痞えを改善する
半夏(はんげ)生姜(しょうきょう)茯苓(ぶくりょう)(=小半夏加茯苓(しょうはんげかぶくりょう)(とう))
吐き気や嘔吐に対応できる
 
「食欲を改善させる」についてですが、西洋医学的にも裏付けが証明されています。
グレリンという摂食促進ホルモンを介して作用することがわかっており、
低下した食欲を通常状態に戻してあげるというなんとも便利に働くことが報告されています。
 高齢になってくると気づかないうちに食が細くなってしまったり、消化吸収機能を含め、
臓器に何らかの機能低下がみられたりすることがあると思います。
当てはまる場合には是非ご相談下さい。

このような漢方薬が皆さんの健康や生活の豊かさに貢献出来ることを期待しています。

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便秘で注目を浴びている漢方薬

近頃、メディアにて漢方薬が取り上げられることが増えてきました。
国の医療費削減や高齢化社会という面からも活躍が期待されているからでしょう。
先日、中国新聞に「慢性便秘」というテーマで漢方薬が取り上げられていましたので
少し紹介したいと思います。
 
便秘に用いられる漢方薬は1種類だけではなく、下剤としての強さが幅広く多くの種類があります。
ここでひとつ豆知識として覚えていると便利なものは、構成する生薬の薬能です。
①大腸を刺激する刺激性下剤としての役割をもつ生薬:大黄(だいおう)(主成分:センノシド)
②便を柔らかくする塩基性下剤としての役割をもつ生薬:芒硝(ぼうしょう)
③小腸の水分分泌を促進する役割をもつ生薬:()(おう)麻子(まし)(にん)(きょう)(にん)
 
漢方医学的には、
①と②の薬能をもつ生薬の分類を「攻下薬」、
③の薬能をもつ生薬の分類を「潤下薬」といいます。

ちなみにですが、大黄と芒硝の組み合わせをもつ漢方薬を、(じょう)()(とう)類といいます。
(じょう)()(とう)類は下剤の漢方薬なかでも特に強い作用をもつので、お腹の弱い方は下しやすくなる
恐れがあります。
 
1. 大黄甘(だいおうかん)(ぞう)(とう)
 大黄と甘草の2味から成る漢方薬で、切れ味がシャープ。
 西洋薬の下剤であるセンノシドにとても良く似ています。長期連用には注意が必要です。 
2. 麻子(まし)(にん)(がん)
 刺激性下剤である大黄、潤腸作用をもつ麻子仁、杏仁を含みます。
 便に潤いを持たせ大腸を動かしながら出す漢方薬ですので、乾燥便や兎糞便に対して用います。。
 低血症の恐れのある甘草や胃もたれの原因になる地黄が含まれていないので、高齢者に優しく
 安全性の高い漢方薬です。 
3. (じゅん)(ちょう)(とう)
 麻子仁丸に非常に類似している漢方薬で、乾燥便や兎糞便に対して用います。
 麻子仁丸よりも大黄の含有量は少ないので、作用は少し弱めです。地黄を含みます。
 麻子仁丸でよく効きすぎる場合は潤腸湯で様子を見ます。 
4. 桂枝加芍(けいしかしゃく)(やく)大黄(だいおう)(とう)
 筋肉の痙攣を緩和する芍薬(しゃくやく)を含みます。大黄で大腸を刺激し、痙攣性の痛みを和らげます。
 自律神経が失調しやすいかたで便秘の症状があるケース(便秘や下痢を繰り返すなど)で用いられます。 
5. 防風通(ぼうふうつう)聖散(しょうさん)
 これは肥満症の漢方薬として有名ですが、大黄や芒硝を含むので下剤としても用います。
 漢方医学的には、体内に溜まった毒素を便として排出するという考え方です。
 ですので、中性脂肪の多い肥満症の方や化膿しやすい皮膚疾患を持つ方に用いられます。 
6. 大建中(だいけんちゅう)(とう)
 人参(にんじん)山椒(さんしょう)乾姜(かんきょう)(こう)()の4味から成る漢方薬で、下剤を一つも含みません。
 ですが、腸管の血流量を増加させるため、腸の動きがよくなることから便秘にも応用されるケースが
 多くあります。
 冷えや腹痛があるときにはお湯に溶かすとすぐに溶けるので、比較的飲みやすい漢方薬です。
 乾姜は生姜を蒸して乾燥させたものなので、味としては生姜湯のようなものです。
 
今回は中国新聞に取り上げられていた便秘に用いられる漢方薬について紹介しました。
ご自分の体調や症状にあった漢方薬を探して下さいね。

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多発する口内炎に

4月に入り、だんだんと暖かくなってきました。
今年は例年より夏に近い気温ですので、どんな服を着ればよいか、困っている方も多いのではないのでしょうか?

今回は、こんな季節の変わり目に多くみられる『口内炎』について紹介したいと思います。
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口内炎の発症には様々な原因があります。食事をしているときに間違って舌や頬を噛んでしまったり、
ストレスや疲れによる免疫力の低下、睡眠不足、栄養不足(ビタミンB2不足など)、口内の不衛生などがあります。
また、胃腸の働きが弱っているとその影響が口腔内の炎症として表れることもあります。
口の中に異物があるのですからどうしても気になってしまいますよね。ひどい場合には2週間ほども完治せず、
毎日の食事や会話のたびに苦痛に顔を歪めてしまうこともあるでしょう。


 
最近ではドラッグストアで塗り薬や貼付剤などが売られており、どうしても辛いときには手軽に対処出来るようになっています。
しかし何度も頻発してしまうケースもあるかと思います。漢方薬の半夏瀉(はんげしゃ)(しん)(とう)という処方は、
口腔内の粘膜組織の修復能を高める作用があると言われています。以下は、主な構成生薬の働きを表しています。
 
生薬
薬能
黄連、黄
口内炎の炎症を改善(抗炎症作用)
乾姜
下部消化管を温め、冷えや下痢を改善
半夏
吐き気止め
人参、甘草
消化管の機能を改善
 
半夏瀉心湯の名前にもあるように、『瀉心』というのは、熱や炎症、ストレスの影響により
発症している症状を改善するという意味を持ちます。
ですので、ストレスが原因の口内炎にも対応できると考えられます。
そして口内炎の増悪には、口腔内細菌(主にグラム陰性菌)が原因だと考えられておりますが、
この半夏瀉心湯にはグラム陰性菌の殺菌と発育を抑える作用があります。

高齢者の方は誤嚥性肺炎を悪化させないために口腔内を清潔に保つ必要がありますので、
口内炎が頻発するケースには適しているでしょう。
半夏瀉心湯をうがいの要領で服用すると効果が高いので、治りづらい口内炎には是非実践してみて下さいね。

重症化した花粉症に

今年は暖冬でしたので、花粉の飛散量も例年より多いと言われています。
花粉症もちの方は、最近は特にしんどい日々を過ごされているのではないでしょうか?
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花粉症の症状で辛いのは、目のかゆみ、頻発するくしゃみ、かんでもかんでも止まらない鼻汁…。
人によって様々ではありますが、これらの症状が特に辛いことでしょう。
 
花粉症の際、どうしても鼻をかむ回数が多くなったり、強くかんでしまったりしませんか?
正しいかみ方をしないと鼻の粘膜を傷つけてしまったり、急性中耳炎を起こしてしまう可能性があるので注意して下さいね。
また、アレルギー反応はもちろん、炎症によって鼻粘膜の浮腫が起こり鼻づまりを発症します。
この鼻づまりが花粉症の症状を重症化させる要因なのです。
 
鼻汁は通常、前(鼻の孔)からでる『前鼻漏』とのどに落ちる『後鼻漏』として排出されます。
人間は誰しも1日1Lのサラサラした鼻汁を産生していますが、通常はのどに落ちている為気になりません。
しかし風邪や花粉症の場合では、鼻汁の量が過剰になったり、ネバネバした鼻汁が排出される
ので不快な症状を呈します。
後鼻漏では、鼻づまりだけではなく喉の不快感などを伴うため、睡眠不足になったり
体の不調をきたしやすくなるのです。
 
そこで、今回紹介するのは『葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)』という漢方薬です。
この漢方薬はその名のとおり、『葛根湯(かっこんとう)』がベースとなっています。
葛根湯とは皆さんご周知のとおり、風邪の漢方薬です。
これに、川芎(せんきゅう)辛夷(しんい)という生薬を加えて鼻づまりを改善する漢方薬として
使われています。
川芎(せんきゅう)には、
痛みやかゆみを抑える『去風(きょふう)』と、化膿に対応する『排膿(はいのう)』
という薬能を有しています。
そして、辛夷には、詰まったものを開通させる『通竅(つうきょう)』といわれる薬能をもっています。
 
鼻づまりが起こると、首や肩にコリを生じたり、頭痛を起こすことがあります。
この症状、風邪の初期症状に似ていませんか?
葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)は、“葛根湯を飲みたくなってしまうような
急性疾患(悪寒、発熱、無汗、項背部のコリ)に加えて、頭痛が強く、鼻づまりや鼻汁に難渋している”
というのが適応症となります。
鼻汁や鼻づまりの原因となる感染症や炎症に対しては葛根湯の部分が対応し、
川芎(せんきゅう)辛夷(しんい)は鼻汁や鼻づまり自体に対応する、という構成になっています。
 
ですので、花粉症が少し悪化し始め、風邪みたいな症状になってきたなと感じたら是非試してみて下さい。

かゆみ・皮膚掻痒症

皆様、新年明けましておめでとうございます。良いお正月を過ごされましたでしょうか?
広島県も雪が各地で降り積もり、いよいよ冬本番となってきました。
前回は咳に用いる漢方薬を紹介しました。
今回も冬の季節に特に多くなる、『かゆみ』をテーマに、紹介していきます。
冬の乾いた外気と、皮脂の欠乏、発汗の低下などが合わさって起こる皮膚の病気を
『皮膚(ひふ)掻痒症(そうようしょう)』といいます。
皮脂の分泌が低下する高齢者や妊娠中の女性に多くみられ、その名の通り強いかゆみが生じます。
外部から皮膚を守っている角層のバリア機能が乾燥によって失われる為、
知覚神経が刺激を受けやすくなり、かゆみを生じるのです。
 
一般的な治療では、皮膚の乾燥を防ぐために保湿剤のクリームやローションを塗ります。
また、かゆみがひどい場合にはステロイド剤、かゆみ止めを用いることもありますが、
十分な効果が得られない時もあります。
すぐに出来る対策としては、室内環境を整えることです。
暖房などを使う際には、加湿をし、室内の湿度を一定に保つよう心掛けて下さい。
 しかし、かゆみは痛みと違って、掻くという行為で解消できる症状です。
しかし我慢できずに掻き続けてしまうと、それがまたかゆみを強め、悪循環になってしまいます。
強いかゆみはやがて大きなストレスとなり、睡眠障害やイライラを引き起こすこともあります。
 
そんな辛いかゆみに対して、通常治療の効果を高められるような漢方薬を紹介します。

当帰飲子(とうきいんし)・・・・・・皮膚に潤いがなく乾燥して、かゆみがある慢性の皮膚疾患に!
元来、かゆみ・腫れ・かさぶた等の症状を伴う皮膚炎に使用されていました。
14世紀以降は、乾燥性の皮膚炎に良いとされ、特に虚証タイプ(高齢者などの虚弱な方)向けに
使われてきました。
この漢方薬には血流を良くし、皮膚のバリア機能の回復をはかる『四物湯』という漢方薬をベースに、
皮膚を強くしたり、かゆみ・痛み止めの役割を果たす生薬が加わっています。
皮膚のターンオーバーが出来ない状態に、外用剤の機能を高める役目をします。
 
また、精神不安・不眠症などのメンタル的な要素が加わった場合には
加味帰脾(かみきひ)(とう)という漢方薬もおすすめします。こちらには、精神を安定化させる生薬も含まれています。

かゆみが我慢できない、背中などがかゆくても手が届かないなどといった悩みがある方は
是非相談して下さい。

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咳・のどの痛み

だんだんと寒くなってきました。
ニュースでは、ようやく広島県で初雪が観測されたとの報道がありました。
クリスマスも控えておりますし、いよいよ冬本番となってくることでしょう。
服装や体調管理には気をつけて下さい。
年末の多忙な時期に急な気候の変化が重なり、体調を崩されてしまっている方も多くいらっしゃるのでは
ないでしょうか?

今回は咳やのどの痛みに用いる漢方薬を紹介します。
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1.風邪の後に咳だけが残ってしまう
風邪のつらい症状の一つである、咳。なかなか完治しないな、と思われている方も多いと思います。
咳は気道粘膜への刺激やウイルスなどの異物を除去しようとする生体の防御反応です。
しかし、炎症が長引くと、気道の乾燥を防ぐために分泌されていた痰が十分に分泌されなくなって
しまったり、粘稠度が増して切れにくくなるなどの乾性咳嗽を呈することがあります。
熱や鼻水などの症状は治まっても、
咳が残ってしまうとそれだけでも体力を消耗してしまいますよね。
そんな不快な症状を改善するのが『麦門(ばくもん)(どう)(とう)』という漢方薬です。
この薬は、気道粘膜を潤すものが不足し、気道過敏や弱い炎症が発症しているときに、
潤いを与えて痰を切れやすくし、咳を止める効果があります。
口腔内乾燥症でも用いられたりする漢方薬です。
‟咳は1回あたり、約2kcalを消費する“と言われています。
精神的・身体的な負担も多いので、無理をせずに気軽に相談して下さいね。
 
2.のどの腫れと痛み
こちらもつらい症状です。中には気になって眠れなくなるケースもありますよね。
『桔梗(ききょう)(とう)』という漢方薬は、扁桃やその周辺で起こっているのどの腫れや痛みを和らげます。
桔梗という生薬には、扁桃の炎症を和らげ、化膿を防ぐ薬能があります。
こむら返りの薬でお馴染みの『芍薬甘(しゃくやくかん)(ぞう)(とう)』と同様に、2つの生薬で構成される漢方薬ですので、
効き目もシャープです。
桔梗湯はそのまま飲んでしまうのではなく、ぬるま湯に溶かしてから口の中で軽くうがいをし、
吐き出さずに飲み込みます。
そうすると成分が患部に当たるのでより効果が増します。
出来る方は、顆粒剤のまま口の中でコロコロ転がす、という方法もありますので
好きな方でお試しください。
ドラッグストアでは桔梗湯のトローチも置いてありますので気軽に手に取ってみて下さい。
 
今回ご紹介した漢方薬はどちらも甘く、飲みやすい味になっています。

気になる症状があれば、気軽に相談して下さいね。